第10話
母様に促されるままにいつもの席に座ろうとしたとき、[バンッ!]っと大きな音をたてて勢いよく扉が開き、なにかが飛び付いてきた。
『姉様!!』
弟達だった。減速せずに抱き付いてきたため、受け止めきれず後ろに倒れそうになったが、クラウスが支えてくれたため転ばずにすんだ。しっかりと立たせてもらって、いまだに抱きついている双子に声をかけた。
「おはよう。ハミル、レミル。父様と母様に挨拶しなさい。それと、扉はゆっくり開けなさい」
『は~い。お父様、お母様。おはようございます』
少し不満そうに私から離れて、両親に挨拶する可愛い弟達に小さく苦笑いして頭を撫でてやると、嬉しそうに笑ってまた抱きついてきた。父様も母様も、そんな私達を微笑ましそうに見つめているものだから、正直なところ少し恥ずかしい。
「ハミル樣、レミル樣。御二人ともそろそろ席にお着きください。朝食を食べ損ねてしまいますよ?」
両親の視線にいたたまれなくなってきた頃、クラウスが穏やかな微笑みを称えながら助け船を出してくれた。そんなクラウスの言葉に、二人揃って『は~い!』と元気よく返事をして、いつもの私の向かいの席に座った。
その後、朝食が運ばれてきて雑談しながら食べていたが、父様がふと思い出したように言った言葉に思わず呆れてしまった私は悪くないと思う(-_-;)
「そういえば、今日はレイヒの誕生日だったな。おめでとう。」
「…………父様………まさか忘れていたのですか?」
「そ、そんな事はないぞ!もちろん覚えていたさ!」
慌てて私の言葉に否定する父様に、母樣もハミルもレミルもクラウスですら、あきれたような視線を送っている。
「貴方、それでは忘れていましたと言っているようなものよ?」
『お父様。お姉様が可哀想です』
「旦那樣。今回ばかりは庇うことはできませんよ」
妻に呆れられ、息子達からは非難する視線を浴びせられ、クラウスには微かな怒りを帯びた視線を向けられた父様は、肩を落として私に頭を下げながら小さな声で謝った。
「すまなかった」
申し訳なさそうに項垂れる父様がなんだか可愛くて、思わず笑ってしまった。
「ふふふ…父様。私は怒っていませんから気にしないで下さい。ここ最近とても忙しそうにしておられましたもの。余裕がなかったのでしょう?」
「レイヒ……本当にすまなかった。あらためて、誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」
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