03. ペットが増えたら報告書を作成することになった
牛肉ダンジョンのボス部屋で1泊。
マーダーグースの焼肉は美味かったっちゃあ美味かったけど…食いたい
って今更やけど、牛肉ダンジョンで鳥肉ってなんやねん。ここのメイン、突撃ブルとミノタウロス、岩石カウやんに。
…いや、マーダーグースはこの
「グフゥ…」
「昨日はよう食っとったなぁ、あんた…」
「ブゥグルルル…グルルゥ」
〝おはおはー。なんか変異種ブル、すっごい満足そうだけどどしたん?〟
「晩飯に食わせた焼いた突撃ブルの肉が美味かったんやて」
〝ん?他の肉食わなかったんだ?〟
「ピットフォールラットの肉は食った。でもマーダーグースの肉は食わんかった」
〝ほーん?ピットフォールラットの肉も焼いたら硬くなるし、硬い食感が好きって感じかね〟
「焼いたら硬いけどパサついてない肉、かな。どっちかっちゅーと」
〝あー、程よく脂っ気が残ってないとだめなんか〟
「しかもハーブ塩で味付けしたやつのほうが好み」
〝グルメだなぁ〟
「グゥルルル…グルゥ!」
「焼肉のタレついたやつか…手元にないけん、地上に戻ったらやな」
「グルッ!」
〝意思疎通できてて草〟
そういや飯食わせとる時にいつの間にかわかるようになっとったな…契約もなんもしてへんのになんでやろ?
〝おはよーございまーす。知性あり変異種モンスター研究したいって連中押さえるのきついでーす〟
「あんましつこぉすると研究ログ全部消すって
〝ういっす〟
〝先輩が研究員特攻で草〟
〝隔離してようが鍵かけてようが関係なくデリートっすからねー〟
「最悪記憶改竄させたるわ」
〝っょぃ〟
〝え、法律的に大丈夫なんすか?〟
「大丈夫大丈夫。倫理観ぶっ飛んだやつは記憶改竄なり人格データ差し替えなりしてもええって、マザーから許可もろぉとるから」
〝なんでそんな許可出しちゃったんっすか…?〟
〝差し替えとか別人になるやつじゃないですかやだー〟
アホになるんが悪い。どうせ知識と経験のデータインプットすりゃ、別人化しても問題ないし。時間が経ったら差し替えた性格が変わるかもしれんだけや。むしろ性格ガチャで当たり引くまでリセマラしたほうがええまであるかもな。
さーて、突撃ブルの燻製はどうなったかなぁ…
〝おはー。なんか朝っぱらから燻製してる〟
「昨日から漬けとったの、起きてから乾燥させとってん」
「グルゥ?」
「はいはい、できたら分けたるけん、もうちょい待ちぃ」
「ブフゥグルルゥ」
〝なんか懐いた?〟
〝意思疎通はできてる〟
〝擬似契約状態ってやつっすかねー。知性ありモンスターに稀にあるやつ〟
〝何それ〟
〝認めた相手に自分の考えとかなんとなーく伝わるようにするやつっす〟
〝なるほど、完全な契約状態じゃないからなんとなくでしかわからないのか〟
〝あの説明でわかるのが怖い〟
なるほど、擬似契約。それならなんとなくこいつの言いたいことわかるんも納得やわ。
ブル肉の燻製は熱燻やけど、うん、ええ感じやぁ。見た目パンチェッタっぽくなるんは相変わらず謎やけど。
温燻、冷燻は時間が足らんから帰ったらやろう。それにたぶん、熱燻やないとこいつが食わん。
うちでもジャーキーよろしくそんまま食えんこたぁないけど、さすがにジャーキーみたいに繊維が解けんのがな。ナイフで細かくしてスープに入れよ。亜空間ポーチに野菜はたっぷり入れてきたし、多めに作って余ったらなおしとこか。
「おっし。できたで」
「ブルルルル」
「燻製は逃げんて。落ち着いて食いや」
「ブフゥ!グルルル、クゥルルルクルルルル…」
〝喉鳴ってーら〟
〝突撃ブルはネコだった…?〟
〝喉鳴らすの初めて知ったわ〟
〝さっきからちょいちょい鳴らしてた〟
〝ねこかな?〟
〝うまそうに食うなぁ〟
〝でも焼くと、俺らが食うには筋張ってるっていうか、がんばれば噛みきれなくはないけどって硬さなんすよね…不思議な肉っす〟
〝顎が疲れるやつー〟
〝ジャーキーにするとほろほろ繊維が解ける感じなのにな。生ハムもハモンなんちゃらより硬いけど噛めるし〟
「スープに入れても美味いでー」
〝美味そう〟
〝葉物野菜とか根菜とか合うっすよね。刻み生姜も入れると冬に嬉しい一品になるっすよ!〟
〝ほーん?冷え性の同僚に教えてやっか〟
〝もしかして昨日ドン引きしてた人?〟
〝そうそう〟
