13. 魔石ごろごろごーろごろ!

 


 おっちゃんが来るまで3体追加で狩ったけど、どれも脱皮してそんな経ってなかったんか、1、2発殴って終わった。

 残る1体はそうでもなかったんか、おっちゃんのツヴァイヘンダーの振り下ろしでヒビ入っただけやったわ。やっぱ切れ味だけやのうて重さもいるなぁ。

 そう、おっちゃん10分以内に着いたんよ。体あっつあつで水蒸気出しながら。それでも息切れしてへんのやから、ほんま体力おばけよなぁ。


 「いいねえいいねえ!アダマンタイトの剣でもヒビが入るだけたぁいい硬さだぁ!」

 「重さ足しゃあよかったかな」

 「おう!後付け頼むわ!」

 「きんくらい?」

 「金の延べ棒5本分くらいでよろしくぅ!っしゃあ!」

 「グゥ?!」

 〝わぁ、角折れたぁ〟

 「ボキンうたなぁ」

 〝角折れちゃったからもう潜れないねえ…〟

 〝烏さんが埋めたからな〟

 「やって穴ボコ邪魔やん?」

 〝それな〟

 〝ゲームだと自然と埋まるけど、リアルはねえ…〟

 〝戦場整理は大事。学んだ〟

 〝余裕があればね、やるけどね…〟

 〝場合によっちゃそれどころじゃなくなって、荒れた地形で自滅するんだ…〟

 「シャァ!」

 〝うお、今の噛みつきよく避けたな〟

 「どらっしゃあ!」

 「グァ?!」

 「おー、尻尾斬った」

 〝尻尾?胴体?〟

 〝蛇にも尻尾あるんだっけ〟

 〝排泄口から後ろが尻尾だったような?〟

 〝動き鈍ったな〟

 〝なんか銀色の流れてない?〟

 「あれ髄液」

 〝あいつの髄液水銀みたいなんだな〟

 〝みたいであって水銀ではないらしい〟

 〝銀色だけど金属は含まれてないんだよな〟

 〝ふっしぎー〟

 「頭かてえな!」

 「そら硬いやろなぁ。マタギがヘッショ狙わんくらいやし」

 〝心臓か首がいいんだっけ?〟

 〝弱ってるのに追い討ちをかけてるぅ〟

 〝もう鳴き声も上げられないねぇ…〟


 やっぱ硬いやつはめんどくさいなぁ、アイスワーム。うちが相手したん、脱皮したばっかでよかったわ。


 「っらあ!」

 「斬れたっちゅーか、折れたなぁ」

 「繋ぎ目硬えからな!さすがに斬り落としとはいかねえや!」


 鱗が硬けりゃ骨も硬いかぁ。

 ずしんと落ちたアイスワームん中に、またもやちーちゃんがするっと侵入。器用に髄液避けて入った。


 〝おつー〟

 〝おつかれー〟

 〝どうする?下降りる?〟

 「降りるかぁ。他にもおったらめんどくさいことなるし」

 「おう、半分は寄越せよ」

 「半分言わんとできれば全部で」

 「それはそれでめんどくせえ」

 「わかる」

 〝というかナイフパイセン寒くねえの?〟

 〝言われてみれば〟

 〝上タンクトップは寒そう〟

 〝でも水蒸気上がってんだよなぁ〟

 「走ってきたからな。あったまってるぜ!」

 「防寒具は?」

 「ポーチに入れっぱなしだったような…お、あったあった。寒くなったら着けるわ」

 〝魔道具式か。いいなぁ〟

 「たまに落としそうになるんだよなぁ、これ」

 「ベルトタイプやろ?調整したらいけん?」

 「あー…着けるとこ変えりゃあいけるか?」

 「首に巻くとか?」

 「あとでやってみっか」


 寒くても暑くても使えるやつやな、これ。平常体温維持装置のベルトタイプ。たぶんおっちゃん、これ巻かんとズボンに引っ掛けて使いよるんちゃうか?まあ長さ的におっちゃんのズボンには使えんし。巻くなら首んとこやろなぁ。

 平常体温やと使い勝手悪いなぁ、思うて軍に返したんやけど、似たようなの自分で作っとこうかなぁ。あったらなんかあったとき使えるかもしれん。






 降りたらやっぱおったわぁ、アイスワーム…1階より少ないけど。3体やし、全部おっちゃんに任そう。


 「よろ」

 「3か。1体ずつ相手するんならいいぜ」

 〝3本指立てて何かと思ったらアイスワームの数か〟

 「2体は?」

 「俺持ちでもいいぜ。さすがに3体同時はめんどくせえ」

 「そんときはうちが1体やるわ」

 「よろしくぅ」


 できれば1体ずつ来てほしいなぁ。

 と思っとったら1体に感知されたっぽい?こっち来よるわ。でもなんか、もう1体も来よるような?


