第2話 森の中 side she

 目を開けると森の中。私は空き地に転がっていた。

「ちょっと一体、どうなってるの?」

 そう呟いても答える声はない。

 意味がわからない。体中が痛い。見渡せば直径10メートルほどの明るい空き地。けれどもその外は高い杉の木がバラバラと生え詰まり、薄暗く沈んでいた。いつもの癖で首に手を当てて金属的な感触に気づく。そして思い出して焦る。

 今は何時!? この明るさと影の伸びからすると、おそらく15時頃?


 そうだ、持ち物の確認だ。

 思い出し、急いで足元に置かれていたスポーツバッグを開ければ1番上に私のスマホ。その下には見覚えのないのこぎり、スコップ、電動ドリル、モンキーレンチ、バール、バケツ、その他工具類がぎっしりと詰め込まれていた。それからバッグの隣に金属探知機、転圧機、と測量機。土木作業に使うようなわりと見慣れた機材。

 どういうこと? それよりタイガは?

 急いでタイガにコールする。けれども繋がらない。コールもしない。

 表示を見れば電波がない。

「意味がないじゃない!?」

 思わずそう叫んで、それでもスマホを調べる。

 これがこのバッグに入っているっていうことに、きっと意味がある。苛立ちで震える手のひら、いいえ、恐怖? 何かないかフリックすれば見慣れないアイコンがあった。トランシーバー?

 開くと1つだけアドレスが表示された。5コール、10コール、15コール。そこで切られた。何? どういう状況? 画面の表示は15:32。日没はいつ?

 改めて周囲を見回す。高い木々に遮られ、人工物は見えない。

 ここは森? それとも山? 何もわからない。


 チリリリリ


 着信だ。慌てて取る。

「誰!?」

「ミキか? タイガだ」

「タイガ? よかった今どこ?」

 聞き慣れた声にようやくホッとした。

「わからない、狭いところに閉じ込められている。身動きが取れない。そっちはどうだ」

「空き地にいて周りは森。ぱっと見、獣道もなさそう。バッグがあってのこぎりとかが入ってた」

「のこぎり? 他には?」

「電動ドリルとかスコップとか。バッグの他に金属探知機と転圧機と測量機がある」

「転圧機? なんだそりゃ」

「工事現場とかで地面を固めるもの? ダダダって振動するやつ」

 そういえば、これらは建築に使う機材だと思い起こす。

「その中でミキが使えるものは?」

「測量機以外なら使い方はわかる」

「地面関係ばかりだな。俺は恐らく土の中だ」

「ちょっとまって、どういうこと!?」

「そこは空き地なんだろ? 多分そのどこかに俺は埋まってる」

「どこかって!」


 地面を見渡す。直径約10メートル。手当り次第に掘れということ?

 絶望。無理だ。ここがもし山だとしたらあと、2時間もすれば日没の可能性がある。山の夜は早い。いや、金属探知機がある。

「そこは金属?」

「真っ暗でわからないが、待て。鉄か?」

 鉄、鉄なら調べられるはずだ。

「わかった。金属探知機で探す」

「電池が心もとない、1回切る、その前に確認だ」

「確認?」

「俺たちは絶対生き残る。いいな」

 タイガの声は力強かった。勇気が湧く。

「もちろん」

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