第3話 尾行はエスカレートする

 愛さんを尾行して彼女の家を知った俺。用件が済んだので、すぐ帰宅した。


「お兄ちゃん、おかえり~」

リビングから妹の貴子たかこが笑顔で玄関にやって来た。


「今日遅かったね? 何かあった?」


入学式とホームルームだけにしては遅い帰宅だからな。疑問に思うのは無理ないが…。


「色々あるんだよ」

いちいち訊いてくるな。答えるのが面倒じゃねーか。


「そうなんだ…。私に出来ることがあったら何でも言ってね」



 今でこそ大人しい貴子だが、中1の時に荒れたことがある。その理由は名前だ。


同級生と比べて古臭い名前が気に入らなかったようだ。俺の名前の“隆”は今でも通じるが、貴子はなぁ…。


母さんは「またこういう名前がブームになる」なんて訳が分からないことを言ってなだめた。当然貴子は納得しなかったが、数日後には何事もなかったかのように大人しくなった。


名前は変えられないからな。文句を言っても無駄だと気付いたか。名前について触れないほうが良いのは言うまでもない…。


それにしても、愛さんを観た後だと貴子はショボいな。ことわざで言うと『月とすっぽん』だ。高校生になって世界が広がったから、愛さんを知ることができた。


大学生になったら、愛さん以上の女がいるのかな? そう思わずにはいられない。



 自室に戻って着替えた後、愛さんの後姿の動画を再生した。…こんなのでは満足できないが、仕方ないからこれでとしよう。


貴子に抜いてもらうことも考えたが、愛さんの事で頭が一杯なので勃起するとは思えない。その事を貴子に追及されたくないので、1人でるのだ。



 入学式の翌日から愛さんの家を遠くから観察をするつもりだったが、放課後は学校の疲労があるので断念した。やるのは祝日だけにしよう。


そして、高校生最初の祝日。俺は愛さんの家の近くまでやって来た。ここは住宅街だから長居はできない。どこで観察すれば良いのか…?


辺りを見渡したところ…、マンションがあるじゃないか。マンションの渡り廊下から、持っている双眼鏡で観察すれば良いな。


あらゆる事態を想定して、双眼鏡を準備しておいたのだ。買って良かったぜ。


とはいえ、住宅街で使っていると観察がバレてしまう。なのでマンションと階層をこまめに移動し、観察を悟られないようにしないと。


人の視線を気にしながら観察する訳だが、如月家が飼っている犬の散歩を1度も見かけてないのが気になる。ミニチュアダックスだから散歩不要なのか、俺が目を離したすきにしてるのか、そのあたりはわからない。



 そんな風に祝日限定の観察をして、1か月ほど経過しただろうか。愛さんとは未だに1回も話しておらず、あれ以降貴子に抜いてもらったことはない…。


今日も何気なく如月家を観ていたんだが、なんと愛さんが犬の散歩をしに家を出るのを目撃した。


これは話しかけるチャンス! 俺は急いで愛さんの元に向かう。



―――

次回、最終回になります。


今作はストーリー展開の幅を増やす練習のため、あえて作風を大きく変えています。他作品と全然違う雰囲気なので、驚かれた方もいるかもしれません。


そういう理由なので、元々短編で終了させる予定なのです。シリアス・クズ方面に方針転換した訳ではないので、ご安心を?

―――

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