第4話 はじめてのお使い~アキバで服を買う~

 駅から数時間。

 僕は都内へと足を運んでいる。

 

 「ん~~~……!」

 電車の窓から見える高層ビルをみて––興奮する気持ちを抑えるように唇を嚙みながら唸る。

 僕が住んでいる場所もそこまで田舎ではないし、ビルだってある。

 ましてや、コンビニもショッピングモールもある。

 ……でも、この東京という場はそれをはるかに上回る場所なんだと目から見える情報が伝えてくる。

 

 【次は秋葉原、秋葉原です】

 常に外を見ていた僕の目線を電車のアナウンスが車内へと誘導させる。

 「……ここかな?」

 そう言って、止まった電車から降りる僕。

 そこは––両左右に色々なビルが並び立ち、ダンジョンのような駅だった。

 「……これが秋葉原ジャングル……!?」

 昔に見た落語をする女子の話にもあったんだよな……これ、ちゃんとしないと場所がわかんなくなるんだっけ。

 「えっと……エスカレーターで降りて……」

 そう呟きながら、沢山の人が降りていく方へと僕も足を運んだ。

 そこからは人に流されていくかのように––秋葉原の地に降り立った。


 「あーーーーーーーーーーーーきはばーーーーーーーーーらーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


 俺の妹的な作品で言ってた事を言ってみた。そりゃ、オタクなら言うしかなくね?

 ……でも、冷たい目が僕に向けられたので早速スマホに目線を落として逃げるように駅から逃げた。

 といっても、秋葉原の駅前は思ったよりはオタクオタクしてないのは驚いた。

 ハードルが高かったからかもしれないけど、少し先を歩けばもっと違う景色なんだろうか。


 「えと……まずは服かな?」

 ママに位置情報を貰った場所を再度確認して、そこに向かう事にしよう。

 そうじゃないと、この恥ずかしさはヤバい。

 ……というか、秋葉原って【オタクの街】というのには段々と納得できる気がする。

 駅から数歩歩くといたるところにアニメキャラのPOPや看板、そしてVtuberの看板とか宣伝がいたるところにあるからだ。

 「へぇ……」

 あまりブツブツ何かを言うのはキモイと思われるかもしれないけど––やっぱり、声がでちゃう。


 後々知った事なのだけど、秋葉原には色々な“ストリート”と呼ばれるものがあるらしい。

 駅前は外国人向けのショップが多く、この場所にある店を見れば大体の物が揃うと言われる(でも、高いってきいた)

 そして、裏路地に入ると“メイドストリート”“ジャンクストリート”と呼ばれる場所があるって。

 そんな場所の1つ、ジャンク通りに位置情報のピンが差しており僕は向かっている。

 

 「ここ…?」

 足を止めた場所は雑居ビルだった。

 普通、洋服屋というのは大きな店舗とか自社ビルみたいな装いな感じなのだが……僕の目の前にあるのは本当に“ザ・雑居ビル”。

 「とりあえず……中に入るといいんかな?」

 怖い気持ちがあるが、雑居ビルの中に入っていく。

 といっても、この雑居ビルの1階が店舗のようで––色々なアニメとコラボしているであろう宣伝がなされていた。

 「ど、どうも…」

 シーン。

 え?営業している…?…あ、でも音楽流れているし……開いているよな。

 「え、えーと」

 「…あ、どうも!いらっしゃいませ!」

 奥の方から若い男性が元気よく挨拶してきた。

 その見た目は“秋葉原スタイル”という感じだった。

 予備知識として、今の秋葉原のファッションは【チェック柄のシャツをジーパンにインする】や【好きなアニメキャラの痛Tを着る】みたいなのは廃れていき––今はアニメのキャラをモチーフにした柄等をワンポイントで取り入れている感じが主流になりつつある!らしい。

 そんな主流になりつつあるファッションをしている男性だが……秋葉原にいる人間だなって一目でわかる。批判じゃなくて。

 「どうぞ見ていってください~。ちな、どんなアニメが好きとかあれば持ってくるんで!」

 「あ、わかりました」

 やば、人見知りすぎるぞ僕。

 と、とりあえず……服を見よう。

 小さい店舗なのだが、色々なアニメとコラボしているようで店に入り切れないくらいの量の洋服が並んでいる。

 「ん……わかんないぞ……?」

 とりあえず、目の前にあった服を取ってみたけど––何のアニメかもわかんないくらいクオリティが高い。

 値段は……うん、それなりなんだね。


 店内を何となくうろうろとしている僕に見かねた男性店員は僕に声をかける。

 「どうしましたか?はじめてっすかね?」

 「あ…あ、はい」

 「あ、説明しなくてすいません!お兄さんはどんなアニメが好きなんですか?」

 「えっと––」

 そこから身振り手振りで––ウマ〇が好きで––推しはこの子で––こんなところが好きで––とかなり説明した。

 すると、男性店員はニコニコしながら「うんうん」と答え––

 「じゃあ、持ってくるんで待っててください!サイズは間に合いそうですし!」

 そう言って、奥へと歩いて行った。

 つい熱弁したが……店内は僕以外誰もいないんだね。


 

 数分後、男性店員は「おまたせしますた~」と言って推しを模した服を持ってきた。

 「この子の服あまり店頭に並ばないんっすよね。ほら、主役じゃないから……あ、店舗が大きければならべるんですよ!?」

 「お、おお~!」

 男性店員の言葉を無視して、僕は推しの服に目がいく。

 「これ、着てみますか?」

 「着ます!」

 即答した僕に「じゃあ、試着室はコッチです」と店員は案内してくれた。

 

 数分した後、冷静になった僕は気づいた。

 「これ、傍目から見ると派手じゃない!?」

 でも、推しの服を着れたことに満足した僕は即決で購入した。

 ピンク色がメインの前開きパーカーに黄色と茶色のワンポイントが入った白T、ジーンズは右足の方が短くカットされてるジーンズ。

 「……うん、これで勝つる」

 少し大きな買い物になっちゃったけど、満足満足。

 僕のニッコリ顔を見た男性店員は––

 「また、いらしてくださいね!オタクの味方の店なので!」

 そういって、僕の背中を秋葉原のジャングルに送り出すように押してくれた。


 「さ…、次はパソコンと……ママと神様へのお土産か」

 そう呟き、ジャンクストリートでも大きな店舗へと足を向けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る