第13話 冒険者サンの扱い。
「き、キミ、Fランクだよね……? この依頼は、失敗を経て、少しずつ難易度が上がって、今じゃAランク以上推奨だからね。恥をかく前に、やめた方が……」
ローブ姿の俺、【駆け出し冒険者ブリアン(仮名)】に対して、ギルドの受付である美人お姉さんニーナさんは、苦笑いしながらそう断った。
アレクからおススメを受けた街道の魔石除去の依頼は、数多の冒険者の依頼失敗を経て、気がつけば、高難易度クエストになっていたのである。
……つまり、早速、壁にぶち当たった!! ピンチっ!!
ここに来て、俺のレベルが低いのが裏目に出るなんて……。
「おいおい、あのヒョロガリ初心者はとんでもねえ馬鹿だな」
「ちげえねえわ。世間知らずがいると、俺たちまで勘違いされるからやめて欲しいもんだ」
「ホント、あういうアタオカ野郎は洗礼のためにもぶっ飛ばしといた方がいいか」
周囲で酒を嗜むイカつい先輩方は、俺への非難を繰り返した。殴らないでね。
……アレ? てか、僕ちん、ローブで身分を隠してもディスられてない?
まあ、良い。これは社会勉強。
いきなり高難易度を選んだら、この様な仕打ちを受けると分かったから。
仕方ない、それならば、少しずつコツコツとランクを上げて、この依頼に相応しい所まで……。
そう思って、「あはは〜。ま、間違えちゃいました〜」とか、取り繕いながら撤退しようとする。
ーーだが、そんな時だった。
「ちょっと待ってくださいっ! その依頼、彼と一緒にアタシが受けますっ!! 」
背後から、自信満々な声が聞こえる。
……小さな身体で胸を張っていたのは、紛れもなくリゼットだった。
付いてくるなと言ったのに、来やがった。
……しかし、彼女が登場すると、先程まで困り果てていたニーナお姉さんの表情は柔らかくなって行った。
「アナタだったら、出来るかも。以前より、ハイランクの冒険を達成しているし、何より、この前、伝説のドラゴンの群れを単騎で討伐した"ギルド1の実力者"なんだからねっ! 」
とてつもない信頼感。
……てか、今、ドラゴン討伐って言ってたな。俺は、そんな国家からすら狙われそうな事実を隠す為に、破棄した筈なんだが。穏やかに暮らしいたいし。
この従魔、コッソリ依頼書を復元して、勝手に達成報告をしやがったな。それに、会話から察するに、前々から危険な冒険を続けていたくさい。
それを象徴する様に、ギルド内からは歓声が湧き上がった。
「すまん、嬢ちゃん、頼むわ!! 最近、酒の値段が上がって困っていたんだ!! 」
「私たちも、生活が厳しかったのよ」
「ハァハァ……。リゼットたそ、ロリで魔族で最強とか、典型的な萌えキャラでござる……」
手のひらを返した様な、態度の変化。俺を置き去りにして。
てか、最後に背筋が凍る様な声が聞こえた様な……。
本当は、依頼達成時に俺が受けるはずだった賞賛の声。
主役の座は、完全に俺のダメイドに奪われた。
対比する様に、背後からはヒソヒソ話。
「……あの駆け出し、身の程知らずね」
「リゼットさん、優しすぎるわよ。だって、あんな弱そうな人を庇うなんて」
何故、俺はいつも批判されるんだ!!!!
もう、やめてくれ!!!!
……しかし、そんな風に次第にバッシングへと変わって行ったギルド内の雰囲気に痺れを切らしたのか、彼女は熱くなった。
「アナタ達は、間違っています!! だって、アタシはこの方の従……」
当たり前の様に真実を語ろうとし出すリゼット。
……今、ペテロだと打ち明けられるとマズイ。
こんな幼気な魔族を隷属してるとバレれば、以前よりも、更に悲惨な扱いを受けてしまう。
故に、慌てて彼女の口を押さえると、「で、では、行って参ります!! 」と、上ずった声でニーナさんに告げると、逃げる様にギルドから飛び出した。
……マジで、世の中は世知辛い。
などと、一瞬だけ心を折りかけながら、俺は不覚にもリゼットの地位を借りる形で魔石除去の依頼を受ける事になったのであった。
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