第1.4話 フジカル、ギルド職員になる

冒険者ギルドに到着したフジカルと女性冒険者4人は、入り口に入って正面にある受付に行った。


「こんにちは」


ギルド受付にいる受付嬢は、少し大人しそうな雰囲気があるものの、何かしっかりと芯がありそうな雰囲気を感じる。

おしゃれで小さな帽子を被っており、スカート姿だ。おそらく、ギルド職員の制服だろうと推測される。


ギルド受付嬢の名札には"エリカ"と書いてある。


「迷い人保護プログラムって、どうすればいいんだっけ?」


森で会った背が高く恵まれた体格の女冒険者がエリカに聞く。


「迷い人ですか!珍しいですね。この支部では初だと思います。」

「まずはステータスを確認させてください。この水晶に手をかざすとステータスが表示されます。」


手をかざすと、何やら四角い画面っぽいものが水晶の上に登場するが、その内容を見てエリカがギョッとする。


「え?なんかあり得ない量のスキルなのですが。。。」


何やら色々と神と名乗る幼女の姿をした存在がくれると言っていたが、この世界では、それを確認できる仕組みがあるらしい。なんとも謎テクノロジーだ。


「よくわからないけど、さっき、神と名乗る金ピカな存在からスキルを渡されたっぽいんだよねー」


それを聞いた受付嬢は、少し何かを考えてから、場所を移して話をした方が良いのではないかと考えたようだ。


「別室で相談させてください。。。」


そして、受付奥にある個室に連れて行かれた。中央に膝の高さよりも低いテーブルがあり、両側にソファのような少しゆったりとした椅子がある。受付嬢と向かい合わせに座る。


「ある日、突然、他の世界からこの世界にやってくる人の記録は多く残っています。」

「そういう人々は、迷い人と呼ばれています。」

「そういった人々は何らかの高度な能力を持っていて、社会に大きな変革をもたらすこともあります。」

「過去に魔王を倒した勇者のうちの何人かは迷い人だったそうです。」


少し話がおおごとになってきているような気がしなくもない。ただ、面白そうな話ではある。


「迷い人は影響力大きい可能性もあり、国による迷い人の保護プログラムがあります。」


今のところ、この新しい世界でどこにどうやって生活していくのか、全く不明な状態なので、正直、保護プログラムみたいなものがあるのであれば、すごく助かる。


「この街のギルドでは初ですが、迷い人としてあなたを保護することができます。」

「住む場所としては、このギルドの部屋があります。」


至れり尽くせりではないか。何か裏があるのか?それともないのか?

ただ、どちらにせよ、いまの自分には選択肢があまりないので、黙って流れに身をまかせるのが良さそうではある。


「仕事ですが、この冒険者ギルドの職員として働いてください。何か希望する職種などはありますか?」


藤軽は、転生前に、それまでどのような活動を行なってきたかを説明した。

この世界においても、人々の身体を改善する手助けを続けられるのであれば嬉しいことも伝える。


「それでしたら、この冒険者ギルドでも、あなたの知識や技能を必要としている冒険者が多数います。」

「最近は、あまり使われていませんが、地下に訓練場があるので、そこを好きに使ってください。」


トレーニング指導を行うとき、そのための場所や施設をどうするのかは、ときとして大きな課題である。

場所が確保されるのであれば、それも非常に助かる。


「ところで、藤軽さんは元の世界で貴族でしたか?」


いわゆる普通の家庭であった。元の世界では貴族なんてそんな凄いものではなかった。なぜ、そう思ったのだろうか?


「いや、うちはそんな大層な家柄じゃないぞ」


とりあえず、否定する。


「この世界では苗字と名前があると貴族のように思われてしまうので、どう名乗るのかを考えた方が良いかも知れません」


めんどくさいなぁと思わなくもなかったが、郷に入っては郷に従えなので、提案通りにすることにした。


「では、とりあえず"フジカル"と名乗ろうと思う」


「承知致しました。では、フジカルさん、同じギルド職員として、これからよろしくお願いします!」


フジカルのギルド職員生活が開始した!


――――――――――


フジカルが異世界でギルド職員になってからしばらく経った。フジカルも新生活に慣れてきた。


ある日、フジカルがギルド内を歩いていると、受付前で先ほどの女性冒険者グループが何やら言い争いをしている。


赤髪で剣を持った女冒険者が他のメンバーに責められている。


全体的に白っぽい服を着ており、防具なども軽装な姿の女性が文句を言っている。


「あなた、もう、何回も勝手に転んで膝を怪我して、毎回、回復魔法をかける私の身にもなって欲しいですわ。」


大柄な盾を持った女性も続けた。


「サリーの自損事故がなければ討伐できてた。この前、別の討伐のときも自損事故を起こしていたし、自損事故多すぎじゃない?助けに行くのも大変なんだけど。」


多少小柄で、三角帽子を被った防具が軽装な女性も、続けて批判している。


「ん。あのときも左膝だった。毎回助けるの大変。困る。」


魔物による攻撃ではなく、自分自身の動きで勝手に怪我をしてしまうことを"自損事故"と冒険者たちは表現しているようだ。その表現は、フジカルが元いた世界でもたまに耳にする表現だった。スポーツの試合において、他の選手の接触プレーではなく、急激に方向転換を行おうとした瞬間に一人で勝手に怪我をしてしまうような状況を"自損事故"と表現することが多かった。


3人に責められている赤髪の女性は、少し落ち込みながら反論している。


「私だって怪我したくて怪我してるわけじゃない。。。いいところで、急に足に力が入らなくなって、痛みが走るけど、何でそうなるのか自分でわからないよ」


どういう状況だろう?もしかしたら元いた世界でも良く扱っていた怪我に似ているのかも知れないと思い、そこへフジカルが割り込んだ。


「どういう状況で怪我をしたのか、教えてくれないか?もしかしたら力になれるかも知れない」


女性冒険者グループは、少し驚いた表情で、こちらを見ている。

よく見ると、冒険者ギルドまで案内してきた迷い人のフジカルだ。

迷い人保護プログラムの対象者だし、何か特別な能力があるのだろうか?


近くにいた受付嬢のエリカも、フジカルのトレーニングをサリーに勧めた。


「フジカルさんは、見た目は少し風変わりかも知れませんが、腕は確かですよ。同じ怪我を繰り返してしまっているのであれば、相談されてみてはいかがでしょうか?」


少し考えてから、赤髪の冒険者が起きたことを話し始めた。


「さっきの話だけど、、、」

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