第3話 家を出てから兄の一〇分後

腕を掴まれてからの俺のドキドキは止まらない。

ガッチリと腕を掴まれてしまい、逃げるに逃げられない状態だった。

このままでは俺のドキドキが、伝わってしまうのではないかと心配になった。

おいおい、ちょい待ち。ドキドキしているだと。俺がか? 誰に? 相手は妹だぞ。ドキドキなんてするはずがない。

さらに柔らかい部分がやけに腕やわき腹にあたってくる。

妹にここまでドキドキされられてたまるか。だって妹なんだぞ。

いつも一緒に居て、幼稚園から高校まで同じで、俺の後をいつもついて来ているのも、いつも知っているあの妹だぞ。

それを相手に好きになるなんてことがあってたまるか。

妹の分際で俺の心を思考が完全に支配されているのか。

くそ!

それが真実だとしたら俺はどうしたらいいんだ。

妹に手を出す兄なんて正直キモイ以外何もないだろうが。

モテないやつが言い寄ってくる妹に手を出したなんて、本当にキモイ以上に最低だ。

だが、なんだろうかこの心の底から湧き上がる気持ち。

待てよ俺。勘違いするな。

妹はただ単にをしているだけだ。あくまでごっこだ。

幼稚な遊びだよ。でも、何だよその目は……。

うるうるして今にも泣きそうじゃないか。

俺何か言ったか? デコピンが痛かったのか?

いや言った。からかったのは悪かった。

そんなに泣きそうになるなよ。お前の涙に弱いの知っててやってるだろ。

策士だ。これは孔明の罠だ。

それに艶々な唇が「お・に・い」とかって言ってるし。

負けたよ。今日の買い物は俺だな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る