c. 二つ名
※全部会話文。
本編から5年ほど前の話。
「先輩の二つ名って難しいんだよなぁ」
「なんやねん、急に」
「いやー、こないだ姐さんと仕事したんだよ」
「…あー、テンペスト」
「コードネームまんまだよなぁ、あの人。んでさ、あの人"台風の目"って言われてんの知ってる?」
「言い出したんお嬢やからな。知っとるで」
「あ、そうなんだ。でさ、俺もなんか"影撃ち弾丸"とか"スニークバレット"とか一部で呼ばれててさ。ちょいちょい他にも二つ名的なの付けられてるっぽいのよ」
「あんたは付けるん自重したんにな」
「それな。いや、まあ、それはいいんだよ。他の人もどうなのかなーって調べたら、先輩の二つ名的なのなかったんだよ」
「…おっちゃんは剣聖の通り名がしっくり来すぎて、コードネーム忘れられとるなぁ」
「ねえ、目を逸らさないで?」
「いや、うん。なんか"ギルドのおかん"とか"大地主"とか呼ばれとるなぁって…」
「草」
「おかんはわからんでもないんよ。たまに食堂に手伝いで入るし」
「マジかよ中央うらやま」
「大地主って言われたら、まあ
「探索終わった?」
「階段見つかってへんけえ、もしかしたらワンフロアなんちゃうかなって。クソ広すぎて見つかってないだけかもしれんけど」
「ワンフロアって確認されてるだけでも片手で足りる数しかないんだっけ」
「でも、"酒神"はなんでなんかわからん」
「なんで?」
「うちが聞きたい。そんなしょっちゅうギルドに酒卸しとるわけでもないんに…」
「ジャーキーじゃね?」
「あー、つまみか」
「ミノジャーキーとカウジャーキーのせいだと思う」
「つまみのつもりで出しとるわけちゃうんやけどなぁ」
「携帯食料のつもりだったんだっけ」
「うん。それが酒飲み共がこぞって手に入れたがってなぁ…」
「しょーがない。あれは酒が飲みたくなるやつよ」
「塩っけ控えても食いたがるやん、あいつら」
「合うからね。特にビール」
「解せん」
「他は?」
「酔った連中にかーちゃんとかお袋って呼ばれる」
「草」
「悪酔いしたやつとか急性アル中になったやつを魔法使って治療しよるときにやで?」
「んん?」
「謎やろ」
「謎」
「んで、他にもなんか変な呼び名付いとるやつはおるん?」
「竜胆が"爆弾魔"とか"マッドメカニック"とか呼ばれてる」
「あいつそんな爆弾使ってへんやろ?」
「だよなあ?たぶん失敗作が爆発しまくったときに付いたんじゃねーかな」
「あー、一時期やらかしよったな。スランプやったみたいで」
「あれでダンジョン1個潰れるとは思わなかった」
「潰してええやつやったけんええけど、そうやなかったら大顰蹙やったやろなぁ」
「さすがに人気もひとけもないとこ選んでたみたいでセーフだった感」
「マッドはそらそうよって感じ」
「今日も籠ってんでしょ?」
「おこもりやなぁ。魔石の魔素濃度をどうにか上げられんか試しよる」
「あー、結界発生装置に使うやつ」
「みたいやで」
「それにしても、結界発生装置とかなんで今まで研究頓挫してたんだ?優先されててもおかしくないのに」
「ヒント、パルスシールド」
「あー…」
「物理でどうにかなるならそれでええやんって思考停止からやなぁ…」
「魔力を受け入れられない連中からしちゃ、どうでもいいのか…」
「あの脳みそ連中なぁ…いるけえって残しとるけど、老害ムーブかますんが鬱陶しいんよなぁ…」
「27世紀からよく残ってんなって感心してる」
「………今別のクローンから連絡来た。心が"白い悪魔"とか、"イノセントマーダー"とか呼ばれよるらしい」
「あっ…あー…あー…はい。察した」
「殺したままにしてへんのにマーダーはどうなんやろ」
「死んでも生き返らせてるしなぁ…蘇生魔法的なの使える人って心さんだけ?」
「他にもおるけど、あんまおらんなぁ。うちは損傷少なくて、死んですぐのやったらできるけど、心はトマトになったやつでも蘇生してまうし、使えるやつでもピンキリやねん」
「へー。まあクローンあるし、蘇生魔法の需要は微妙ってのもあるか」
「それはある」
「他は?なんか連絡来てねえ?」
「…………んー、ん?」
「交信中か」
「……なんか、別のクローンが"ロリママ"とか呼ばれとる」
「ぶふっ」
「失礼なやっちゃなぁ。誰がロリや、誰が」
「ま、まあでかいのに囲まれてりゃロリに見えなくもないし?」
「胸か?胸潰しとるんがあかんのか?サラシ取りゃあええんか?」
「先輩…ロリ巨乳って知ってます?」
「……ちっ、どう足掻いてもロリから抜けられる要素が見当たらへん…なんでや。細マッチョ体型やのになんでロリ扱いなんや…」
「アンドロイド機体は?」
「使っとるやつはロリママとか呼ばれてへんで、"戦神"とか呼ばれとるみたい」
「かっけーじゃん」
「まあ基本先陣切っとるし、作戦指揮取ったりもするし、わからんでもないけど…」
「一番の理由は第三次のときの、敵の戦艦一斉爆破じゃねえかなぁ」
「あー…あー、あったなぁそんなん」
「杜若さん謹製の爆弾、やべえ威力してたって記憶のがでかいけど、あれ仕掛けて回ったの先輩じゃん?」
「そうやったなぁ。……爆弾魔は杜若のが合っとるんちゃう?」
「言われてみれば。あの人、薬毒の印象強いけど、爆弾も結構作ってるんだったわ」
「毒による環境被害の証拠隠滅のためにな…被害最小限にしとるけえ、マザーズも叱るに叱れんのやて」
「デブリの件にも貢献してっしなぁ…」
「そういや魔法で爆発ー、とかってないな?」
「危ねえじゃん?」
「せやな」
「聞いた話だと、30世紀頃には爆破魔法使ってたらしいけど、制御できなくて使い手死んだりしてたから自然と使わなくなったとかなんとか」
「あー…なるほど。それでか」
「当時は今より漠然とした感覚で魔法使ってただろうしなぁ。今ならまだどうにかなるんじゃね?」
「まあ周囲の被害考えたら…使わんほうがええやろ」
「それはそう」
※テンペスト:コードネーム
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます