第23話

まだ見ぬ勇者への怒りを隠しもしないクラウスに苦笑し、再発した怒りが収まるまで放っておこうと、本棚から読めかけだった本を一冊取り出し読め始めた。


 それからしばらくして、ふと気付くと室内にクラウスが居なかった。私の読書の邪魔をしないようにと、何も言わずに退出したのだろうと思い、再び本に視線を戻し読み進めているといつの間にか昼食の時間になっていた。


『姉様!!一緒に食べていい?』


クラウスと私付きの侍女であるリリアと共に、弟たちが私の部屋で昼食を摂ろうと飛び込んできた。幼子らしい天真爛漫な双子たちと、明るく元気なリリアは相性がいいらしい。弟たちが私に用があるときは必ずと言っていいほどリリアを通す。逆にクラウスは真面目過ぎて少し苦手らしい。今回もリリア経由でできまクラウスに話が行ったのだろう。


「良いよ」


本に栞を挟みながら許可を出すと、クラウスとリリアが準備を始めたのを横目に、弟たちは嬉しそうに私に抱きついてきた。そんな二人の頭をそっと撫でながら待っていると、ものの数分で準備が整った。席につき食事をしながらも、引っ切り無しに話しかけてくる二人の相手をしていると、魔力測定への緊張は薄れていった。


『僕らも姉様といっしょがよかった』


昼食が終わっろりクラウスとリリアが退出した後も、何気ない会話を続けていると、ポツリと弟たちが呟いた。一瞬なんのことかと思ったが、すぐに魔力測定のことだと気が付いた。


「あと2年の辛抱でしょう?」


そう言って、元気付けようと優しく頭を撫でてあげていると、二人は不貞腐れた様子で言い放った。


『だって姉様の魔力測定みれないもん!!』と。


どうやら、自分の魔力を早く知りたいのではなく、私の魔力測定の結果をその場で見たかったらしい。魔力測定に受ける本人とその家の当主、それと教会から記録のために派遣された神官以外立ち会えない事が不満だなどと、誰が予想できただろう。自分の魔力測定の事などどうでも良さそうな弟たちの様子に、思わず呆れた目を向けてしまった。……この子達、私の事好き過ぎないか?

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