12. 雪原パニック?
ダンジョンって不思議よなぁ…入口が横穴やったり竪穴やったり、渦潮ん中にあったり木のうろにあったり、平原のウサギの巣穴みたいなとこにもあったり。ところによっちゃ空のどっかにあったりする。
しかも中に入ったら、外とはまったく違う世界が広がるんや。おはころ牛肉ダンジョンとかサバンナやし、ここやと果てが見えへん雪原や。
〝ここ初めて見た〟
〝用事がなきゃ来ないとこ〟
〝間引き依頼で来るくらい?〟
〝だなぁ。ドラゴンダンジョンではあるけど、それなら麓の湖のとこ行ったほうが楽だし〟
〝あそこから30分くらい歩くからな、ここ〟
「ぷち登山やで」
〝ダンジョン探索前に疲れるのはやだなぁ〟
〝それはそう〟
〝だから空いてて穴場とも言える〟
〝ドラゴン相手にし慣れてないSランクが行ったりする〟
「出てくるんはポイズンラプター筆頭に恐竜っぽいやつばっかやからな。相手するんは楽しいと思う」
〝ただし群れる〟
〝群れてないのTレックスくらいじゃね?〟
〝大型肉食恐竜っぽいのは群れてないね〟
〝見た目恐竜っぽいけど、やっぱモンスターなだけあって一筋縄ではいかないんだよねー〟
〝だから相手してて楽しい〟
〝えー?めんどくさくない?雪花始祖鳥とか〟
〝あいつらは、うん…〟
〝あれは鳥。恐竜じゃない。いいね?〟
〝あっはい〟
〝雪花始祖鳥イズ何?〟
〝白い始祖鳥〟
〝見た目は可愛い〟
〝でも群れでかがやくいき使ってくる〟
〝害悪じゃん〟
〝火山エリアがあるダンジョンに出てくる紅蓮始祖鳥はれんごくかえん使ってくる。もちろん群れで〟
〝害悪じゃん〟
〝おいかぜ使わなきゃ〟
〝フバーハだろそこは〟
「また新しくVRで出とったな、そういや」
〝11VRリメイクが個人的に一番好き〟
〝わかる。踊りながら進むとことか特に好き〟
〝7かなぁ…例のアレは許されざるけど〟
〝あの胸○イベはほんとダメ。システム保護されてなかったら大人の住人ほぼ全員ころころしてた〟
〝やっぱ5でしょ〟
〝5だよなぁ?〟
〝5のハーレムイベ実装まだかなぁ〟
〝ハーレムはないわ〟
〝ハーレムはちょっと…どちらか選ぶからいいんじゃないか〟
〝4もいいよ?〟
〝わかる〟
〝どのキャラになりきろうか選べるのいいよね〟
〝大昔のゲームのほうが楽しいのってすごいよな〟
〝レトロゲームのままもいいけど、VRリメイクもよき〟
〝意外とゲームしてるやつ多いんだなぁ…〟
〝息抜き息抜き〟
〝機体メンテ中は基本ゲームしてる〟
〝VR食い倒れもいいけどね〟
〝食っても食ってもお腹いっぱいにならないからいいよね、食い倒れ〟
〝現実に戻るとしばらくディストピア飯になるやつ〟
〝今のわたしの状況だわ、それ〟
〝同じく〟
雑談コメントを視界に映しながらも、目視と気配感知で索敵中。吹雪いてへんから雪の下以外のは見つけやすいはずなんやけど、なんもおらんな?
