第五話 件の場所

 天女の銅像の地点から、更に湖を左回りで二人で歩いて回っていると、やがて、くだんの場所に着いた。

 夫が溺死していたあの場所…

 そして、傍らかたわにあった木が光り、私をその光が包み込んで時が戻されたあの場所。

 私は眉をひそめながら、その場所をじっと眺めた。

 「どうしたの?そんな怖い顔をして」

 「ううん。何でもない。この木ってなんなの?なんか立て札あるけど」

 「ああ、そこはちょっとわからないから調べるね…」

 夫はスマホを眺め始めた。マップアプリで木について検索しているようだった。

 「あった。なるほど。そこが僕がさっき言ってた羽衣伝説で…ちょうど羽衣がかかっていた木だ」

 羽衣は天女が持っている空を飛ぶための道具であり、神的な力がある。私はその力によって時を飛ばされたのだろうか。そう考えるとあの超常現象の説明がつく(?)

 私は急に気持ち悪くなった、と夫に伝え、その木の場所からそのまま車に引き返した。色々なことが立て続けにあり過ぎて、頭がこんがらがっているため、すぐさま家に帰って、今回の一連の出来事を文字に起こして振り返り、自分の中で整理しようと思ったのだ。


 

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