何変哲ない魔法学校の日常
庭の小鳥
第1話 サンサネストカレッジ
「教科書、筆記用具、水筒、財布…おっけい。これは郵送するとして…よし、制服もサイズばっちりだ。」
山吹の街出身ジン・フェニックスは今年サンサネストカレッジへ入学する。
魔法士となる夢と、祖母に憧れずっと目指していた薬剤師となる夢。2つの選択肢に揺らぎながら日々学問に励んでいたが、将来の事を考えるにつれ他にもやりたいことが沢山出てきた。
更に思いあぐねるジンに母が勧めたのが魔法学校、サンサネストカレッジだ。非魔法職に向けての勉強と魔法士に向けての勉強、どちらも両立できるまさに私のような者にとって理想の環境である。この世界で魔法が使える人間は人口の三割弱、中でも応用の利く程度の魔力を持つ者はそのうちの四割にも満たない。
魔法士が引く手数多の存在であり従来魔法に重点を置いた学校ばかりのなか、生徒それぞれの希望に添った柔軟な姿勢の学校だ。
最近は多角的な教育をとサンサネストカレッジに習い複数の魔法学校が一般教養を取り入れている。
医学と魔法学、工学と魔法学、そして薬学とも親和性を高めることが期待され注目が高まっている。
「それにしても。魔法使えるってそんな珍しいのか~…嫌がらせしてきたあいつはそれが原因?魔法学校なら少なくとも魔法使えない者からの嫉妬は無いし良い環境かもな。」
卒業前3ヶ月不登校になっていたミドルスクールでの記憶が蘇る。学業疎かになっていた今、進路の変動はむしろ良い転機かもしれない。あのまま強く薬剤師を目指していれば魔法学校への入学を決断していたかわからないだろう。
魔法士は様々な分野で重宝され引く手数であり、魔力測定検査で大きな数値を出した者には複数の魔法学校から招待状が送られてくる。
そのため唐突な進路変化でも大して対策もせず入学資格を得られたのである。
「えー何何?太陽の国サンディガフにある本校は世界中から様々な種族を積極的に受け入れ…この街じゃ滅多に見ない獣人属とやらも多数在籍しているのか。楽しそう」
愛犬スピンを思い浮かべ明日からの学校生活に期待を寄せる。
世界各国から集まるということで直面するのが言語の壁だ。私は有明語しか満足に喋ることは出来ないが、魔法士の対話手段として用いられる言語変換器がある。話者の魔力を用い言葉を意訳し、聞き手へと送るものである。
話者は魔力を聞き手は魔力センサー……魔力受容体を持っていなければならない。そして魔力受容体は基本魔力を持つ者のみ持っているものである。すなわち両者が魔力を持っていなければならない。
この奇怪を首につけることで対話が可能であり、在学期間中は学校側が無償で貸し出してくれるのだ。
紛失したり他人に渡したりすれば罰則が待っているもので非常に高価であるため、慎重に扱わなければならない。送られてきた時は壊したらどうしようかと心配だったが、非常に頑丈のため杞憂であった。
「楽しみだなあ。心機一転この街を出て寮暮らしか~バイトもやってみようかな!観光名所も調べとこう!」
何はともあれ光溢れる学園生活が待っている
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