第2話 サンディガフに到着
昨日の早朝から電車とバスを乗り継ぎパスポートと魔法学校入学許可証を提示し飛行機に搭乗すると、丁度丸1日かけてサンディガフに着いた。
「ここがサンディガフ…明るいな。さすが太陽の国。にしても、こんなに日が照っている割に気温は冬の山吹の街と同じくらいだ。観光本によると朝は年中冷え込むらしいな。睡眠も飛行機で充分すぎるくらいとれたし入学式は午後からでまだ時間もある。後日授業で必要な道具を揃えるついでに散策してみよう。山吹の街には箒一つとっても品揃え悪かったからなあ」
地図と魔法道具紹介雑誌を両腕上に広げ読みながらテカテカと艶のある石目調タイルのストリートを歩く。
「最近は釜ブーム再来、箒でなくペガサスや自作円盤で飛行する生徒も…そりゃ凄い。
……いてっ! すみません」
前を見ず歩いていたため通行人にぶつかってしまった。顔をあげ相手の様子を伺うと、私と同じく何か読みながら歩いていたようだ。
「此方こそすみません。早朝で人気があまり無いものでつい余所見して歩いておりました。…おや?貴方も新入生の方ですか?」
青い髪と瞳、歳の近そうな少年が私の制服と地図を見比べて問いかけた。よく見ると、彼の首にも私と同じ翻訳機がついている。
「そうだよ、ということは貴方も新入生ですよね。ジンです、宜しく」
「はい。宜しくお願いいたします。僕はルカと申します」
「ルカ。良い名前だね。青い髪と瞳なんて初めて見たよ。本当にいるんだ。山吹の街、ああ私の出身ね、そこは黒か茶髪の人しかいないからさ」
「そうなんですか。僕はジンさんのような黒髪を見るのが初めてです」
「へえ、そうなんだ。」
彼の地元も魔法道具の品揃えが悪く殆どを現地で購入するつもりだったそうで、私と彼は共に行動することにした。
「ルカはどうしてサンサネストカレッジへ?」
そう問いかけると怪訝な顔をされた。
「魔法学校に入学出来るならば皆したいでしょう?皆の憧れ、魔法士となれば将来食いっぱぐれ……失礼、生活に困ることもありません。僕の国では当然ですよ!」
彼の国では魔法学校は皆の憧れで魔法の素質がある者は基本魔法学校へ入学する(というか世界中がそうで私のような者が珍しい)らしく、彼もまた昔からサンサネストカレッジへの入学を決めていたそうだ。
私のしたいようにと、魔法士になれとごり押ししなかった家族はかなりイレギュラーなようだ。
あれこれ談笑するうちルカの事を色々知った。
彼の出身は極寒の地で、サンデガフの早朝も彼にとっちゃ暑いそう。
ため口でいこうと提案したが彼の性に合わないらしく敬語が良いとのこと。
彼は水魔法が大得意なこと。
そうこうしていると煙を象った看板が見えてきた。
「着いたよ。ここのサリー・ホワイト氏はサンディガフ名誉職人にも選ばれた凄腕の杖職人で、魔法士の才も生かし作るオーダーメイドの杖は個々人の特性を存分に引き出してくれると私の地元でも有名なんだ。さっそく入ろっか」
「ええ。…おや?鍵が閉まっていますね。扉の掛け看板に店は9時から16時までと書いてあります」
「……え!?都会は早朝にも店開いてると聞いたのに!」
「僕も失念しておりました。僕の地元では早朝から昼が営業時間なもので」
「あちゃーどうすっか。うーん、今日は入学式と寮わけだけで授業は無い、明日もレクリエーションが主で魔法道具使用する場面は無いだろうから、その次の休日一緒に行こうか。」
「ええ。そうしましょう。」
こうしてその他の店の場所を事前に確かめつつ学校へと向かった。
「それにしても、寮わけはどうなるのでしょうかね?僕ら同じ寮になれると良いですね。」
「うん。というかその前にクラスだ。私はAクラス。君は?」
「僕はCです。クラスは一緒でないのですね、寮わけに期待です。」
「そうだね。ええと、寮は全部で六つ。創設者オリヴィア・シルバースタインが敬愛した六人のヒーローの信念を象っているんだ。その寮に合致する性質…と言っても人間六つに割れる程単純では無いし私達が近しい性質をもつのかは何とも言えないな」
「ですね。けれど僕達、何だか波長が合いそうです」
「あは、嬉しいな」
繁華街を抜けそのまま歩き続けると次第に霧で周囲が見えづらくなる。そのまま大きな橋を渡り霧が晴れるとその先は牧場や隠れ家系の喫茶店、そのまま歩くと今度は滝が見え、その先は……
「はぁ、はぁ…うえー遠くね…?さすがにきついわ」
「ですね、二足歩行は…いえ、僕もあまり歩き慣れてないもので…はあ、皆さんこの道のりを歩いているのでしょうか…?交通機関も通っていませんが…」
二人地面にへたりこむと、頭上で何かが後ろから高速で駆け抜けて行く。見上げると、私達と同じ制服を着た人達が箒や釜ペガサス、それに自転車!空を一直線に進んでいる
そのうちの一人、ペガサスに乗った人が此方に気がつき降りてくる。
「あれ?君達どうしたの?飛行手段ねえやつは迎えのバスが空港から出てんぜ。」
「「え?」」
ルカと揃ってすっとんきょうな声を出す。
「もしかして伝達ミスかな?」
そういえば教科書と一緒に薄い紙が届いたが、入学手続きでバタバタし目を通していなかった。
「いや…単純に書類に目を通していませんでした」
「お恥ずかしながら僕もです」
「ははっ!お前らドジだな~!仕方ねえ、アタシの相棒に乗せてやんよ。ほれ、フラン頼む」
仕方ないと言う割にニヤニヤと嬉しそうだ。
そういうと、私達二人を抱えあげペガサスに乗せてくれた。フランと呼ばれたそのペガサスは標準よりかなり大きく怪力で三人乗っても随分と余裕そうだ。
「有り難うございます。助かりました、僕はルカと申します」
「ジンです。本当に、あのままじゃ入学式に遅れてしまっていました」
「良いってことよ~!それよりアタシの相棒すげえだろ?乗り心地最高だろ?四歳の頃から一緒にいるんだ。そんな赤ん坊でも落ちないよう優雅に飛ぶんだぜ。…ああ。アタシはテディ。二年。宜しくな」
テディ先輩が相棒の素晴らしさを長々と熱弁しているうちにやっと着いた。
…いや、時間としては二十分程度なのだが。
「じゃあな!」
学園の門の前で下ろして貰いテディ先輩は馬小屋へと飛び立って行った。
「では、また入学式で」
「うん」
そうして私達は各々のクラスへと入った。
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