第33話
33
残業で残っていた社員たちがいなくなった部屋で、自分には友里という
恋人がいて根米とは付き合えないと説得を試みていた時、突然彼女は
自分で自分の身体のあちこちに傷をつけ、ブラウスを引きちぎり
外に駆け出して行った。
そしてそのあとは根米の狂言で大変な目に合うことになった。
会社にセクハラされたと彼女が俺を訴えたのだ。
******
これまでセクハラされてきたと言う根米と、今までのことは合意で
どちらかと言うと根米のほうが積極的だったこと、今回の主張も
言いなりにならない自分に対する当てつけで狂言であること、と
主張する神尾。
言うべきことは毅然とした態度で主張したものの、自分の主張が
ちゃんと通るかどうか、実のところ神尾には自信などなかった。
どうなるのか冷や冷やしたが、ある女性事務員が、根米が神尾との関係を
うれしそうに話していたと証言してくれたため、えん罪が証明された。
しかし、上司が部下に手を出したということで、神尾は会社には
いられなくなった。
子供を堕胎させたきりになっていた友里のことを想わない日はなく、
また自分の犯した罪の意識も日に日に強くなり、神尾は根米と揉め始めた頃
よりも更に重苦しい日々を過ごすようになっていった。
それでもしばらくして落ち着くと、会社を辞めることにはなったけれど
根米とも縁が切れ、愛しい友里の元にもう少しで帰れるのだと思うと
久しぶりに心が軽くなっていくのを感じた。
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