第15話

気が付くと私達の回りにクラスメートが集まっていて、勇輝を褒め称える声や、私を羨ましがる声に混じって微かに舌打ちが聞こえた。そちらを向くと、私の予想通りの人物達が此方を睨んでいた。


勇輝のハーレムを構成している女子達だ。嫉妬の視線が突き刺さる。何で誰もおかしいと思わないのだろう?天井にまで写真を貼るなんて普通しないでしょ。手作り人形ってなに?自分の人形を勝手に作っられて部屋に飾ってるなんて、私からしたら恐怖でしかないのに何で愛されてるって思えるの?


青ざめた顔をしているだろう私に気付く様子もなく、クラスメート達は勇輝に群がり騒いでいる。これ以上聴きたくなくて周りの意識が自分から逸れている内に教室から出た。




勇輝信者と言ってもいいようなクラスメート達がいる教室から逃げ出して屋上へ来た私は、フェンスに寄りかかって空を見上げた。

晴れ渡る空を見ていると荒んでいた心が凪いでいった。


-昼休み〈屋上〉-


「…………ん………ふぁ……今……何時………?」


目が覚めてスマホで時間を確認すると、四限目の授業が終わったあとだと気づいた。それと同時に、教室に弁当を取りに行かなければいけないことにも気づいた。


「弁当………………………取りに行かないと。……食べなかったらまた蒼夜に怒られるな…………………行くか……」



教室に戻るとクラスの皆が勇輝を囲んでワイワイ騒ぎながらお弁当を食べているところだった。

一瞬ドアを開けるのを躊躇ったあと、勢いよく開き勇輝達がいる場所へは一切目を向けず、自分の席へ向かった。鞄を手に取り足早に出口へ歩きだすと、私に気付いた勇輝が名前を呼んだ。それに気付かなかったふりをして廊下へ出ようとすると、勇輝が席を立って追いかけてきて、私の腕を掴んだ。


「麗氷。一緒に食べようよ!」


「私は一人で食べる」


勇輝の誘いに間髪いれずに断ると、クラスメート達から睨まれた。ヒソヒソと話す声から聞こえてくるのは、「勇輝がせっかく誘ってくれてるのに」とか「勇輝君の誘いを断るなんて何様?」とか「勇輝君の幼馴染だからって調子乗りすぎ」何て言う悪口ばかり。好意があるなら誘ってもらえれば嬉しいだろう。けれど、私は勇輝に対して嫌悪感しか抱いていない。そんな状態で誘われても迷惑なだけだ。


いまだに私の腕を掴んでいる勇輝を振り払い、早足で歩きだす。屋上に戻ると私は、弁当を食べて再び眠りについた。

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