17. 当たるも八卦、当たらぬも八卦

 


 「あー…1階はハズレやな」

 〝砂漠かぁ〟

 〝おみくじでポイズンラプターが出るとこって、ジャングルか雪原だっけ?〟

 〝そうそう。まあエリアがそうだからって、出るとは限らないけど〟

 〝ワンフロアにつき1種類だったか〟

 〝なんでこんなダンジョンあるんだろな?他の惑星にもあるじゃん?〟

 〝どっかに3つくらいおみくじダンジョンあったよね〟

 〝あー、あったあった。サリアだっけ、アリアだっけ〟

 「あそこらへんの惑星、似た名前多すぎん?」

 〝それ〟

 〝衛星もややこしい〟

 〝それな〟

 〝発見者や調査団リーダーの名前付けてんだっけ〟

 〝たしかそのはず〟


 ここもそうやな。たしか調査団リーダーの名前から取っとる。

 お、あー、サンドキャットぉ…無害なやつぅ…ハズレもハズレやぁああ…


 〝あっあっあっ〟

 〝ぬこぉおおおお!〟

 〝かわいい〟

 〝マジかよ今日そこの1階スナイロネコかよ行くわ〟

 〝おい待て討伐依頼受理しちまってんだろうがよ?!〟

 〝もうダンジョン向かってんだるぉお!?〟

 〝やだぁぁああああ!!俺は楽園に行くんだぁぁああああ!!〟

 〝向かってる私勝ち組〟

 〝今日休みでよかったぁ〟

 〝休みにしたんだよ!〟

 〝猫好きが荒ぶるなぁ〟

 〝この惑星、ネコ系めちゃくちゃ少ないからね。仕方ないね〟

 〝サンドキャットは無害でかわいい〟

 〝毛まみれ砂まみれ?ご褒美ですね〟

 〝色が同化してるから、踏まないように気をつけないと…〟


 はい。階段探して降りような。

 ネコ?かまってちゃん以外はスルーやスルー。






 「はい。2階。竹林。たぶんサル系」

 〝テンションダダ下がりで草〟

 〝竹林はアレなモンス多いからなぁ〟

 〝高確率でサル系だよな〟

 〝キラーエイプならマシ。ベースボールモンキーは○○〟

 〝野球猿はたまにジャッジやらされる〟

 〝アレもアレで時間泥棒〟

 〝竹林なら野球はなさそうじゃね?〟

 〝ごくたまにあるよ〟

 〝んでマト当てされる。もちろんマトはオレら〟

 〝なるほど、それは○○だ〟

 〝遠距離攻撃きらーい〟

 〝わかる〟

 〝打ち返しゃええんじゃ〟

 〝なるほど〟


 落ちとる毛の色からしてビーストエイプっぽいなぁ。赤紫から青紫にグラデかかっとるし。キラーエイプの変異種やったら真っ赤っかやもん。


 「ビーストエイプっぽいけえこれも無視」

 〝縄張り入んなきゃ無害か〟

 〝縄張り争いってどうだっけ?〟

 〝たまに巻き込まれる〟

 〝2体同時でめんどくさい〟


 はいはい次次ー。






 「お、ジャングルやしワンチャン?」

 〝でもそこの木の傷からして別物な気がする〟

 〝あ、Tレックス系じゃね、あれ〟

 「あっはい」

 〝ハズレかぁ〟

 「柄からしてスパークレックスやな。あれはあれで悪くなさそうやし、確保しとこ」

 〝肉はうまいし、ガラ使えたらいいな〟

 〝地鶏っぽいんだっけ、味〟

 〝そうそう。炭火焼きにするとビールによく合う〟

 〝ただ焼くだけだとちょっと淡白すぎる感じ〟

 〝漬け焼きいいよ漬け焼き〟


 この木についたちと焦げ臭い爪痕からしても、ほぼ確実にスパークレックスやな。爪と爪擦り合わせて火花散らしよるやつ。サイズがサイズやし、見た目が見た目やからTレックスとかTレックス系って呼ばれとる。

 Tレックス系は毒持ち以外やったらだいたいどこの肉も食えるんはええよなぁ。モツはまあ、無理やけど…

 あ、尻尾からええスープ作れんやろか?テールスープテールスープ。試してみる価値ありそうや。

 …いや、りくが別のTレックス系尻尾で試しとった記憶あるな?たしか組み合わせ次第で、とかなんとか…独特のクセがあるとかなんとか…まあええわ。うちはうちで試す!