今回はシンプルにざく切りにした白菜と、短冊切りにした蕪と合わせた。これにジャーキーとはちょい違う、見た目パンチェッタな燻製ブル肉を入れて食うと美味いんよなぁ。まあ燻製に使うチップの相性もあるけん、なんでも合うわけちゃうけど。今回は胡桃チップにしてみた。癖少ないし。
できたばっかの燻製ブル肉を、じっくりコトコト煮込んだスープに、ナイフでシュシュっと削り入れる。そっから蓋して5分待ち。
あんま煮込んでへんけど、うん。コンソメに奥行きある風味が加わってよきよき。ベーコン入れたやつとはまた違った味わいがあるんよなぁ…朝食におすすめ。シンプルに水で煮込んで塩胡椒で味付けしたやつもええけどな。
ああ、肉ほろほろでええわぁ…白菜も蕪も口ん中で溶けて、ほろほろの燻製ブル肉と絡んで最高…
〝コンソメって自家製?〟
「いや、さすがに市販やで。前作ったやつ使いきってもーてん。足してもないし」
〝時間かかるんすよねー手作りコンソメ〟
「使う肉によっちゃアク取りがやってもやっても終わらん地獄よ…」
〝ぜんざいよりかかる?〟
〝量にもよるんじゃないっすかね?レシピによってはぜんざいって差し水の回数多いから、煮る時間はかかりそうっすけど…コンソメは野菜切る時間も混みっすからねぇ…なんかどっこいな気がするっす〟
「コンソメって言えるかあやしいとこやけど、ブイヨン使わん簡単な方法があるで。乾燥させて粉砕して混ぜるやつ。菜食主義者御用達のアレ」
〝乾燥も粉砕も魔法でできるから、使ってるのは専らそれっすね。物足りなさはベーコンとかウインナーで足せるし〟
「グルルゥ?」
「野菜もいけるん?ならちょっとだけ器に入れよか」
「グルッ」
〝そういや突撃ブルって雑食だっけか〟
〝変異種でもそれは変わんねーのな〟
〝蠱毒壺みたいな環境に置かれて変異するって言われてるっすけど、一説であって事実かは不明らしいっすよ〟
〝だから食の好みが変わらんと…食い物で懐柔ワンチャンあるか?〟
「よくわからんやつから食い物もらいたがるやつはそうおらんのちゃうか?」
〝知性なしは無理そう、かなぁ〟
〝知性ありでも警戒はするんじゃね?〟
「ブフゥ!」
「せやな。あんたはうちに屈しただけやんな」
「グァウルルルル」
「…ちーちゃん何教えとるん?」
〝なんて?〟
「うちについて来たら美味い飯食えるよって、ちーちゃんから聞いたって」
〝草〟
〝血抜き用スライムにも食の好みがあったのか…〟
ちーちゃんも結構グルメなんよな…肉が美味いやつの血は積極的に飲みよる。特にドラゴン系。
ちなみにちーちゃんはいくら血を飲んでも太らん子。一部の血抜き用スライムは飲んだら飲んだ分おっきくなるらしいんやけどな。材料の細胞云々は関係ないっちゅーから謎やわ。
まあ魔法生物、もとい不思議生物やし。そういうこともあるか。
朝食い終わって配信も終わって、ダンジョンから脱出。アホ研究員が出待ちする可能性があるかも、と思うて配信切ったんやけど、おらんかったわ。後で聞いたらマザーズが警告出したらしい。犯罪スレスレのことでもやらかそうとした
なお、研究員自体からは逃げられず。ギルドで捕まって「報告書書いてください!」って土下座されたわ…まあそんくらいならやるわ。その前に契約せんと。
あ、焼肉のタレつけた焼きブル肉を食わせたらんとか。…先に契約、後に飯やな。
※岩石カウ(英語圏ではPetrifaction Cow):突撃ブルと同様のパターン。「ロックカウ」の名称予定だったのが、登山用具メーカーの名前と被ったため「岩石カウ」になった。その名の通り岩石でできた体を持つ、ホルスタインっぽい牛。ただし岩石になっているのは腹側以外の皮部分と蹄のみ。ただ、死ぬと骨がなぜか石化(石灰化)する。肉も美味だが乳も美味で、石灰化した骨は肥料に使えるため、ピットフォールラット同様、家畜化の研究がされている。フィールドタイプのダンジョンにしか存在しない。群れでしか現れないため、討伐推奨ランクB。なお、突撃ブルとは反対にメスしかいない。惑星アラスタのダンジョンに生息しているものはおとなしい個体が多く、こちらが敵意を示さない限り、乳搾りもさせてくれる。噂では、乳搾りダンジョンと呼ばれているダンジョンがあるとかなんとか…
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