第9話
自室を出ていつも食事をとっている部屋へ行くためクラウスと廊下を歩いているのだが、レジリオが来て魔力を解放したときのことを思い出して、私は嫌な予感がしていた。あのときは深く考えていなかったが、どう考えても五歳の子供が持つ魔力量ではないような気がしてならない。ただでさえ全属性を持っているのに、魔力量が平均を遙かに上回ればかなり目立ってしまう。出来ることならそれは避けたいのだが、如何せん自分の魔力量の正確な数値が分からないため、どこまで押さえ込めばいいかも分からない。
「……はぁ………面倒だ。考えるのは止めよう」
「どうかなさいましたか?レイヒ様」
「何でもないよ」
どうやら声に出してしまっていたらしい。クラウスに心配をかけてしまった。
「大丈夫ならよろしいのですが」
いつの間にか立ち止まっていた足を再び動かして目的地へ向かいながら、私はこれからの事を考えた。
一つの部屋の前にたどり着くと、クラウスが中へと声をかけて、ゆっくりと扉を開いた。
「レイヒ様をお連れしました。」
クラウスの言葉の後に続くように、一歩室内に入り小さく淑女の礼をとって、先にテーブルについていた両親に挨拶する。
「お早う御座います。父様、母様。遅くなってしまい申し訳ありません」
いつもはもう少し早い時間に入室しているため、両親を待たせてしまった自覚はある。自分ではいつも通り微笑んでいるつもりだが、恐らく、今の私は申し訳なさそうな顔をしているのだろう。母様が可笑しそうに笑って私に座るように促した。
父は二十代半ばくらいに見える顔立ちで、ミルクティー色の髪に赤い瞳をしたイケメン。実際の年齢は31歳。母は二十代前半くらいの銀髪に翡翠の瞳の美人で、実際の年齢は28歳。
二人とも外見と年齢が微妙に一致してないなと思ったのは秘密だ。
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