もふもふ畑ドロボウ

第3話 なかまになりたそうに こちらをみている

フジカルは街の郊外で田んぼと畑を作っていた。フジカルが幼女の姿をした神と名乗る存在から得たチート能力は規格外であった。従来では考えられない短期間のうちに農作物を収穫できてしまうのだ。おかげで米の生産は順調である。


いま目の前にある田んぼも順調だ。田んぼの水は抜かれ、黄金色に実った稲穂たちは頭を垂れている。今日は初のもち米収穫だ。これまで何種類かの米を作って来た。


「餅を作るぞ🎵餅を作るぞ🎵」と謎の歌を口ずさみながらフジカルは農作業に勤しむ。


そんななか、フジカルは野菜と果物の畑で異変に気がつく。


喰い荒らされている!!!!


茄子、トマトなどの野菜、葡萄などの果物を何らかの生き物が食べた形跡があった。そして、畑には犯人と思わしき獣の足跡が残されていた。フジカルをさらに怒らせたのが、残された足跡が田んぼから続いており、稲を倒しながら獣が通ったと思われる獣道ができていることだった。


「ゆるさん。。。。」


そう思ったフジカルは、畑ドロボウを捕まえることにした。おそらく、犯人は夜行性なのだろう。フジカルは、犯人が通りそうな数箇所に網による罠をしかけ、帰宅した。


帰宅したフジカルは、さっそく収穫したもち米の調理を始めた。保存が可能な餅と、すぐに食べるための餅など、何種類か餅を作ったが、明日の農作業には、きびだんごを持っていくことにした。農作業をしながら食べるきびだんごは、さぞ美味しいだろう。


次の日、フジカルはきびだんごを腰に下げて、自分が管理している農地へと向かった。昨日仕掛けた罠を確認すると、罠にタヌキがかかっていた。


「畑ドロボウめ!お縄を頂戴しろ!」


そう叫んでフジカルは罠に駆け寄った。


「よし、今日はタヌキ鍋だ!タヌキ肉は高タンパク低脂質!」


しかし、タヌキのジビエは獣臭が強いという意見も聞いたことがある。処理の問題と言う人もいれば、個体差という意見もあるようだ。いずれにしても試す価値はありそうだ。なにごともチャレンジだ。幸いなことに、近くに川があり、血抜きなどの処理はすぐに行えそうだ。


「ぬふふふふふふ」と悪い笑顔のフジカルが罠にかかったタヌキに近づくと、タヌキが急に岩に変わった。


(なんだこの岩は?)とフジカルは思ったが、ここは異世界だ。変わったことのひとつやふたつはあるだろう。気にせず岩を持ち上げる。


すると、持ち上げ始めてから、急に岩が重くなっていった。


(重さが変わったぞ!)そう思いつつも、さらに持ち上げようとする。すると、さらに岩は重くなる。


「ぬおおおおおおおぉぉぉぉ」


と大きな声を上げ、フジカルは岩を頭上まで持ち上げた。


すると岩は急に少女へと変わった。


「ひえぇぇぇぇーーー。なのです」


と少女は叫ぶ。


よくみると、少女の頭には茶色くて丸い耳があり、タヌキのような大きなしっぽもある。


「助けてください!なのです」


と丸耳少女は叫ぶ。


「畑の野菜と果物を盗みやがって!このドロボウ!そして何よりも許せないのは田んぼの稲を倒したことだ!」


とフジカルは丸耳少女に言った。


「ごめんなさいなのですーーー!ごめんなさいなのですーーー!私を食べないでくださいなのです!」


と丸耳少女は謝る。


「どうしようかな。。。タヌキ鍋。。。。」


とフジカルが言うと、


「私は役に立ちますよ、なのです!変身ます、なのです!」


というので、


「そういえば、重さが変わるのは面白かったなぁ。ケトルベルになってみて」


とフジカルが要求し、サンプルとして本物のケトルベルをアイテムボックスから出した。


「はい、なのです!」


そう言って、丸耳少女はケトルベルへと変身した。


「面白かったから許してやろう」とフジカルは言って、丸耳少女を解放した。


すると、丸耳少女はモジモジしながら聞いてきた。


「このような状況にて、このような質問をしてしまうのは、大変恐縮なのですが、お腰のものはなんでしょうか?なのです」


「あー、これはきびだんごだ」


とフジカルが答えると、


「お腰につけた、きびだんご、ひとつ私にくださいな。なのです」


言ったので、「ああ、いいよ」と言って、ひとつ渡した。


丸耳少女がきびだんごを食べると、フジカルの目の前に突如、変な四角い画面みたいなものが登場した。


”まるみみしょうじょは、なかまになりたそうに こちらをみている"

"なかまに してあげますか"


と書いてあり、そこに


"はい いいえ"


という選択肢があった。とりえあず、"はい"を押す。


すると、丸耳少女は


「おともになります!なのです」と言い始めた。きびだんごで仲間になるのは、さる、きじ、いぬ、だったはずだが、細かいことを気にしても仕方がない。


「え?親は?ところで、名前は何ていうんだ」


「私には、生まれたばかりの精霊なのです。そして精霊には親という概念はないのです。まだ名前がありません。なのです。フジカルさんが名前をつけてください!なのです」


というので、何か名前を考えないといけないらしい。


「じゃあ、耳が丸いから、まるい、みみ、の頭文字を取ってマミにしよう」


すると二人がひかり、フジカルの目の前に「テイムが完了しました」という文字が登場した。意味がわからないが、きっとそういうものなのだろう。気にしないことにした。


その後、どうしてもついてくると言うので、とりあえず、そのまま連れて帰ることにした。


(ウェイトに変身できるし、重さも変わるので、トレーニングの助手でもしてもらうか)


そんなことを漠然と考えながら帰路についた。


冒険者ギルドに到着して、事情をエリカに説明すると、エリカは目を丸くしていた。


「精霊をテイムしたってことですか!?それは前代未聞じゃないですか?」


エリカは、その後バタバタしていたようだが、マミの生活拠点を冒険者ギルド内に作るための事務作業をその日のうちに完了してくれたようだ。やはりエリカは優秀なギルドスタッフだ。

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