25. カカオ豆からチョコレート作る…前に乳搾り
「連続自宅配信ー」
〝わこつ〟
〝わこつー〟
〝わこつ。2日続けて自宅配信とは珍しい〟
〝おつー。あっ(察し)〟
〝わこつ。何を察した〟
〝わこわこー。乳搾り?でも配信タイトルがチョコ作りってなってるけど…〟
〝あっはい〟
〝察した〟
「そう、ミルクチョコレートとトリュフ作るんに、乳搾りからするねん」
〝ですよねー〟
〝知 っ て た〟
〝チョコ作るのに乳搾り…?〟
東部で買ってもええんやけどな。
〝カカオポッドの収穫もするの?〟
「うん。昨日のは軍に持ってかなやったし」
〝コーヒーの木に変化は?〟
「昨日見つけたやつにはなかったなぁ。今朝カカオの木は増えた」
〝どういうことなの…〟
「なんか知らんけど、あるなら有効活用や!っちゅーことでチョコ作る」
〝そういえばトレントいないの?そこ〟
「おらんなぁ。岩石カウとマーダーグースくらい。ちなみにマーダーグースは金太郎が間引きしよる」
〝あれ、金太郎ってマーダーグースの肉食わなかったよね?〟
「好みやないってだけで食えへんわけやないんやて。まあ、あとで別の食い
〝労い大事〟
「せやな」
めっっっっちゃ嫌そうな顔して食ってくれとるけんな…生で。また突撃ブルかピットフォールラットを狩ってこんとなぁ。またおはころ牛肉ダンジョン行こー。
「んもぉおおお」
「おー、整列終わったか。んじゃ乳搾りするでー」
「もぉ」
「もぉお」
「もーぉ」
〝ちなみに通常種の岩石カウが何言ってるかわかる?〟
「ボス、通訳」
「もぉぉ…もぉおお、もーぉおお」
「胸が張って苦しいとか、野菜楽しみとか、後ろのほうになっちゃったとか言いよるらしい」
〝順番だからね。仕方ないね〟
〝そういえば岩石カウって、子ども産んだでもないのに乳搾りできるよね〟
〝常時、普通の牛の産後の状態と同じらしいよ〟
〝モンスターも謎の塊だよな。生殖機能はあるのに生殖活動はしない、子どもも謎の穴からぽんと出る〟
〝だから狩るのに躊躇せずに済んでる気がする〟
〝わかる。ゲームっぽくて、現実なのに現実感があんまりない〟
人差し指とー親指で輪っかぁ作ってー、中指ー薬指ー小指の順にー握ってってー、っと。
うんうん出よる出よる。たまにマッサージしたらなあかん子おるけんな。子が黒い穴から出てくれとりゃあええんやけど、そうやないとどうしてもなぁ…
〝じゃごー、じゃごー、って〟
〝思ったより勢いよく出るよな〟
〝岩石カウミルクで作ったチーズ、おいしいよね〟
〝わかる。烏さん、チーズ売らないよな…〟
〝ジャーキーみたいにジャンケン大会しようぜ〟
〝生クリームがっつり食べたい〟
〝パンケーキの上に山盛り生クリーム、いいね〟
〝ホイップクリームの甘ったるさを思い出して胃が痛くなってきた〟
〝生クリームとホイップクリームを一緒にしないでほしい生クリームファン〟
〝物によって確かに甘さがくどかったりするから嫌いな人いるのもわかるの。だからって生クリームとホイップクリームを一緒にされるのは誠に遺憾である。別物だからね?あれ〟
〝すみませんでした〟
〝謝れて偉い〟
〝双子のぷりぷりがかわいい〟
〝そこの受付嬢仕事して〟
〝はい〟
〝ギルド職員、仕事中に配信見てていいの?〟
〝ダメですね〟
〝ですよねー〟
はいはい、落ち着いて順番待ってなー。終わったらご飯たっぷりやるけんなー。
「はー、さすがに100頭分は多かった…」
〝ゴーレムの手伝いがあってよかったね…〟
「それな。搾乳バケツの運搬してもろうただけでも助かったわ…」
〝加熱処理も大変だぁ〟
〝超高温での殺菌処理だっけ?加熱時間短いけど、量が量だからねぇ〟
〝魔法でできるとはいえ、小分けにしてるしなぁ〟
〝あの量まとめてやったら殺菌漏れが出るかもだしな。安全性は大事よ〟
あー、腰痛ぁ…月1でやりよるけど、いまだにどっかしら痛くなるわ…機械使うんも考えたけど、合う合わんあるみたいやしなぁ、あれ。やめといたほうが無難よなぁ。
う、あかん。下手に腰回したら脇腹つりそう。
〝ところでカカオ豆って発酵しなきゃじゃなかったっけ?〟
「せやで」
〝魔法でどうにかなるもん?〟
〝発酵方法わかってれば魔法でどうにでもできるんじゃない?〟
〝イメージできればいけそう〟
「とりあえず収穫からやな。また増えとらんかったらええけど…」
〝扱いに困るねぇ〟
〝実だけ収穫って言ってもねぇ〟