 「お命頂戴!」

 「ギャァァアアア?!!」

 〝なむなむ〟

 〝アーメン〟

 〝首狩り族かな?〟

 〝刀持ってるし辻斬りじゃね?知らんけど〟

 〝上手いこと避けられて前脚なくなっただけになったな〟

 〝そういやあの肉切り包丁とかその刀、アイスワームには効かんの?〟

 「斬撃耐性あるし、重さ足らんしで無理やった。昔試した。ほーいっと」

 「ガ、ァ…」

 〝すぱーん〟

 〝噛みつきラッシュ避けて振り向きざまのスパーン〟

 〝切れ味よくてもあの硬さはどうにもなんねーか〟

 〝あいつらの鱗、傷入ってもすぐ治るしな〟

 〝ドラゴン系は硬い。特にワーム系〟


 ちーちゃんいってらー。

 あ、斬った左前脚回収せな。ぽーんと飛んでってもうたし。






 「4階…あっつ?!火山とかハズレもええとこやん!」


 火山に出てくるやつで食えるやつとかめっちゃ限られとるやんけ!火龍とか溶岩カメレオンとかラーヴァエスカルゴとか!心当たりあるやつ片手で数えきれてまうわ!


 〝魔法の展開が早い〟

 〝結界じゃなくて…いや、結界か。体の周りになんか張り巡らされてる〟

 〝なるほど、そういう使い方もあるのか〟

 〝思えば自分の周りの空気を冷やすのも、ある種の結界じゃない?〟

 〝言われてみれば〟

 〝あっ、赤い鳥が飛んでーら〟

 〝出た害鳥〟

 〝紅蓮始祖鳥かぁ〟

 〝中央の納品依頼でそいつの羽根あるね〟

 「ほんま?なら毟ってこか」

 〝どう相手すんの?〟

 「え?魔法でハエ叩き。サイコキネシス的なやつ」

 〝まあ、近寄りたくはないよね〟

 〝ゲーム的に言うと紙防御だしなぁ。それ安定よな、やっぱ〟

 〝不可視の力場ってのに疑問持っちゃうと使えなくなるやつじゃん…〟

 〝魔法は物理法則とか元素とかを理解して使うパターンと、純粋な想像力で使うパターンあるよね〟

 〝先輩は器用に使い分けてるよな。肉体強化がそうだし〟

 「筋繊維一本一本の強化、関節の保護やらなんやらってやるときもありゃあ、単純に出力何倍ってやるときもあるなぁ」

 〝出力何倍…5kgの荷物を抱える要領で50kgの物抱えるようなイメージ?〟

 「近いかな?自分が重たいもんをどうやって持つか、振り回しよるかってイメージするだけでも、意外と肉体強化魔法として成立するもんやで。まあ、魔力抵抗がそんなないってのが条件やけど…あ、来た」

 〝15か〟

 〝固まってるとやりやすいよね〟

 〝たまに散開してやって来る〟

 〝そんで囲ってれんごくかえんでしょ。知ってる〟

 〝燃やされたからな〟

 〝炭化するだけマシ〟

 〝ひえっ〟


 色は普通の赤い炎やのにな。火力がちゃうねんな。魔法やったらありえん現象ではないけど…


 「透明な板を紅蓮始祖鳥の上に出します。叩きつけます。終わり」

 〝はい〟

 〝せやな〟

 〝見えねえよ〟

 〝見えない板だから見えるわけないだろ!〟

 〝見えたらこええわ〟


 それな。


 〝あの速度で地面に叩きつけられたらそりゃチーンだよね〟

 〝なるほどハエ叩き〟

 〝おおう、首が変なとこ曲がってる…〟

 〝頭潰れてるやつもいんじゃん〟

 〝あっつあつなのにちーちゃん平気なのな〟

 「温度感じんけえな。まあそれでも、温度次第やと蒸発?乾燥?してまうってんで、ちーちゃんを魔法で冷やしとる」

 〝なるほど〟


 昔バーベキューしよるときに火ぃ近寄って蒸発?して体積減ってもうたんよな。血ぃ飲ませたら戻ったけど。あれは焦ったわ…






※サンドキャット(英語圏ではDesert Cat):スナイロネコとも呼ばれる、砂漠エリア限定の砂色のネコ。柄はなし。タレ耳、かぎ尻尾、団子尻尾といろいろいる。砂と同化する魔法を使うモンスターだが、極めて無害な時間泥棒。砂の惑星のサンドキャットが出るダンジョン内に猫カフェをつくった猛者がいるほど、ファンが多い。

※ベースボールモンキー(英語圏ではBaseball Monkey):野球をする猿だからベースボールモンキー。腹と背の模様でチーム分けがされている。体格はみんな同じだが、投げるのが得意か、打つのが得意か、足が速いか、というのは個体によって違う。野球中に見つかるとジャッジをさせられる。ミスしたらキーキー怒られるが、ミスしなければ、試合が終わった後に胴上げされるだけ。野球をしていないときに見つかると、個体によっては魔法でできたボールを投げられる。モンスターは誰かの想像した生き物だ、という説を強く推す人たちが出ることになったモンスター。討伐推奨ランクはB。

※スパークレックス(英語圏ではSpark Tyrannosaurus):別名、虎柄Tレックス。前脚の爪を擦り合わせて火花を起こし、森を焼く。そうして焼けた獲物を探して歩く姿を確認されている。興奮状態だと縞模様がくっきりとし、筋肉が盛り上がる。そうなるとなかなか斬れないほど頑丈になる。内臓と目、脳以外が可食部位で、意外と煮込みにも合う。討伐推奨ランクはA。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る