23. 自作ラーメン実食!

 


 「んー…鶏白湯ラーメンやぁ…」

 〝使ってるの鶏ガラじゃないけどな〟

 〝でも味は鶏白湯風なら鶏白湯ラーメンでいいんじゃないかな〟

 〝鶏白湯風ラーメン〟

 〝カエシが醤油だから、色がちょっと茶色がかるのな〟

 〝豚骨醤油みたいな見た目〟

 〝色を気にするなら塩のかえしのほうがいいのか〟

 〝それよりチャーシューがやばい〟

 〝わかる。チャーシューがうまそう〟

 〝暗黒プテラノドンのチャーシューか…桜色の肉とベージュ色のスープ…いいな〟

 〝小葱、味玉と合わさると見栄えが変わるねぇ〟

 〝半熟具合がいいね〟

 〝黄身のとろぉっと具合がやばい〟

 「いっただっきまーす!」

 〝うわぁ…スープがやべえ…〟

 〝鶏油と鶏白湯風スープが合わないわけがない〟


 あっ。あかん。合う。やばい。語彙力消える。美味い。


 〝スープ一口でとけたよ〟

 〝うあー、いいなー〟


 こってりしとるけどしつこくない、ポイズンラプターガラの優しい味わいが、鶏油の香ばしさと一緒に濃いめの醤油だれと合わさると、まろやかで深みのあるスープになる。

 そのスープを口に含んだだけで、鶏油の風味を追いかけるように、かつおと昆布、ほたての貝柱の出汁の香りが鼻に抜ける。

 そこにどこか甘みのあるつるっとした卵入り手もみ麺が加わると、途端にスープのパンチが効きだす。

 小ねぎも加わると口ん中さっぱりして、いくらでも入ってまうような気がする。

 チャーシューもあかん。しっとり柔らかな食感。チャーシューのたれのほのかな塩っけが合わさって、肉の旨味と甘味をより感じる。

 これにスープが合わさるともう、あかん。不思議と味が喧嘩せん。むしろスープがチャーシューの味わいを高めとるし、チャーシューもスープの味わいを高めとる。

 あかん、ほんまいくらでも食えそうに思えてまう。味玉でいったん落ち着…けん!あかん、溶ける。黄身やばい。甘い。スープと混ざるともうダメや。溶ける。




 〝これはもはや放送事故では?〟

 〝草〟

 〝いいなー、ラーメン食いたいなー〟

 〝ラーメン屋ニキ、オープンはよ〟

 〝だからどこに店出すかもまだ決まってねえっての!〟

 〝ダメだ。インスタントラーメンじゃ満足できねえ〟

 〝同じく。どうしてくれる〟

 〝この近くにラーメン屋ある惑星あったっけ?〟

 〝ない。近いのは商業コロニー〟

 〝探索者には敷居が高いとこぉ…〟

 〝あそこの商業コロニー、小洒落てて行きづらい…〟

 〝こじゃれてるのにラーメン屋あるのか〟

 〝おしゃんてぃなラーメン扱ってるとこ〟

 〝あー、フレンチラーメンとかイタリアンラーメンとかそこらへんか〟

 〝俺が食いたいのはそういうラーメンじゃないんだ…がっつりこってりしたジャパニーズラーメンが食いたいんだ…〟

 〝やべえ、もうスープ飲み干しにかかってる〟

 〝食うの早えよ!?〟

 〝軍人はたいてい早食い〟

 〝言われてみれば〟

 〝あの環境は自然と早食いになるぜ…〟


 あかん。味わっとったつもりやのにもう食ってもうた。

 いやでも、こんだけ美味かったらこうもなるって。


 「ごちそうさまでしたぁ」

 〝完食まで10分ちょいくらい?〟

 〝いいなー〟

 〝ポイズンラプターガラ試してぇけど、元探索者になった時点で取引規制対象素材使えねえんだよなぁ〟

 「素材の持ち主がその場におったらセーフちゃう?」

 〝あー、アラスタだとそこらへんのルールあった気がする。確認してみるねー〟

 〝弱毒化試した。熱処理は焼けばセーフ、茹でるのアウト〟

 〝毒腺焼いて煙は大丈夫なの?〟

 〝それが煙に有毒成分はなかったんだよねぇ…毒腺茹でてもダメだったのは謎〟

 〝火の通し方で有毒成分が分解されるかどうか変わるようだね。また、温度でも分解速度が変わるけど〟

 〝杜若様ぁ?!〟

 〝出た。マッドサイエンティスト〟

 「おん?あんたが配信見るとか珍しいやん」


 そんなん見とくより研究したい!実験したい!ってタイプやん、あんた。


 〝心から、君がポイズンラプターの素材を使って何かしようとしてるって聞いてね。面白そうだから見てたんだ。あと素材取引の話をしたくてね。できればパラライズラプターの毒腺がほしいんだが…〟

 「それはもう、ポイズンラプターの毒腺と合わせて、ギルド挟んで軍に卸したで」

 〝軍関係の探索者なら軍に規制品が納品できるのな〟

 〝納品というか、取れたら持ってきてって感じで言われてる〟

 〝ゆるいな〟

 〝ふむ。こちらに回ってくるかどうか…まあいい。ポイズンラプターの毒腺の扱いは、解体屋の資格にも関わってくるだろうから、ポイズンラプター素材の納品依頼の認可に関してはしばらく時間がかかると思うよ〟

 〝あー、解体屋の資格もその手のやつに関係あったっけ…〟

 〝肉は食用として探索者に好まれていたけどね。それ以外はまだ研究が大して進んでいなくて、ポイズンラプター以外にもまだ規制緩和が難しいモンスターも多いんだ〟

 〝アラスタではまず肉が食えるかどうかから始まる〟

 〝それ以外の研究は僕らの仕事だけどね…やることが多すぎて回ってないんだよねぇ〟

 〝おぅふ〟


 軍の研究者はなー、増やすん難しいんよなー。試験が特に難しゅうて、年1開催で合格者0人が5年続いたこともあるくらいや。そうでなくても1人受かりゃあええほうやし。やけえって難易度下げるわけにもいかんしでなかなか増えん。

 探索者個人が素材の研究するんは自由やけど、うち含めてアラスタの探索者は食うこと優先やけえなぁ…


 〝ぶっちゃけ毒持ちモンスターは弱毒系以外は軒並み規制入るってのもあって、個人でいろいろやってみようとは思えない〟

 〝それな〟

 〝食えるか食えないか、それが大事だ〟

 〝毒腺、毒袋はダンジョン内の土に埋めて放置だなぁ〟

 「軍にできるだけ持ってくくらいやわ。アレの盗難防止処理めんどいねんな…」

 〝それな〟

 〝あ、やっぱちゃんとそこら対応して毒腺卸したのか〟

 「ついでにお嬢依頼の雪花始祖鳥の羽根も卸したで」

 〝マーダーグースの強化種とかは規制入ってないからいいけど、ピクシードレイクとかファンシーワイアームとかがなぁ〟

 〝あいつらは何かあった時が怖いからなぁ〟

 〝軍には納品できるけど、一般には肉含めて納品できないよな〟

 〝そもそも依頼が出せない〟

 〝個人的にはピクシードレイクやファンシーワイアームの素材がほしいんだけどね…軍が指名依頼を出しても、なかなか納品してくれる人がいないね〟

 「出てくるとこが出てくるとこやけんなぁ」

 〝イレギュラー以外なら烏さんか剣聖しか納品してないんじゃない?〟

 〝たぶん〟


 まあそうなるやろな。あいつら、100階以上あるドラゴン系ダンジョン、かつ100階前後の階層にしか出らんし。ピクシードレイクはイレギュラーで出ることあるけど、まあ稀やな。


 〝確認できたー。素材獲得者が監督してれば、取引規制対象素材扱えるって〟

 〝お?マジか〟

 「やったらマック、うち来たらええやん。ポイズンラプター以外も試すし、ついでに手伝ってほしいわ」

 〝ポイズン以外だとパラライズと、なんだ?〟

 「スパークレックス」

 〝なるほど。試し甲斐はあるな〟

 「あと、トッピングに風切りコウモリの翼揚げとか合いそうやと思うんよなぁ。見た目も海苔っぽくて悪くなさそうやし」

 〝エビフライ載ってるラーメンあるくらいだし、合うかも?〟

 〝エビフライのってるラーメンあるのか〟

 〝なにそれそんなんあんの?〟


 あったなぁ、エビフライラーメン。エビ味噌溶かした鶏白湯スープのやつ。あれもあれで美味かったなぁ…衣さっくさくのうちに食うもよし、スープ吸った衣とエビを味わうもよし。

 また食いたいけど、むかーし昔のラーメンフェスタで食ったっきりなんよな。第三次太陽系防衛戦争のせいで店潰れてもうてから、あの手のラーメンあんま見んことなった気ぃする。

 まあ、ないならないで作りゃあええねんな。






※ギルドの取引規制対象について:モンスターの死体自体に取引規制がかかっている場合と、特定の素材のみに取引規制がかかっている場合がある。ピンキーワイバーン、ピクシードレイク、ファンシーワイアーム、ポイズンラプターは前者。ただ、どちらにしてもモンスターの素材すべてにギルドと軍の検分が入る。なお、アラスタのようにローカルルールとして、取引規制対象のモンスターの素材は、獲得者による監督下であれば取り扱いが可能となる場合がある。各ギルドの規則にローカルルールも記載があるため確認推奨だが、たいてい読み飛ばされる。

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