〝企業にお任せ、って言っても、さすがに企業も実からどう処理すりゃいいんだってなりそう〟
〝ノウハウはあるとはいえ、企業でやるとコスト跳ね上がりそう〟
〝そんでできたチョコの値段が上がるんだ…〟
〝高級チョコならいい。そうじゃなかったら嫌だ〟
〝高いだけで普通のチョコとか誰得だよ…〟
「とりあえず家のダンジョンで採れた物は基本うちのやけん、持て余したら軍に流すわ」
〝ダンジョンの植生変化で採れた作物は研究のしがいがありそうね〟
〝コーヒーの花でも争奪戦あったらしいぜ?竜胆が珍しくキレてた〟
〝竜胆がキレるほど騒がしかったのか〟
〝いや、なんか争奪戦に巻き込まれたらしい〟
「3徹しとったんやろ。あいつ、ろくに寝てへんと沸点低くなるし」
〝あー、それが一番でかいかも〟
〝寝ろと言いたい〟
「それな」
実験結果が気になって寝れんとか、遠足楽しみにしすぎて寝れんちびっ子かっちゅーねん。
っし。ストレッチと魔法でどうにかマシんなったし、カカオの実収穫に行こかー。
「大丈夫、増えてへんかった!」
〝木は増えてはないけど、昨日実を採ったからって印にリボン巻いた木に、また実がなってんだよなぁ〟
〝こわっ〟
〝ねえ、それ食べて大丈夫なやつ?〟
…気にせんようにしとったんに。
〝中割って見た?〟
「昨日見た。果肉に魔素たっぷりなだけで、見た目はふっつーのカカオの実やった」
〝…大丈夫?魔素抜きしたほうがよくない?〟
〝魔素抜きしたほうがいいんじゃないかなぁ〟
「…やっぱしたほうがええ?」
〝うん〟
〝魔素たっぷりってなら、食べたら魔素酔いしそう。少ないなら大丈夫だけど…〟
〝加工の最中に飛んでかないかな?〟
〝発酵の時に豆の魔素使えばいいんでねーの?〟
「採用。それなら豆に含まれとる魔素減らせるわ」
〝やったぜ〟
言われてみれば。発酵作業を魔法ででっち上げるんやったら、豆に含まれとるやばい量の魔素を使ってまえばええんやな。
いやもう、昨日割って見てビビったわ。割る前はそうでもなかったんに、割ったら豆からやばい量の魔素感知してもうてん。見た目は写真で見た白いのに包まれたカカオ豆やんに、なんかこう、魔力でちろっと触れた途端にあかん感じしたわ。素手で触るときも気ぃつけんとやろな、あれ。
「とりあえず採取採取ー。10個くらーい」
〝話聞くと、もう、カカオの実の姿をしたモンスターって言われても信じそう〟
〝果実系のモンスターっていたっけ?〟
〝いることにはいる。けど、確認数は少ないなぁ〟
〝てんてん魚介ダンジョンにヤシの実がモンスター化したやつ出なかったっけ〟
〝あー、ドランクココナッツ〟
〝何それ〟
「そんなんおったなぁ…10階より下まで降りんと出らんやつ。酒飲みヤシの実」
見た目が、あんた絶対ゲームにおるやろって感じのやつなんよな。ヤシの実に目が2つと口1つついたやつ。口がまたでかいんや、これが。ギザギザの歯がぎょーさん生えとって、同種をガブリと噛んで離さんまんまに中身ちゅーちゅー吸いよる。ケツに噛みつきよるけえ、見た目がまあよろしゅうないけど、狩るなら絶好のタイミングなんよな。
〝え、何。ヤシの実が酒飲むの?〟
〝飲む〟
〝共食いならぬ共飲み?あいつらの中身ってココナッツウォーターじゃなくてココナッツリキュールなんだよ〟
〝だから仲間同士争ってる。関わりに行かなきゃ無害〟
〝ただ中身のリキュールが美味いから、よくギルドの食堂とか酒屋から依頼出されてる〟
〝コーラと割ったやつが好き〟
〝パインジュースと割ったやつもいいぞ〟
〝パインジュースと牛乳入れたやつもおいしいよ〟
〝パインが合うならオレンジも合う!〟
〝やべえ酒飲み多い〟
〝南部のハワイアン居酒屋に置いてあるから、飲みたくなったら行ってる〟
あー…あそこの店主、元々ゴデアに居着いとったんやったっけ…魚料理が美味いんよなぁ…
※ドランクココナッツ(英語圏ではDrunk Coconut):中身がココナッツリキュールな、動くヤシの実。ドランクココナッツ同士で中身を求めて争っており、関わらなければ無害。独特な香りがする、甘いながらも強いココナッツリキュールは、甘口のお酒が好きな探索者に大人気。そのため、よく酒屋や居酒屋から依頼が出る。討伐推奨ランクはAと高いが、それはドランクココナッツがいる場所に辿り着くまでの難易度と、1体倒すと50体以上との集団戦を強いられるのが要因。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます