三話 交渉

物語は一度、谷口が相談タイムを入れて山崎と共に魔王から距離を取った所まで遡る。

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…夢を見た。『…起きよ…』僕の意思とは無関係に……◾️う。…◾️だ。『…小娘。』無実な◾️◾️をただ◾️し続け、最後にはーーー『いい加減、起きろと言っているのが聞こえぬのか!たわけ!!』


「…?!」

「……ようやく起きたか小娘。てっきり死んでいるかと思ったぞ。」


目を開けるとそこは、空は赤く、草の色が紫色な、明らかにこの世のものでは無い禍々しい景色が広がっていた。


(…確か、みんなと下校途中だった筈だよね。後、僕は男なんだけど………。)


やまねは分かっていた。経験上、ここで男と言ったら絶対に話が拗れると。女子の制服も着ているし。なので、最善手として、スルーする事にした。


何よりも…………。やまねは、話しかけてきた相手を観察する。


(この人、明らかに人じゃない。頭にツノが生えてるし、目も赤いし。…もしかして今の僕、大ピンチなんじゃ………!)


自然に手足が震える。


「…ほう。どうやら貴様の感性はあの小僧や道化とは違い、まともらしい。少し安堵したぞ。てっきり我は、今の時代の人間どもはこういう奴らで溢れているのかと思ってしまう所であった。」


感謝するぞ。と言ってきた。


(正直……怖い…けど、)


意を決して、質問を問いかける。


「あ、あのっ!あなたに、質問したい事があります!!」

「フン、質問か。………いいぞ。今の我は機嫌がいい。言ってみろ。」

「あなたの名前を教えて下さいっ!」


一瞬の静寂が満ちる。だがそれは相手の笑い声によってかき消された。


「クククククク…… ウアッハッハッハァ!!!

名前?名前だと?!小娘よ、そんな事を聞く為だけにあそこまで畏まったのか?だとしたらお笑い草もいいところだぞ!」

「いや、あの、そのぅ……す、すみません。」

「…何故謝る。謝るべきは我の方だ。貴様が起きた時点で言うべき事であった。最初に出会った時に、小僧や道化にも名前を言ったはずだったのだが…………。」


①山崎の場合


異世界召喚時、最初に飛ばされた山崎と魔王との一幕。


「?…ここは……??」

「フハハハハ!我が名は、サナヤタリ…っ?!」


軽い破裂音。咄嗟に避けた。


「…チッ。外したか。まあいいや。とりま術者を殺せば、元の世界に帰れるだろ。」


黒光りするものをこちらに向けながら、戦闘体制をとる。


「…待て、話を、」

「問答無用!くたばりなぁ!!」


②谷口の場合

魔王の名前<<<<<<やまねちゃんの寝顔、可愛い!!


よって、忘却。



………。コホンと咳払いをする。


「我が名はサナヤタリ。……魔王である。」

「…サナヤタリさんと言うのですか。魔王だったんですね。あのっ!2人は無事なんでしょうか?」


魔王は、無言で指をさした。その方向を見てみると山崎と谷口が倒れた柱に座って何やら話しているようだが、遠くて聞こえない。


「良かったぁ。……2人とも無事だったんだ。」


心底、安心したような表情をしている。…‥‥だが、今のやまねは自身がどんな境遇にいるのかという事を知らない。別に答える義理はないのだが、口が勝手に動いていた。


「小娘、貴様は我の要求を飲ませる為の人質だ。」


(さて、どんな反応、どんな表情をする?絶望か怒りか悲しみか。さあどうだ?)


やまねを見る。…動揺もしていない。絶望感も怒りも悲しみもなくただただ、納得した表情をを浮かべていた。


「……薄々、そんな気はしていました。でも良かったです。……………人質が僕で。」


心の底から理解出来なかった。どうしてそんな事が言える?


「…何故だ?交渉が決裂したら貴様は、殺されるのだぞ。恐ろしくないのか?死ぬ事が。」

「死ぬ事はもちろん怖いです。でも、」


一度言葉を切る。息を大きく吸ってこう答えた。


「僕は知っています。あの2人は助けに来るという事を。だって、僕には勿体無いくらいに最高の友達だからです!!」


「ーーーそうだな。その通りだぜ。やまね!」

「ーーーさて、交渉を始めよっか☆」


全ての役者は揃った。さあ、本編を始めよう。

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先に口火を切ったのは谷口だった。


「まず魔王さんとやら、まずは、要求を聞かせてくれないかい?そうしないと何も始められないよ?」


「谷口くん、サナヤタリさんだよ。一応、ちゃんと名前で呼ばなくっちゃ。失礼でしょ?」


「おっ、おう。ごめんねやまねちゃん。これが終わったら3人で呼び方決めようぜ。だから今だけこのままでいい?」


「うん。わかった。」


「俺、魔王呼びでいいと思うけどな。」

「あっ。魔王、話していいよ。……何か悪いね。」


「フン。もう慣れたわ。」


魔王は不敵に笑いながら言った。


「我の要求は一つだ……。貴様ら、我の配下になれ。」


自信満々に、2人は即答した。


「は?君の配下になれ??嫌だけど。」

「断る。」


「えっ?2人とも?!」


……………交渉は決裂した。




































































































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