11. ラーメン食べたいね
「ラーメン食いたくなったけん、使えそうなガラが取れんかとNo.0052雪山中腹ダンジョンに来た」
No.0052雪山中腹ダンジョン、通称なし。ドラゴンダンジョンとして人気はそこそこある。特徴らしい特徴はドラゴン系しか出らんってだけ。食えるモンスターがそこそこおるってんで、そこそこ依頼で来るやつはおる。
でもぶっちゃけ、ひとけのあるなしで言やぁ、なし側やな。相手するんが手間なの出るし。こっから山降りたとこにある、おおこいワイバーンダンジョンって呼ばれとるNo.0051湖畔ダンジョンのが人が多い。
まあここが人少ないんは、単に山登りがめんどくさいってのがでかいんやろうけど。こういうめんどいとこにダンジョンあったりするけえ、ダンジョンの入口にワープポータルを、ってのは前々から言われとるんやけど…溢れたときに壊されてまうから置くに置けんのよなぁ…
結界発生装置ができたらワンチャンないやろか。置いてもろたら、ここも人増え…んな。うん。依頼やなかったら
〝わこつ〟
〝わこつ。耐寒装備してると思ったら山登りしてたのか〟
〝わこつ。いいね、ラーメン〟
〝わこつー。使えそうならギルドに卸す?〟
〝わこつ。ガラなぁ…東部のダンジョンなら適したモンスターいるけど、中央は難しいだろうなぁ…〟
〝おっつー。先輩遠征しないよなぁ。畑あるし〟
「畑の世話とダンジョンの手入れあるけえ、あんま家空けたぁないんよなぁ。雇われる物好きもそんなおらんし。ワープポータルあるっちゅーても、3日以上空けてまうと畑の作物がマンドラゴラ化してまいかねん…ゴーレムはマンドラゴラ化した野菜の討伐はできても、防げはせんけえなぁ…」
マンドラゴラ化はほんまどうにかしたいんやけどなぁ…魔素が豊富なとこで畑作るとどうしてもなってまう。
薬草畑ならええけど、野菜畑でなられたらあかん。食えたもんやない。野菜食うために畑作ったんに、食えん野菜ができるとか冗談やないわ。
〝ダンジョンは?〟
〝金太郎に任せられない?〟
「金太郎には間引きは任せられへんなぁ、仲間意識出てもうとってん…やけん、病気して死にたい思うとる岩石カウを楽にさせるんもしんどいみたいや」
〝牛仲間だし、そうなっちゃうかぁ〟
〝治療できないんだよな、モンスター…〟
〝専用の薬ができないか研究してるんだっけ?〟
「杜若が研究しとるけど、進捗はまあ、芳しゅうないな」
〝ガンはどの生物もなるのがなぁ〟
〝モンスターだからってガンにならないわけじゃないの、初めて知った時びっくりした〟
〝魔法で腫瘍切除するのが精一杯なんだっけ〟
〝取ったからって再発しないわけじゃないからなぁ〟
〝モンスター以外なら、癌はもう、不治の病じゃなくなってるけど…〟
「普通に生活しとるだけでもなるしなぁ…やけん薬でどうにかならんか試しとるみたいや」
治療薬より予防薬ってなるんもしゃーなしな現状やからなぁ…どっちもモンスター別に作るんやったら、予防薬のが早そうってのもあるらしい。
せっかく契約できた知性ありモンスターやけんって死なせたい研究者はおらんのが救いよなぁ…いや、おったけどマザーから依頼受けて人格データ改竄したわ。そうやったそうやった。
〝予防薬かぁ〟
〝なりにくくする方向に舵切ったんだ?〟
「らしいで」
〝そっちのほうがまだ現実的かなぁ〟
〝病気になったのをどうにかするより、なりにくくするほうがまだどうにかなりそうってことか〟
〝予防ってか防疫大事。いろんな惑星に行って思った〟
〝わかる〟
〝病気の持ち込みも気にする必要あるからな。防疫大事〟
「それはそれとして、マンドラゴラ化はどうにかしたい」
〝野菜がモンスターになるってのはもうファンタジーでお腹いっぱいよ…〟
〝現実でなるんじゃねえ!ってなる〟
〝薬効成分は増すけど、その分味がなぁ…〟
〝魔素の少ない惑星か、魔素管理徹底した農業コロニーの野菜が安定だわさ〟
〝高いじゃん〟
〝美味しいものは高い。大昔からある真理〟
〝安くておいしいを目指そうぜ〟
〝やっぱ地産地消よ〟
〝ところで何ガラ狙い?〟
「ラプターかなぁ。ポイズンラプター」
〝ダチョウトカゲかぁ〟
ポイズンラプターは毒袋を解体中に破かんかったらいけるはず。肉の味が鶏に似とるし、鶏白湯っぽく取れんかなって期待しとる。
うちもそんな扱ったことないんよな、こいつの素材。
〝あいつのもも肉のロースト好き〟
