第3話 はじめてのお使い~大金と準備~

 あの神様の動画から夜が明けた。

 今は10時は過ぎて––遅めの朝ごはんを食べている。

 「そっか~、じゃあ余計に頑張らないとね!」

 「そうなんだよね~……でも、じゃあ具体的にどうすればいいのかわかんないじゃん」

 「タロット占いじゃ何もわかんないの?」

 「“近い将来”とかはわかるけど、誰がとか具体的なものはわかんないって感じ」

 「ふ~ん」

 隣に住むママさんはご飯を食べている僕の隣で絵を描いている。

 旦那のことは大丈夫なのか気になるが、よろしくやっているんだろう。

 それに、僕はそんな野暮な事聞かないよ?絶対、多分、メイビー。

 

 

 まあ、何でママに昨日の事を話しているかというと……。

 『お、やっと起きたか!おはにゃー!』

 電脳知識を得た神様がSNSで僕とママを見つけだして、フォローしたからだ。

 僕のフォロワー数5人、ママは2000人……神様は1万人。

 それなのに、僕達を見つけ出していきなりDMを送り付けてきた。

 後は……ママさんは「え、コイツなに!?」と僕に聞いてきたから話しただけ。

 普通に怖いよね。



 ……といっても、神様の名前が『猫神まろん』っていうのは……。

 設定も“電脳世界に生きる神様。我に仕える者を探し続け早何百年…そなた達、わらわに忠誠を誓えるかの?誓えば幸せが舞い降りるぞ?”なんて書いている。

 普通にめっちゃ怖い宗教団体みたいな書き方しているけど……ツイートの内容がオタクな話だったり、いじられるような書き方したり……ギャップ萌えを狙ってるからか1つのツイートに最低でも10件以上のリプ、100以上のイイネがついている。

 


 「バケモンだ。この神様」

 「いぬ丸くんの神様ってこんなにノリいいんだね」

 「……昔はそうじゃなかったと思うけどなぁ」

 「ま、私は歓迎だけどね!」

 食べ終えた食器を流しに置き、僕はママさんの絵を少しチラ見した後––神様からきた『おーい、起きてるんじゃろ?返信してくれぇい』に「はいはい」と返事を送った。昨日の事恨んでるからね?

 そこから数分のしないうちに––神様こと猫神まろんから返信がきた。

 『おお、よかった。つかぬ事を聞くんじゃけど……いぬ丸はどう活動するんじゃ?機材はあらかた揃えているし、ママさんからも揃えてもらったじゃろ?』

 『えっと……足りない機材があるって。あと配信するにはこのパソコンじゃ心もとないってママの知り合いが言ってたかな?』

 『ほむ……そうじゃな、確かに厳しいかもしれぬ……』

 『だから、少しだけ配信について学ぶ時間とかにする方が良いんじゃないかって』

 『アカン!アカンぞい!時間というのは有限じゃ、そして、Vも流行りがあるのじゃ!』

 『といってもなぁ…』

 実際、少し前から配信業界では“ASMR”という耳みたいなマイクに囁きボイスをしたりするのが流行っている。

 少し前だと、激辛の食べ物を食べるのが流行ってたっけ?

 

 『ということで、おぬしのスマホに“電子マネー”というのを送っておいたからこれで買い足しなさい。あと、わらわにアニメグッズをだな––』

 『え~』

 『おい、引きこもりすな』

 『着る服も何もないもん』

 『……ママさんがいっとったな……いぬ丸の服は旦那や私のおさがりだって』

 『いつの間に!?』

 『とりあえず、服は買ってきなさい』

 『は、はい』

 最後は何故か説教になったんだけど……要は身だしなみと配信環境を整えろってことか。

 「うわ、何でこんなに送ってくるの?」

 僕のスマホの中にある電子マネーの中には100万円近くのお金が振り込まれた。

 あっ、スマホはママがガジェット好きで使ってないスマホを貰ったんだけど……いや、怖すぎ。

 人間も獣も“常識を超えた何か”があれば反応は同じだよ。

 「どうした~?」

 「お、お金が……」

 「あ~、神様?」

 顔が青ざめて耳と尻尾は出ている僕を見て––ママが聞いてきた。

 なので、さっきの会話を再度見せながら事情を説明した。

 「ふむふむ……じゃあ、買ってくるといいよ」

 「え!?」

 「好意を無下にするのが失礼。それに、神様は君に期待してるってことでしょ?」

 「ん~」

 「それに、私のおさがりだと可愛い感じなっちゃうし、旦那のだとジャージとかになるし……ギャップあって私は好きだけど、色々なバリエーションあるといいでしょ」

 「た、確かに…?」

 「それに、神社を建設するってこの場所じゃなくてもいいんなら候補地とかを探すっていうのも良いんじゃないかな?」

 「ま、そうだね……?」

 「ってことで、いぬ丸くんは行っておいで!とりあえず、この服なら中性っぽいだろうし着ていけばなんとかなるさ。あ、でも尻尾と耳は隠してね?」

 半ば強引に渡された服––裾が長いパーカー、短パン、ハイソックス。

 そして、耳が出てもバレないようにと髪留めを渡してくれた。

 


 「……変じゃない?」

 「か、かわ…!あ、いや似合ってると思うよ!」

 「そ、そうかな」

 「やっぱ、私の目に狂いはないね!」

 「…?」

 「とりあえず、私からスマホの方に位置情報とか送っておくからそこに行ってみて!」

 「わ、わかった」

 なんか、どっかの番組でありそうだよな……はじめてのお使い?みたいな。

 ママさんから位置情報と大まかな必要な物を受け取ると––

 「私は今から依頼の作業あるから!頑張って!」

 そういって、僕の家からママさんは手を振って見送った。

 


 「……じゃあ、行くしかないか」

 僕は受け取った位置情報を見て––興奮を抑えつつ駅の方へと向かった。

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