第14話

-放課後〈屋上〉-



「麗氷。やっぱり此所に居たのか」


「蒼夜…」


屋上のフェンスに背を預けて空を見上げていた私に、蒼夜が扉を後ろ手に閉めながら話し掛けてきた。


「誰も来ない場所なんてここしかないからね。あんな教室に居たくないし。出来ることなら学校にすら来たくない…」


「まぁ、クラスメートがあれじゃあな(苦笑)」


「この学校、私達以外全員あんな感じたから、時折私がおかしいんじゃないかと思ってしまうよ……」


朝の教室での出来事を思いだし、眉間にシワを寄せて頭を抱えた私の隣に蒼夜が座ったのを感じながら、今日一日でおきたことを彼に話した。


-朝〈教室〉-


「おはようみんな!」


「おはよう勇輝君!」

「おう!おはよう勇輝!」



「それじゃぁ蒼夜、昼休みに…」

「おう。また後でな麗氷」


教室内で飛び交う挨拶の声を聞き流し、蒼夜と別れて中に入る。騒がしい室内に、一瞬眉間にシワを寄せてしまったが、いつも通り自分の席へ向かう。机の上に鞄を置いて開けようとしたとき、隣の席の男子にからかうような声で話しかけられた。


「よっ!稲月。お前愛されてるな~」


「……は?」


言葉の意味が分からず怪訝そうな顔をしただろう私に気付いているのかいないのか、その男子は話し続けた。


「昨日勇輝の家に遊びに行ったらさ、あいつの部屋にお前の小さい頃から今までの写真とか、手作りの人形とかポスターが沢山あってさ。写真なんて天井にまで貼ってあったぞ!勇輝は本当に稲月のことが大好きなんだな!」


勇輝の部屋の話を聞いてまず思ったのは、何で写真を持っているのかだった。幼少期の写真ならともかく、小学四年生以降からできる限り勇輝と行動しないようにしていたため、入学もしくは卒業写真以外で勇輝と写っている写真は無いはずだった。

だから、勇輝が今の私の写真を持っているはずがない。もし本当に持っているとしたら隠し撮りされていたということだ。

その事に想い至った私は青ざめた。

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