番外 別件/手紙

「やあ、王様。」

「……ん?」


目を開けて、体を起こす。そこには少年、否

勇者がいた。……だが疑問が沸く。


「……ここは儂の寝室。外にはアモレの騎士がいた筈。」

「忘れましたか?アモレ含む、騎士団達は皆、数日前に、ハラハの町に行っています。」


……そんな事、言っていたか?

妙に胸騒ぎがしていると、少年は言った。


「ここだけの話なんですがぁ……。」

「……何じゃ?」

「僕は……勇者ではないんですよ。」


王様は寝床から飛び起き、飾ってある剣を取ろうとして………失敗した。その理由は単純だった。


「…ぐっ!?ギ、ギャアアアアアアアアア!?」

「もう、落ち着いて下さいよ。王様。」


クツクツと勇者…否、少年は嗤う。

…王様の両足が消滅していたからだ。血が滝のように噴き出す。痛みで発狂しながらも少年は言葉を続ける。


「僕は勇者ではなく、『剪定者』ですよ。コードネームは……僕は嫌いですけど『臆病者』で通ってますね。」

「剪……定…者?」


王様は激痛の中でつぶやく。少年は嬉しそうに頷いた。


「まあ剪定者と言っても僕を含めて、六人いますけどね。……性格とかはバラバラですが。」


……意識が薄れていく。


「けど目的は共通していますよ。」

「……。」

「それは、」


言葉を区切る。…………そして言った。


「世界を終焉に導く事です。……あれ?」


よく見ると、王様は既に息絶えていた。


「手早く済ませ過ぎましたかね。まあいいです。時間もありますし、町へ行きますか。」


そう言って少年は、寝室から出ていった。


この日、王様含めて全ての王族が死に絶えた。


………ただ1人を除いて。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


親愛なる(?)山崎君へ。


これを読んでいるという事は、服と脚本を見た後なんだろうねぇ。その反応が見れないのは正直、非常〜〜〜〜に残念でならないよ。まったく。まあ、いいさ。……私としては、このまま永遠に雑談を続けたい所なんだけど事が事だし本題に入ろうか。


単刀直入に言うとサリが言ってた内容は『嘘』だ。勘違いしないで欲しいけど、「サリが実は敵だった」というのは無いからそこは安心していい。これも私のシナリオ通りだよ。じゃあ何故、親愛なる友達に嘘をついたのか。答えは単純。『聞かれていたから』さ。誰と言われたら君ならなんとなく察しがついているんじゃないかな?そう、『敵』だよ。サリも含めた私達共通の敵。言い換えれば、『下手人』さ。


——実は、最初からいたんだよ…あの場に。


気づいたのは私じゃなくてサリだけどね。いや流石、魔王だよね。いや、正確に言えば『あの目』のおかげか。


本人曰く、「注視しなければ分からなかった」ってさ。大したもんだ。でも君は疑問に思うんじゃないかな?


「何故、攻撃してこなかったのか?」


ってね。でもその答えはないから、あくまで私の仮説になるんだけどおそらく、


—『したくても出来なかった』と考えられる。


サリの目でも、注視しなければ見えないんだ。

おそらく、何かしらの縛りがあると私は思うね。


で、話が長くなったけど…君達にはこれから『囮』になってもらう。下手人が現れるまでのね。僕とサリは『書庫』から町を監視して状況が動くまでは動かないから、トラブっても自分達で何とかしてね。


一応君たちには、一枚ずつ『転移の札』を持たせてるから、万が一には使ってね。ちなみに私が作ったよ。すごいね!魔王の加護を付与してくれたおかげで出来たんだぁ。いいだろ〜。


……………もう作れないけど。


5枚作ったら魔力切れちった。テヘッ☆


ちなみに『終幕』って言えば発動するから、

くれぐれも言わないように!


何でその言葉にしたかと言えば、君はこれから演じるからだよ。『情報収集』をする、何も知らない君自身を。


だからわざわざ脚本を用意したって訳だ。そっちの方がやりやすいだろ?……役を演じるのは部活でいつもやってるからね。


——少しでも相手を油断させるために、ね。


ちなみに、これとほぼ同じ内容の手紙をやまねちゃんにも渡してあるし、切り札も持たせたから大丈夫だよ。


君にもあると思った?……君にはないよ(笑)

だって充分強いもん。


ちなみに、こんな文や札を監視の中、どうやって作ったかと言うと、言ってしまえばサリの魔法で私の脳をサリに共有して、創造魔法?で作ったんだ。バレてないかって?


それについては大丈夫。とにかくたくさん作りまくったからね。どれが何に使うかも分からないくらいには。君達が起きた頃にはサリが全部どこかにしまっていたから気づかないのも仕方ないさ。


と言う訳で作戦内容は以上だよ。

精々私は、場が動くまで君達の舞台を客席最前列から楽しむ事にするさ。



健闘を祈る。


        君の親友 谷口馨より




















































































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