27. 苦行も魔法を使えば楽々
「くっぎょーのじっかーんがはっじまっるよー」
〝歌いながら言うことじゃないと思う…〟
〝苦行だしなぁ〟
〝歌わなきゃやってらんないんじゃないかなぁ〟
「まあ魔法ででっち上げるんやけど」
〝大丈夫?魔力持つ?〟
「明日休むならもーまんたい」
〝大丈夫じゃなさそうですね…〟
「いやー、ぶっちゃけどんだけ魔力使うかわからんけえなー」
〝たしかに。何とも言えないか〟
収穫物保管用の倉庫に移動。作業スペースっちゅーほどのはないけど、まあ適当にやろか。
お、搾乳バケツ洗ってくれとるな。ありがたい。
現状消耗はそれなり。回復してきとるけえじゅーぶん持つとは思うけど…加速だけやったら余裕もっていけるか?いや、加速はせんで、ゴリゴリぶんぶんその他雑事で魔力使おか。そっちのがまだ消耗少ないし。温存温存。
〝まずは炒るんだっけ?〟
「いや、先に豆洗う」
〝見えないゴミがついてるかもしれないからね〟
魔法でさらっと水洗いー。これだけでも水がちょっと汚れるんやけえ、見えへんゴミって怖いよなぁ。
洗い終わったらさらっと乾燥ー。表面の水分は飛んでけー。
「んで、煎る!」
〝フライパンでいって大丈夫なもん?〟
〝量が量だし、大丈夫じゃね?〟
〝カカオポッド10個分でしょ?豆が少なくとも300個はあるんだよ?大丈夫?〟
〝分けてるみたいだし、温度さえ問題なければフライパンでも大丈夫じゃないかな〟
〝浅煎り?深煎り?〟
「どっちしよっかなーって迷って半分に分けた」
〝なるほど、それもあったのか〟
〝いいね〟
〝どっちがその豆に適してるかわかんないからね〟
〝発酵は回数かさねないとだけど、炒り方は量さえあれば分けて試せるね〟
〝今回豆ロースト?〟
「うん。主流らしいし」
〝香りのいいカカオマスを取るなら豆ロースト法だな〟
「おっし、フライパンの表面温度100度ー。まずは浅煎りや」
低温浅煎りと、高温深煎りの2パターンが主流らしいけんな。両方試すんや。
「んー、香ばしい匂い」
〝香りはやっぱ深煎りのほうが強い?〟
「かなぁ?どことなく苦味のある香りっちゅーか」
〝浅煎りは?〟
「深煎りよっかあんま匂いせんなぁ。どことなく甘酸っぱい香りはする。こんなもんなんやろか?」
〝炒ってる時間短かったのかな?〟
〝そういうわけでもなさそうだけど…〟
〝100℃で1時間だしなぁ〟
〝高温深煎りは140℃で30分くらいだったね〟
〝温度が低すぎた?〟
〝豆に適した温度でなかったってのはありそう〟
「あるんやろか?」
まあ今回はこんままいくけど。お試しや、お試し。
「煎り終わったけん、分離させてくでー」
〝皮取らなきゃ〟
〝雑味につながるんだっけ〟
〝砕いて取るのも大変だー〟
「そこは魔法ででっち上げるでー」
魔法で豆を砕きー、皮を風で浮かしー、うん、いけそう。
〝粉砕!玉砕!大喝采!〟
〝なんのネタだっけ、それ〟
〝大昔のカードゲーム系アニメのキャラのセリフ〟
〝たしかやべーキャラだった〟
〝なんか再放送されてたそれに不快感を感じた某国首脳陣が一時期、電波ジャックであのアニメ見るのを禁止にしたらしいね〟
〝24世紀頭ぐらいに他のアニメやマンガもなんかそうなったらしいな〟
〝国民に悪影響を与える!とかなんとかで、サブカル系も全般アウトだったとか〟
〝その果てには神話系も…〟
〝神話も宗教も全否定だったらしいな〟
「あれなんやったんやろな?詳細なデータ、サルベージしてもたいして出てきぃひん」
〝2350年から2650年のデータがかなり虫食いなんだよなぁ〟
〝意図的なデリートがあったって言っても、何がどうなってそうなったのか…〟
〝それでもちょいちょい残ってるだけすごいと思う〟
〝それはそう〟
〝歴史オタクさまさまだよなぁ〟
せやな。何人かの歴史オタクが、過去を、今を未来に残そうって、いろいろ記録取って残してくれとらんかったら、この時代にまで大昔の情報は残ってへんかったと思う。