 〝フラグ?〟

 〝脱皮してたらいいなぁ〟

 〝脱皮後から結構経ってたら硬くなるからなぁ〟

 「お、地響き」

 「1来よる。やけどもう1も来よるっぽいな、これ」

 「2体か。穴埋めは任せた!」

 「任されたー」

 〝2体同時か〟


 ん?挟み撃ちやなこれ。とりあえずぴょいっと。


 「当たんねえなぁ!」

 「グガァ?!」「ガフッ?!」

 「そら衝突するわなぁ」

 〝ごっつんこ!〟

 〝頭ぶつけたった〟

 「うらぁ!」

 「グァア!?」

 〝うわぁ、目に剣ぶっ刺さったぁ〟

 「脳まで行った、ぜえ!」

 「ガ、グ、ゥ…」

 〝刺して捻じって引っこ抜くとかえぐぅ…〟

 「ドラゴン系でも脳みそ傷つくとさすがに死ぬのは助かるよなぁ」

 「生物だから助かってるってのはある、な!」

 「グゥ?!」

 「ちっ」

 「潜って逃げるんは許さんでー」

 〝うわ、あれ避けられんの?〟

 〝今の斬り払い見えなかったんですが?〟

 〝図体でかいわりには素早いからな、変異種以外〟

 〝1体は神経締めしたみたいになったな〟

 〝びくんびくん〟

 〝ずしんずしんなんだよなぁ〟

 〝びたんびたんじゃね?〟

 〝オノマトペって難しい〟


 雪は解かせても地面は掘れんでー。うちの視界に入る範囲、結界で覆っといたし。


 「グゥウア!」

 「おこ?おこなん?」

 〝これはおこですわ〟

 〝地面に潜れなくさせたのが誰かってのがわかるのか〟

 「おう、こっち見ろや!」

 「ガ?!」

 〝斬りつけても傷ひとつできないとか頑丈すぎない?〟

 「烏!今金の延べ棒持ってねえよな?!」

 「ないけん改造は無理やでー」

 「だよなぁ?!しゃーねえからぶっ刺す!」

 「グ、ガァ、ァ…」

 〝ずちゅっていったな〟

 〝刺すのって感触がなんか苦手〟

 〝わかる。生々しい感じが増す気がする〟


 そうよなぁ、大物ぶった斬りたいうてこっち来たんに、斬れん硬さやったけえな。なんかええ素材あったらやってみるんはありかもやけど、そう都合よく見つからんやろなぁ。

 それにしてもちーちゃん大喜びや…満腹中枢ないけん、どんだけ血ぃ飲んでも平気なんはええけど…さすがに太らん?大丈夫?


 「おっし、残りはどうだ?」

 「遠いなぁ…こっから10キロ先くらいやで」

 「なら解体先にしちまうか。ポーチん中圧迫されてる感じやべえし」

 「でかさがでかさやけえなぁ。ポーチの入口くっつけりゃつるんって入るんはええけど…」

 〝出る時もつるんってかにゅるんなんだよな〟

 〝見てて面白い〟

 「これ出そーって思っただけでにゅるんと出てくるのが嫌で、どうにかならんかいろいろ試したことあるねんけどな?」

 〝ダメでした?〟

 「うん。ダメやった。手ぇ突っ込んで、出したいもんイメージしたらにゅるんて出るようになった」

 「それもそれでよくね?」

 「おっちゃんやったらそうやろな。こだわらんし」

 「出し入れできるならなんでもいいだろ、ポーチなら」

 〝見た目にもこだわりたい〟

 〝手を突っ込むほうがうっかり出しは減りそう〟

 〝ポーチに触れてるのを条件にしちゃうと、事故で中身出るよね…〟


 今もちょいちょいあるよな、荷物ぶちまけ事故。それの被害減らすためにも解体しよかー。

 うちのはええけどおっちゃんのがな…ぽろんするんよな…






 「はい」

 〝はいじゃないが〟

 「魔石多いな?」

 〝イレギュラー個体は魔石持ちが多いって傾向は出てたけど…〟

 〝それにしてもごろごろあるな?〟

 「7体で魔石38個はさすがに多いなぁ。純度も高めや」

 「食ったやつの魔石ってのはねえだろうな。それなら胃の中になきゃ変だ」

 「あったんは心臓と脳、肝臓に、一番いっちゃん多かったんが腎臓かぁ」

 〝尿結石…〟

 〝なんか嫌だな?〟

 〝嫌すぎる〟

 「おう、お前ら健康診断ちゃんと受けろよ。そろそろ時期だろ」

 〝はーい〟

 〝申し込み手続きめんどくさい…〟

 〝わかる〟

 〝手続き完了!〟

 〝早い〟


 

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