肆話 デアイ

転送された先は、どこかの建物の個室の中だった……やまねは辺りを見渡す。


(普通の部屋っぽいな。)


一人用のベットがあり、本棚、机と椅子、照明、何かのインテリアもあった。


(とりあえず…情報を整理する前に、)


「…ふっ!」


本棚を持ち上げて、ドアの前に置いた。これで誰も入ってこない。


「……よし!」


椅子に座りアイコンをタッチして、自身が今持っているアイテムを見る。


(えっ、回復薬が一個だけ?確か、プレイヤー全員に武器が配布されているはず…だよね?)


いくら探しても、アイテム欄から武器を発見する事はできなかった。


(まさか、バグ?僕だけこうなってるんじゃ…)


武器がない以上、外に出るのは危険だ。これはデスゲームだ…確実に殺される。


(…っそうだ!ステータスを見て見よう。)


この絶望感から少しでも逃避する為にやまねはステータスを開こうとした途端、本棚ごとドアが破壊された。


「えっ!?」


そこから大柄の赤茶色の鎧をつけた黒髪赤目の20代程の大男が入ってくる。やまねは椅子から立ち上がった。


「コイツでここは最後か。武器を構えろよ、オメエ。」

「あの、僕……武器持って無いんですけど。」


正直に告白した。大男はゲラゲラと嗤った。


「へぇ〜そうかい。」


「はい。ですので、」


「……都合が良いなぁ!!」


話を遮り、大男の大斧がやまねの頭をカチ割ろうと迫る。


「……っ!?」


咄嗟に避ける。


「やるなぁ……ってオイ!?」


急いで、窓に向かって体をぶつける。ガラスが割れ下に落ちていった。


男は下を見る……ここは五階。普通の人間なら即死だ。


「……アイツ、マジかよ。」


着地に成功し、その場から逃走している姿が見えた。


「は、はは、面白え。絶対この俺様が殺してやるよ。」


男は部屋を後にした。


——やまねはただ、走る。


(とにかく、あの場から離れないと。)


何故か、ここに来てから体の調子が良い。

数分後、立ち止まった。


(あそこのコンビニに入ろう。)


どうやらゲームの中でもお腹はすくらしい。やまねはコンビニに入る。


(とにかく、食べ物を……って!?)


先客がいた。すぐに逃げようとして、声をかけられる。


「…大丈夫や。あんたを殺すつもりはあらへん。食べ物が欲しいんやろ?ほれ。」


おにぎりを投げてくる。やまねはキャッチした。


「…食べ物を投げちゃダメですよ。」

「まあ、そうでもせんとあんた、逃げてしまいそうやったし堪忍な?」

「…………。」


緑髪のストレートヘアで、同い年くらいの女の子だった。ラフな格好をしていて、腰にナイフを装備していた。


「あたしは、『ナツサ』いうねん。あんた名は?」

「僕は佐藤…むぐ!?」

「…っ!?駄目や!!。そうルールに書いてあったやろ!!」


口を手で塞がれながら、無言で頷いた。それを見て、ナツサは手を離した。


「…すみません。色々あって、気が動転してました。」


「まあ、無理ないわ…ここで立ち話はなんだし、うちらの拠点で話そか?」


「…えっ、いいんですか?」


うんうんとナツサは頷き、やまねの手を握った。


「あたし達だけじゃ寂しかってん。ほな、行こか?」

「は、はい。」



そうしてやまねは一緒にナツサの拠点に向かう事になった。



































































































































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