一話 召喚
ーーー「…でさあ、先生のあの顔!マジで傑作だったよなぁ〜。またやろうゼ☆」
「お前は学ぶという事を知らないのか。12回だぞ、生徒指導室に行った回数。そのせいでこんな夜遅くに帰る羽目になってんだろうが。」
「あの後部活も行ったからね。まあまあ、夏休みが終わった初日だし、挨拶回りって事で。私達、先生全員と顔見知りだからね。」
「……はあ。生徒指導の先生、8回目の時には怒鳴る時喉カッサカサになってたし、最後なんて泣きながら死にかけの声で『ぢゃんどじでぐれぇぇ。』って言ってたよな。何かしら思わなかったのかよ?お前。」
「いやぁ〜いい嬉し泣きが見れたねとしか。大体、君たちも加担してるから同罪なのでは?」
「それはなぁ…お前もなんか言ってやれよ…やまね?」
「……?!あ、う、うんそうだね。」
どうやらボッーとしていたらしい。ここ最近、まともに寝れていないからか。
「まあ無理もないか。お姉さん、行方不明だもんね。」
「!谷口!!」
瞬間、山崎は動いた。
「あー今のは流石に私が悪かった墓穴を掘った、全身全霊をもって謝罪しよう。だ、だから…………喉元に鍵をめり込ませないで下さい。…地味に痛いっす。」
「謝る相手は俺じゃなくやまねだろ。」
「ありがとう聖亜くん。僕の代わりに怒ってくれて。でも谷口くん痛そうだからもうやめてあげて。」
そう言われ山崎は渋々、谷口の喉元に若干めり込んでいた鍵をズボンのポケットにしまった。
「改めてだけどごめんね。やまねちゃん。」
「出来ればちゃんで呼ばないで欲しいな。うん、大丈夫。それよりも喉は平気?」
「それよりで済ませるなんて、相変わらず本当に天使だな全く。ちょっと待ってね。」
谷口はスクールバックからスマホを取り出し、写真機能でまだじんじんと痛む部分を撮り、写真を眺める。
「相変わらず、この道は街頭がほとんど無いな。しかも今日、新月で月の光もないからか分かりづらいというか見にくいなコレ。拡大してっと…………あ!やまねちゃん見てよ!やっぱりめり込んだ部分の肌の色が変色してるよ?!山崎の奴どんだけ力入れたんだよ。このままだといつか人死にが出る…………………ん?………あれ??」
違和感。いつもなら真っ先に聖亜が私に反発してくる筈。改めて、暗い中辺りを見渡した。
「……………2人とも何処行ったの?」
さっきまで一緒にいた佐藤やまね、山崎聖亜の姿が無かった。
「…まさか、迷子になったとか道を間違えたとか?」
一番可能性の低いパターンを1人呟く。ここの道は一本道であり、分岐点は無い。迷子だった場合、各々携帯は持っている筈だから連絡してくるだろう。だがこんな一本道で普通迷うか?
「山崎君とかだったら迷うかもな。あいつ方向音痴だし。」
自身を落ち着かせるように独り言を言う。そんな時だった。
「ちょっ、何だコレ?!?!」
自身の足元の周辺に赤黒い魔法陣らしきものが展開し、瘴気の様なものが谷口馨の体を包み込む。
「逃げ……」
瞬間に悟った。あの2人もおそらくこの魔法陣らしきもので何処かに連れ去られたのだと。そしてあの2人でも回避できないのなら、私が逃げる事は不可能なのだと。
「ああ、クソッタレ。」
そんな愚痴を言いながら夜の暗闇に溶けるように消えていった。
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