雪に手ぇ突っ込んで、雪の中から地中にかけて索敵魔法発動。うん。イレギュラーやったわ。まだ1階やのに。
スマートウォッチから通話操作。
「ギルドに烏より連絡。No.0052雪山中腹ダンジョン1階でイレギュラー発生。アイスワームによる標準モンスターの全滅を確認」
『緊急窓口担当:アメリアが連絡を受けました。
「依頼受理。アイスワーム討伐完了後に連絡する」
『よろしくお願いします』
そういやここ2ヶ月は1週平均5、6人しか来てなかったな、ここ。昨日は誰も来てへんみたいやし。イレギュラーの前兆には気づくも何もないかぁ。気づいとるんやったらギルドにここ行くっちゅーた時点で教えてくれるやろうし。
それにしてもアイスワームかぁ…
〝え、何、イレギュラー?〟
〝アイスワームかぁ〟
〝冷たくてやかましいやつだぁ〟
〝Sランクは冷静だな?!〟
〝アイスワームとか出るんだそこ…〟
〝1階でイレギュラーはちと珍しいな?〟
〝先輩、これ降りてもモンスター全部食われてね?〟
「たぶんなぁ…なんやねん、もう。ポイズンラプター狩りに来たんに」
〝やっつあったりー〟
〝哀れ、アイスワーム〟
〝烏ー、俺もそこ行っていいかぁ?最近大物ぶった斬れてねえんだよ〟
「あれ、おっちゃん今本部やないん?」
〝さっき帰ってきた〟
「10分以内に
〝ちょっぱやで行く〟
〝今剣聖らしき人が超ダッシュでどっか行った。中央空港なう〟
〝向かったな〟
〝突風吹いたと思ったら剣聖だった?〟
〝たぶん?〟
〝え、あれがそうだったのか〟
〝速すぎて目で追えなかった〟
〝草〟
〝中央空港から中央ギルドってワープポータルないんだっけ?〟
〝ないね〟
〝近いからいらんだろうって置かれてないんだってさ〟
〝確かに近いけど〟
〝中央ギルドからNo.0052雪山中腹ダンジョンってどんくらい?〟
〝歩いて半日〟
〝剣聖なら間に合うか〟
〝ギリじゃね?〟
「間に合いそうやなぁ…おっちゃん、絶対麓から道なき道通ってくるもん」
〝あー〟
〝イノシシかな?〟
〝サイかな?〟
「とりあえずアイスワーム5体確認したけえ、近くにおる1体相手にするわ」
〝5体!?〟
〝まだ下にいたり?〟
「降りたらおるかもな」
〝烏さんひとりだとめんどくさがってダンジョンの一部破壊しそう〟
「んで素材ダメにして怒られるんや。うちは詳しいんや」
〝やったからな〟
〝そら詳しいだろうよ〟
〝ダンジョン壊して怒られるんじゃなくて、素材をダメにしたから怒られるって、笑うしかないよね〟
〝ダンジョンは勝手に直るけど、素材はどうにもならないからね…〟
アイスワームが出てくる前兆の地響きを感知。うん1体だけや。
すぐさまその場から飛び退く。
〝うるせえ?!〟
〝この出てくる時の轟音が耳に痛い〟
〝ボリューム調整余裕でした〟
〝注意喚起しといて…〟
〝轟音注意〟
〝遅いわ!〟
〝遅えよ!〟
〝めんごめんごー〟
〝古いわ〟
〝30世紀以上前のネタじゃねそれ〟
うーん、この水蒸気も邪魔やねんなぁ…角があっつあつやけんしゃーないけど。
とりあえず土手っ腹に拳を1発。
「グフゥッ」
「あ、割れたわ。え、割れるん?」
〝なんで動揺してんの?〟
〝マジかよ割れんのかよ〟
〝鱗粉々じゃん〟
〝脱皮したばっかとか?〟
「あー、脱皮。なるほどなぁ、ソフトシェルクラブみたいになっとるんか」
〝なるほど〟
〝言われてみれば透明感あるね?〟
〝脱皮して間もなければ透け感ある鱗なんだっけか〟
〝これ、剣聖斬り甲斐ある?〟
「脱皮前のなら?」
〝残しとく?脱皮前いたら〟
「残しといたるかなぁ」
〝残せ!〟
「うーっす」
〝剣聖今どこ?〟
〝山2つ前。溢れてんの見つけたから狩ってる〟
「報告は?」
〝した〟
〝山2つ前ならNo.1003ダンジョンかな〟
〝1000から1020があの辺りだっけ〟
〝溢れるかもって言われてたのは1003と1008と1017〟
腹の鱗全面砕けたら、びたんびたんして死んでもうたわ。脱皮して間がないやつってこんなんなんやなぁ…
砕けた鱗が食い込んで血塗れになったとこから、ちーちゃんがするっと侵入。食事いってらー。
※雪花始祖鳥(英語圏ではSnow Archeopteryx):白い始祖鳥。見た目はかわいい。見た目は。20~30体によるかがやくいきをしてくるため、遭遇したら死を覚悟するべし。可食部位はなし。冷気を発し続ける羽根は保冷剤に使われる。討伐推奨ランクはS。
※紅蓮始祖鳥(英語圏ではScarlet Archeopteryx):赤い始祖鳥。見た目はかわいい。見た目は。15体前後によるれんごくかえんをしてくるため、遭遇したら死を覚悟するべし。可食部位はなし。熱を発し続ける羽根は保温剤に使われる。討伐推奨ランクはS。
※アイスワーム(英語圏ではIce Worm):凍てつく鱗と燃える角を持つ、脚も翼もない蛇型ドラゴン。長さ20メートル、高さ3メートルほど。主に凍土フィールドの地中にいる。燃える角で凍った地面を掘り進み、凍てつく鱗で通り道を舗装する。脱皮して1日経っていない個体の鱗は薄氷のようになるらしい。可食部位はなし。魔石が5個ほどある場合が多い。鱗1枚で氷室が作れ、角1つで溶鉱炉の火が絶えなくなるので、発電所や国、軍から依頼が来る。討伐推奨ランクはS。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます