閑話 あ~んなコトやこ~んなコトを振り返ろう!

「まずは……改めてボクのことを話そっか」


「わーい☆ 楽しみだなあ、キミたちも耳の穴ほじくり倒して聞くんだよ?」


「ミミ…………? ワカ……タ……セシル……グチュグチュ……スル」


「うわー!!?? テンやめ……ひゃぁっ……んんっ!!」


「あはははっ! 気持ちよさそうじゃないか☆」


「ぅんっ……わらって……にゃいで……たすけてよぉ!! ぃやぁぁっ!!!!」


「あわわ……だめだよテン!」


「ナゼ?……ウレシソウ……カオ……ナノニ」


「そ、それは……えっと、話をもどすね! ボクはこことは別の世界で暮らしてたんだー」


「はぁっはあっ……んっ……だいしゅきな家族と……たのしく……ねっ」


「うん、でもちょっと愛が重いっていうか……それで授業参観の帰りにお姉ちゃんたちから逃げだしちゃったんだ」


「カゾク……キライ?」


「ううん、そうじゃないよ。今はすっごく会いたいし……っていうか、そろそろやめてあげてね」


「あはぁ♡ あたまのにゃか、ふわふわしゅるぅ~♡ ひゃぁん♡」


「うわ~……さすがにまずいね。ほら離すんだ、テン」


「ワカ……タ」


「ふぇ~? やめちゃうのぉ♡…………はっ!! あ、あたしはナニ……を……」


「セシル? だいじょ――」


「いいから続けてっ!! そして忘れてっ!!!!」


「は、はい!! それで逃げた先の川から光が飛び出したんだ! で、気付いたらこっちの世界に!」


「その犯人が、そこで呑気に魚を焼いてるアズよ!」


「もう、人聞きが悪いなあ……ワタシだって色々考えてるんだからね? お、いい感じ……はい、コハくん! いっぱい食べて♡」


「あ、いただきます……はむっ……んんっ! おいしいです!」


「いろいろって、コハクはこの世界じゃ1年しか生きられないんでしょ? どうするつもりだったのよ」


「コハク……シヌ!?」


「もぐもぐ……そ、そうならないようにダンジョン……この研究所の最深部にある次元間移動装置で元の世界に帰ろうとしてるんだよ」


「無謀にもほどがあるけどね。あたしが気づかなかったら、今頃ワンちゃんの栄養になってたわよ?」


「ワンチャン……?」


「シノバンジュウっていう、頭が3つのおっきい犬?が襲ってきたんだ。もぐもぐ……実はね、そこでかわいく寝てるノバはその子供なんだよ」


「自分の子供を見れば落ち着くと思ったんだけどねえ……子供すら忘れるくらい興奮してたみたいで結局止まらなかったのさ。ワタシの機転で切り抜けたけどね☆」


「偉そうに……まあ実際、助かったけどね。それは感謝してる」


「ふふん、それでセシルくんも一緒にいくことになったんだよね~?」


「う、うるさいわね。あんただけじゃ心配だったのよ」


「セシル……テレル……?」


「あはは、それでねセシルと一緒に階段を下りたら地下がジャングルみたいになってたんだよ!」


「あれはびっくりしたよね。しかも、いつの間にか着いて来てたノバが飛び出した挙句、ニクジキノタイリンとかいう花の化け物に捕まっちゃうから大変だったよ」


「ヤバイナ……ピンチ……」


「そうそう、あたしも捕まっちゃって……2人がなんとか助けてくれたけど、全員気を失っちゃって」


「目が覚めたらシェルターの中に……あっ」


「ん? コハク、どうしたの? 骨ささっちゃった?」


「ううん! だいじょうぶ! それでね、レオードって言う変なおじさんが襲ってきて……」


「レオード……ヘン……」


「そうそう、ワタシ達で追い払ったけどね」


「あたしは気を失ってたんだけど、コハクが守ってくれたのよ!」


「それなのに投げ飛ばすなんてねぇ……」


「うう、だから看病したじゃない……」


「き、気にしないで、変な夢は見たけど何事もなかったし」


「ユメ……?」


「うん、家族とカレーを食べる夢なんだけどね……黒い……もやもやが……いて」


「コハくん……? もじもじしてどうしたんだい?」


「え? 気のせい、ですよ。それより話を戻しましょう? あー、目を覚ましたらノバが喋ってびっくりしたな~」


「う、うん? この首輪の機能よね」


『ふにゃぁ~……』


「あ、ごめん。起こしちゃった?」


『にゃぁ~? よくねたにゃん~』


「そ、よかった……って言うかよく壊れないわねその首輪……今更だけど」


「確かに目を見張る耐久力だよね。倉庫で標本の粘液まみれになっても平気だったし」


「ええ、ニクジキの群れにに追いかけまわされた挙句、水浸しになったけど問題なさそうよね……ああ、そうそう! シェルターの出口が海の中につながってて大変だったのよ!?」


「扉はパスワードがかけられていたんだけど、コハくんが解読したんだよ☆」


「へっ!?」


「あ! アズ、あんたまたコハクに変なことしたわね!?」


「え、いやいや! ちょっと肩に手を置いただけだよ!?」


「は、はい……大丈夫……です。えと、ここからはもう知ってるか……シェルターを脱出してすぐテンに捕まっちゃったんだ」


「ウン…………ゴメンネ……」


「もう怒ってな……ひゃっ!?」


「コハク……ワラッテ……?」


「やっ……やめっ……くすぐらないで…………」


「大丈夫コハク!?」

「こらテン!! 早く離れるんだ!!」


「あ、あぁ……だめぇっ……漏れちゃうぅ!」


「「え?」」


「コハくん、おしっこ我慢してたの?」


「あ、その…………」


「もう、そういうことは早く言いなさい。ほら、一緒に行くわよ」


「い、いや……一人で行けるっ……から」


「でも、もう日が暮れ始めてるし危ないよ? ワタシがしっかり見張っていてあげるからさ」


「いいですいいです!! あっ……も、もう……がまんできないっ!! ちょっと、いってくる!!!!」


「コハク!? ひとりじゃあぶな……」

「ノバ! コハくんを守って!」


『にゃにゃ!? わかったにゃん! ご主人ー! ワンもついてくにゃん~!!』


「…………いっちゃったね」


「アズ、追わなくて大丈夫なの?」


「心配だけど、コハくんに嫌われたくないし……ノバがついてるなら大丈夫さ」


「そ、そう……ね……待ってるわ。テンもいい?」


「……っ!?」





☆CHO☆RO☆CHO☆RO☆





「はあぁ~~……あぶなかったぁ……」


 ボクは晴れやかな気分で草むらから出た。みんなのいるキャンプに戻るため木々をかき分け進む。湿気の含んだ葉っぱがぴたりと腕にくっつくのも気にならないほど爽やかな心地だった。


『ご主人、随分すっきりした顔してるにゃん』


 先を歩くノバが振り返り、心なしか目を細めた呆れ顔でボクを見ている。


「あはは……あ、ほら、焚火の明かりが見えたよ!」


 ボクは誤魔化すように光に向かって駆けだした。草木のトンネルを抜けて勢いよく飛び出す。 


「ただいま!」


 返事は返ってこなかった。ただ、薪が弾けるパチパチという音が闇に響いている。


「あれ……? みんな、どこに」


 焚火の周りには誰もいなくなっていた。いや、目を凝らすと闇に紛れて黒いスーツの人影がひとつ揺らめいている。


「ぃよぉ~~? 元気そうだなぁ、早乙女琥珀ぅ……」


「レオード……!? なんでここにっ!!」

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