第28話 『苦しめてごめん・・』

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昨日の今日だ、ここは絶対外せない大勝負の時である。


 なんとしても、なんとしても、神尾を自分の最大限の魅力を駆使し

虜にして振り向かせなければならない。



 シャワーを浴びながら『あんな田舎者の友里とかいう女、私の魅力で

忘れさせてやる』


と息巻くのだった。



 また友里に対する仕打ちを見て根米に対するイメージが変わったものの、

ストレスがあったり酒の作用があったりで、この夜も神尾は根米と熱くて

濃厚な時間を過ごすのだった。




 そしてその後、嘗て一度も無かったことだが迂闊にも

体力を使い果たした神尾はうとうとしてしまい、それはその様子を

窺っていた根米の顔をほころばせるのに充分だった。

 


 根米は神尾が意識を手放したのを用心深くチェックし

神尾のスマホからまんまと友里のアドレスをGet。



 内緒で撮ったこの日のツーショットをメールで友里に送り付けた。



『子供のことでうじうじ泣いて神尾を縛り付けるな。

神尾に相応しいのは神尾に頼ってばかりの友里ではなく、

元気づけることのできる自分こそが結婚相手として相応しい。

 もう神尾に連絡してくんな』と。

 


 根米は元々神尾の代わりに友里への返信の文を考え

送信していたのだが、この夜神尾を差し置き勝手に自分の意志だけで

友里に神尾の側から離れろと攻撃的なメールを送りつけたことで、

ますます神尾攻略の意志を固めるのだった。


          ◇ ◇ ◇ ◇


 この夜、ひとしきり熟睡していた神尾は明け方早くに目覚め焦った。


 これまで根米とホテルを利用して寝てしまったり泊まったことは

なかったから。



 恋人でもあるまいし根米と一緒にホテルを出ることだけは避けなければと瞬時に考えた神尾は根米を起こさないようそっと部屋を出た。


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