〝わかる。鶏のと違って皮はないのに、こんがり焼けてパリッとした表面…噛んだ瞬間ふわりと解ける肉の繊維に、溢れる肉汁…〟
〝爪に毒さえなけりゃ、相手するのも楽になるんだけどなぁ〟
〝ポイズンラプターって強い?〟
〝強いってかめんどくさい〟
「10体以上の群れでしか出らんで」
〝統率役とかいそうに見えないけど、きっちり連携とって襲ってくる〟
〝たまに見た目一緒な強化種まざってたりしてめんどくさい〟
「強化種なぁ…毒液吐いてくるんよなぁ…」
〝爪のと同じ毒なんだっけ?〟
「そうそう」
〝猛毒なんだよな、あれ〟
〝ひえっ〟
〝爪が掠っただけで数分経たずに死ぬ。死んだ〟
「強制オワタ式とかやめてほしいわぁ」
〝それな〟
〝アンドロイドなら関係なし…って思うじゃん?血液とかリンパ液相当の循環液を凝固させる作用があって、結局ダメなんですわ〟
〝うわぁ…〟
〝え、何。Sランクっていつもそんなの相手にしてんの…?〟
〝ドラゴン系相手は基本いつもオワタ式〟
〝一発もらったら即アウト〟
〝変異種ミノがマシなレベル〟
〝でもドラゴンハンターは誉れだからね〟
〝狩人ならドラゴン討伐は憧れるもんさ〟
〝わかる〟
〝ソロで満身創痍とはいえダイヤワーム狩ったときは脳汁ブッシャーした〟
〝よく狩ったな。あれめちゃくちゃ硬いじゃん〟
〝打撃こそパワーよ。ハンマーでひたすら頭狙いでヒットアンドアウェイ〟
「ダイヤワームは魔法で打撃耐性得とるけど、斬撃射撃よっか効くけんな」
〝ダイヤモンドでできた鱗のくせして打撃に強いと思ってたけど、魔法で耐性得てたのか…〟
〝モンスターがどんな魔法使ってるかは、いろいろ攻撃しかけて見抜くしかないのがつらい〟
〝基本は肉体強化系だよな〟
〝ドラゴン系はそれプラス、天変地異起こしたりする〟
〝火龍とか雷龍とかな〟
〝火龍にダンジョンの火山噴火させられた時はさすがに死んだ。遭遇したわけでもないのにあれは無理…〟
〝あの時は火山噴火させて遊ぶのをやめろぉ!ってなって死んだ〟
〝ひえっ〟
〝烏さん、どうやって狩ったんです…?〟
「雨降らせて怒らせて地上まで誘き寄せて?」
〝雲より上なのに雨…いや、魔法ならいけるか〟
〝濡れるの嫌なのかな〟
「みたいやで?あんときは単純に、火ぃ消そうとしたら怒らんかなーってやってみただけなんやけど…」
〝そしたら怒ったと〟
「いやーあれはラッキーやったわ」
〝見つけたところが火山エリアじゃないならラッキーだよなぁ〟
〝だからと言って同じことして狩れるとは思えない〟
〝それな〟
それはそう。うちも場所が場所やったら死んどったやろな。いやほんま。見つけたんが平原エリアで助かったとこあるで。
休耕期作ってまた行こうかなぁ、
※杜若:コードネーム
※マンドラゴラ(英語圏ではMandragora):ダンジョンでなくても自然発生する特殊なモンスター。ダンジョンの外では魔素が豊富な地の、よく手入れされた畑の収穫直前の作物からしか発生しない。畑から叫びながら逃げ出す。そして数時間で死ぬ。叫びを聞いても死にはしないが、しばらく耳が聴こえにくくなる。薬草マンドラゴラなら薬効成分アップして毒草化するだけなので問題はさほどないが、野菜マンドラゴラは薬効成分アップしても味が悪くなって食べられなくなるので大問題。そのため、収穫の1週間ほど前から魔法で畑の魔素を取り除く必要がある。ダンジョン内であれば、引っこ抜かなければ無害。たまに出歩く個体がいるが、叫びながら逃げるだけなので、被害は耳だけ。討伐推奨ランクはC。
※ポイズンラプター(英語圏ではPoison Velociraptor):尾が短い、ヴェロキラプトルに似た恐竜型モンスター。頭から首はダウンのような柔らかく小さな羽毛に覆われているので、その見た目からダチョウトカゲとも呼ばれる。胴体からは羽毛ではなく鱗なので、首を狙うのが討伐のセオリー。爪に非常に強力な猛毒を持ち、10マイクログラムというほんの僅かな量が体内に入っただけで、2~3分以内に死亡する。解体に失敗すると骨を通じて爪の中の毒腺から毒が全身に駆け巡るため、骨を素材として扱うなら注意が必要。フィールドタイプのダンジョンにしか出ない。常に10体以上の群れで行動しており、数を減らしても統率が乱れることはない。討伐推奨ランクはS。
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