第6.3話 IMTP(Isometric Mid-Thigh Pull)
フジカルによる難易度の高い話が続く。エリカとパタヘネは、全部を理解するのをあきらめつつあった。
「RFD(Rate of Force Development)がスポーツで最も重要な体力特性である、と2020年の解説論文[Taber2020]に書かれている」
「遠くへジャンプするという課題に関しても、RFDは重要な要素だ!」
「遠くへジャンプできるようにするために、これからRFD(Rate of Force Development)を意識しながらトレーニングを続けていこうと思う」
「RFDを測定するのに利用する機器がこれだ!」
力の立ち上がり速度を計測するためという理由でフジカルが登場させた機器は見たことがないものだった。
数センチの厚さがある四角い金属板が床に置かれており、その中央に太い頑丈な紐がついている。紐の先には金属の棒がついている。
「これは、フォースプレートという機械だ!」
「フォースプレートは圧力を計測する機械だぞ!」
「身体から地面に対して、どれぐらいの力を発揮できているのかを測れる優れものだ!」
「そして、これから行うのは、フォースプレートを使ったIMTP(Isometric Mid-Thigh Pull)という計測手法だ!」
「この機械を使うと、RFDなどを計測できる。まずは現状を把握することが大事だ!」
「そして、改善しているかどうか定期的にチェックしながら自分の現在地を確認し続けることも大事だ!」
「じゃあ、さっそく計測を行おうか!」
「このフォースプレートに乗って、フォースプレートと繋がっている金属の棒を両手で持つ!」
「このとき、背中はまっすぐ、膝は軽く曲げて、金属の棒はふとももの中間地点ぐらいに来るように」
「そして、そこから、速く強く、上に向けて棒を引っ張る!」
「上に向けて棒を引っ張るのだけど、イメージとしては地面を強く押す!」
「じゃあ、早速やってみよう」
準備が整ったパタヘネを見て、とフジカルは叫んだ。
「爆発的に、速く強くだ!」
「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」と大声を出しながらパタヘネが棒を上に引っ張る。
そして、フジカルの隣で見ているエリカに対して、パタヘネに聞こえないぐらいの小声でコッソリ伝えた。
今後、このような計測をエリカが一人で出来るようになるために重要なポイントを伝えたかったためだ。
「実は、RFDの測定を行うときに、どういう声をかけるかで結果が変わることがあるんだ」
「2016年の論文[Maffiuletti2016]では、"速く"と"強く"を組み合わせた声かけを推奨している」
「トレーニングを行っているときに、どのような声をかけるかで、トレーニングの内容や質が変わることも多いんだ」
「これは、キューイングと呼ばれることもあるが、トレーナーという職業は、キューイングのアートでもあるわけだ」
パタヘネがフォースプレートの上で棒を思いっきり引っ張ったのを見てから、フジカルが言った。
「じゃあ、結果を見てみよう」
フォースプレートの前に立つフジカルは何か四角いものを手に持っている。
「そして、これはノートパソコンという文明の利器だ!」
「IMTPを行った結果は、このノートパソコンで把握できるぞ!」
また不思議なものを使っている、とエリカは思った。
フジカルが続ける。
「計測結果を見てみようか」
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参考文献
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[Taber2020]
Taber, C., Bellon, C., Abbott, H., & Bingham, G. E. (2020). 筋パワーを最大化するための最大筋力と力の立ち上がり速度の役割. Strength & conditioning journal: 日本ストレングス & コンディショニング協会機関誌, 27(2), 42-48.
[Maffiuletti2016]
Maffiuletti, N. A., Aagaard, P., Blazevich, A. J., Folland, J., Tillin, N., & Duchateau, J. (2016). Rate of force development: physiological and methodological considerations. European journal of applied physiology, 116, 1091-1116.
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