八話 謝罪
ある魔女の書庫にて。
「……行くのか?」
山崎の傷を魔法で癒やしながら聞いた。
「うん…後の事は…任せていいかい?サリ。」
「フン。……やりたい事をやってこい。道化。」
ありがとうとつぶいて谷口は言った。
「……『終幕』。」
谷口の姿が消えた。
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「それにしても、間に合ってよかった。怪我はないかい。やまねちゃん?」
「僕は、大丈夫。…………だけど、」
やまねはロンの亡骸を見る。
「ロン君。君こそが本当の『勇者』だったね。この行動に私は、敬意を払うよ。」
谷口はやまねが落としていた花束をロンの側に置いて一礼した。そしてやまねの方に振り返る。
「やまねちゃん。…………ペンキの件、本当にごめんね。」
「……?何言ってるの……谷口くん?」
「ああ、やっと、……謝れた。」
谷口は少年の方へと足を運ぶ。
やまねにはその行動が、まるで死にに行く様に見えて、思わず立ち上がり、谷口の手を掴む。
「ダメだよ!谷口くん!!そんな事をしたら………っ!私が切り札を使え、」
その先は言わせない。………キスで黙らせた。
抱きしめて、引き寄せる様にして。
「………た、谷口、くん?」
「血で汚れてても可愛いね。やまねちゃん。でもいいかい、それはまだ使っちゃ駄目だよ。」
「待っ…」
「『終幕』。」
やまねの姿は消えた。
「…これで良しっと。やっぱり自分の札は使ってなかったか。……待ったかい?」
「ええ。僕は空気くらい読めますからね。」
少年は手を銃の形にして谷口に向ける。
「では終わりにしま……何のつもりですか?」
谷口は両手をあげていた。
「…見ての通り、降参だよ。私が何やっても君に勝てる気がしないからね。まさか、白旗をあげてる奴に攻撃する程常識知らずでもないでしょ?君??」
少年は何やら葛藤していたが……手をおろした。
「そうですね。確かに、僕はそこまでの常識知らずではありません。……負け犬として、王国に連れて帰り、晒し者にしてあげましょう。」
さっきまでのシリアスさを捨てて手を叩いた。
「おっ!ラッキー♪生き残ったゼ☆」
「はぁ…………あなたにはプライドは無いのですか?」
「あ?プライドで飯が食えるんか??」
「…………………。」
谷口に構うのはやめて、ずっと倒れているアモレに声を掛ける。
「帰りますよ…アモレ騎士団長。」
「……断る。」
「…何ですって?」
少年は耳を疑った。
「…俺は、アイツを倒す為に修行を積みたい。
次は必ず勝つ為にだ。」
「……それは、王国に帰ってからでも出来るのでは?」
「駄目だ………そんな事をしている暇はない。俺は決めたんだ。」
ため息をついて、少年はどう説得するかを考えていると、意外な所から援護がきた。
「……2日後だ。」
「…何ですか?」
「やまねちゃんと山崎が王国に攻め込む日だよ。」
「「…っ!?」」
2人揃って谷口を見る。
「……嘘ではないですよね?」
「まあ、ここで嘘つこうなんて殊勝な真似はしないさ……だって生き残りたいもん。」
「アイツと……また、戦える!」
アモレは歓喜に震えていた。
「勇者様!帰りましょう!!今すぐに!!!」
「…そうですね。」
アモレの反応に呆れながら、転移の魔法陣を展開する。
「……何故その情報を僕たちに?……敵同士のはずなのでは。」
谷口は当たり前のように言った。
「そんなの、ハンデに決まってるじゃん。」
———君たちじゃ逆立ちしても勝てないよ。
そう言って笑っていると、転移魔法が発動して
3人は王都へと向かっていった。
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