情報の虫食いは、まあしゃーなし。昔はどこの国でも情報統制、改竄は当たり前やったやろうし。マザーが太陽系人のトップに立ってからは減ったけど。
「おし、こんなもんやろ」
〝おー、カカオニブできてる〟
〝ぱっと見皮なさそうね〟
〝皮どうすんの?〟
「あとで燃やして灰は肥料にしようかなって」
〝なるほど〟
〝有効活用〟
あとはこれをすり潰してカカオマスにすりゃあええんやったか。
〝たしかカカオニブって、そのまま食べられたよね〟
〝食べられるよ。アイスのトッピングにちょうどいい〟
〝蜂蜜漬けも売られてるね〟
〝蜂蜜漬けは酒のアテにもなる〟
〝カリッと香ばしい感じ〟
…そんまま食べる分残そうかと思ったけど、ええか。初志貫徹。チョコ作ろ。
「ココアバターだけ分離は無理かー」
〝すり鉢でごりごりするだけじゃ無理か〟
〝石臼的なやつでならワンチャン?〟
「あったかも?圧搾せんと取れんのやろな、やっぱ」
〝現状カカオ分100%だけど、こっからどうする?〟
「ミルクチョコレートは40パーでやろうかと。トリュフは60パーかな」
〝浅煎りミルクチョコと浅煎りトリュフ、深煎りミルクチョコと深煎りトリュフか〟
〝量は単純に半分にする?〟
「うん。そこは深く考えん。トリュフ何個がどれだけのカカオマスで作れるかわからんし」
〝たしかに〟
〝それもそうだ〟
〝思うんだけどさ、魔法の使い方それでいいの…?〟
〝量が量だからフードプロセッサーでもいけそうだったけど〟
〝硬さが怖くない?フードプロセッサーだと〟
「すり鉢すりこぎ使ったんは気分!」
〝そっかー〟
〝気分じゃあしょうがないな〟
まあ、言われとる通りフードプロセッサーがカカオニブの硬さに耐えられるかわからんかったけえ使わんかったんやけど。
いい加減新しいの買わんとなぁ…刃がもうガッタガタやけんなぁ…
「ほい、半分」
〝すり鉢でも滑らかな見た目になるんだなぁ〟
〝魔法でごりっごりしてたかんね…〟
〝機械使わなきゃ苦行なんだよ、本来は〟
〝すり鉢だからねぇ…〟
「さらにすり鉢追加」
〝粉末ミルクと砂糖入れてゴリゴリしないとね〟
〝で、そのミルクは?〟
「豆煎りよるときに殺菌しといた」
〝だから倉庫で作業をする必要があったんですね〟
〝必要あったかなぁ?〟
〝無駄がなくていいじゃないか〟
〝倉庫内に狭いながらも作業場みたいなのあるからね。仕方ないね〟
ぶっちゃけカメラ切って地下まで降りるんがもにょっただけやねん…まあ効率考えたらこれでよかったんやけど。
「えーと、このカカオマスの量が………50グラムくらいか」
〝測定魔法か〟
〝難しいんだよね、あれ〟
〝距離はともかく重さはねぇ…〟
「うちもあんま得意やないけどなぁ。精度が高こぉないねん」
〝今回はお試しだし、ざっくりでいいんじゃないかな〟
〝細かい詰めはガチでやる時でいいと思う〟
「せやな。んで、50グラムくらいやけえ、カカオ40パーにするならミルクと砂糖が合わせて70?」
〝砂糖多めか少なめか〟
〝同じ比率にするなら、浅煎りか深煎りかどっちかに合わせるのがいいんじゃないかな〟
〝深煎りに合わせたら浅煎りのほう甘くなりそうだなぁ〟
〝カカオマスの比率さえ合わせておけばいいんじゃないかな?〟
「お試しやしなぁ。ミルクと砂糖の比率も合わせるんはありやと思う」
っちゅーか、ミルクと砂糖の比率同じにしたほうが違いがわかりやすいか?
〝まず豆の特徴がわかんないからね〟
〝なにが最適解かわかんないからなぁ〟
〝それもそうか〟
「えーっと、ミルクチョコレートの定義は…乳固形分14パー以上?」
〝ミルク35、砂糖35でも十分超えてるね〟
〝ミルク35mlだと、約30%か〟
〝多くね?〟
〝減らして良さそう〟
「30パーは多く感じてまうなぁ…20でええか。それならだいたい20パーやろ」
〝だね〟
〝んで砂糖50gか〟
〝それはそれで多い…〟
〝砂糖40%か…〟
〝甘そう〟
「甘ったるくなったときゃあ、そんときゃそんとき!」
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