第11話 ≪掲示板≫まとめスレ と 生徒会
【探索者に】ダンジョン攻略について語るスレ. 242【漏れはなる】
456:名無し探索者
なぁ? おまんら例のお知らせ見た?
457:名無し探索者
見た見た、十三英雄直々の第十層立ち入り禁止令だろ
458:名無し探索者
一体どこのドイツだー! やらかした奴!
配信企画考えてたのに潜れねーじゃネェカ!
459:名無し探索者
つか一時封鎖ってどういうことだよ
これまで何ともなかったじゃん!
460:名無し探索者
なんでも学園側の管理してたボスモンスが殺されてたらしいぜ。Dニュースですっぱ抜かれてた
461:名無し探索者
マジ? 10層って迷宮エリアだろ。
アカデミーがボスモンス管理してたんじゃねーのかよ
462:名無し探索者
それが深層から現れたボスモンスが、階層ボスぶっ殺しまくって地上を目指してたって噂だぜ
たまたま居合わせたやつがミノタウロスを倒したらしい――URL
463:名無し探索者
うおっ! マジじゃん。なんかすげー強そうなの映ってる!
464:名無し探索者
つかコイツ等どっかで見たことあるような
465:名無し探索者
けど、不安だな。この間記念式典があったのにダンジョンで異変なんて
466:名無し探索者
そういえば前にもこんなことなかったけ
467:名無し探索者
ああ、魔王軍侵略な。
いまの亜人系のボスモンスは一階層に一体だけど昔はよく出ていたらしい
468:名無し探索者
え⁉ ってことはこの化け物もその前兆ってこと
469:名無し探索者
わからん。でもその可能性は捨てきれん
470:名無し探索者
なにせ100年かかってようやく40階層まで到達しているだしな。
そこからダンジョンの解明は進んでないし、何があってもおかしくない
471:名無し探索者
明星チャンネルな。おれ毎日動画見てたけど、やっぱすげぇよ英雄十三家は
レベル60の化け物も物ともしないんだぜ!
472:名無し探索者
つーことは、それじゃ10層の化け物倒した奴、
実質的に世界を救った英雄じゃん。誰がやったん?
473:名無し探索者
【英雄の剣】って新星パーティーっぽい。本人が公言してる。
英雄十三家の家系で構成された勇者パーティーらしい――URL
474:名無し探索者
マジで⁉ まだ学生だろアイツ等、スゲーな!
475:名無し探索者
さすが十三英雄の血族。俺たちにできないことを平気でやってくれる!
476:名無し探索者
漏れはアキラたんが最強だと思う。異論は認めん!
477:名無し探索者
ああ、【英雄の剣】ね。でもさ、最近、アイツ等の配信面白くなくね?
478:名無し探索者
は? んなことねーからニワカが馬鹿いってんじゃねぇし
最高だろうがよ
479:名無し探索者
いやわかる。なんか強みを理解してないっていうか、ただがむしゃら配信してるって感じだよな。俺ツエー的な感じでさ
480:名無し探索者
だよな⁉ 俺もそう思う。
前はもっとインパクトがあって見どころが満載だったんだけど
481:名無し探索者
いやいや英雄の家系だぜ。たまたまだろ。アイツ等の実力わかってないだけだって
482:名無し探索者
噂ではあのオーク狩りをそそのかしたのが、【英雄の剣】って話
483:名無し探索者
はぁ、それマ? だとしたら外聞的にヤバくね?
484:名無し探索者
マジマジ。コメント欄のIDがそっくりらしい。
485:名無し探索者
そーいやあれだけバズったのに最近見てないな、あのデブ
486:名無し探索者
ああ、あのスライムぽよぽよ配信な。今すげートレンドになってる。
487:名無し探索者
容姿はアレだけど企画の目の付け所は悪くなかったな。見た目はアレだけど
488:名無し探索者
噂では英雄の剣に連れられたって情報あるけど
489:名無し探索者
やっぱあいつらグルでヤラセだったりしてww
490:名無し探索者
おまんら落ち着け。
真相はどうであれ、十三英雄が調査してるんだし、何事もないことを祈ろうぜ
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・
・
◆◆◆副生徒会長――東条マコト視点
「東条様! ダンジョン10層の調査終わりましたであります」
そういって整列する部下のやや上ずった声に、東条マコトは思考の海から意識を引き上げていた。
気になることがあると立場も忘れて熟考してしまうのは悪い癖だ。
どうやら長い間、物思いにふけっていたらしい。
「あの、自分は何かまた不手際をしてしまってでありますか」
「いや、貴君には苦労を掛けると思ってな。小此木リョウコ大佐」
「め、滅相もありません! 十三英雄の≪剣聖≫さまの下で働けて光栄であります! お風呂入りたいなーとか全然思ってないであります!」
三日間、働きづめの同僚の労をねぎらえば、不安そうな表情から一転してかしこまった敬礼が返ってきた。
同じ生徒会所属とはいえ、うら若き乙女なのだから、もう少し馴れ馴れしくふるまってくれてもいいのだが
(まぁ今はそう悠長なことも言っていられる状態ではないのだがな)
そう、ことの発端は3日前。
本来鳴るはずのない緊急アラートが鳴ったところまで遡る。
『第10層――守護区画に襲撃あり』
その知らせを受け、東条は普段の冷静さも忘れて、生徒会室で声を上げていた。
ダンジョン10層といえば、学園が管理している重要施設の一つだ。
強力なボスモンスターが封印されており、そこが襲われたとなれば。学園創設始まって以来の有事だ。
これまで多くの事件を隠蔽・処理してきたが、本来、東条家はアカデミーの秩序を維持するのが役目だ。
剣聖としての責務を全うするため、即座に生徒会を動かし、応援のあった守護区画に駆け付けたところ――すべてが終わっていたのだ。
赤黒くシミのように散らばる肉と骨。
巫女の封印によって維持されいたはずの施設は粉々に壊されており、そこには息絶えたブラッディ・ワーウルフの首が無造作に落ちていた。
それどころか。施設の惨状で敵の脅威度を察し、即座に襲撃者の討伐に駆けつけてみれば、何者かと戦ったと思われる凄まじい戦場跡が広がっていた。
おおよそ、襲撃者の生死は不明。
報告を受けたボスモンスターが使っていたとされる【固有アイテム】が落ちているところから、かろうじて守護区画を襲った下手人が討伐されたことはわかるが――
「それで小此木大佐。貴君の鑑定スキルを使った調査の結果は?」
「はっ! 『放置』された固有アイテムを鑑定した結果。【狂乱牛】ミノタウロスとの結果が出たであります」
「やはりミノタウロスか。間違いであってほしかったのだがな」
噂にたがわぬ伝説の亜人。しかもネームド付き、か。
本来モンスターに名前はない。
しかし稀に【統率者】と呼ばれる特殊個体にのみ名前が付与されていることがあるのだ。
【統率者】は通常のボス個体をはるかに凌ぐ戦闘スキルとレベル。特殊能力を持っており、Sランクの探索者といえど、下手をすれば返り討ちに会う化け物だ。
「予想はしていたとはいえ、最悪の状況だな」
統率者がこんな浅い階層まで現れたこともそうだが、一番はこれを倒した者が誰かわからないことだ。
公的には【英雄の剣】が討伐したことになっているが、その情報は完全な自己申告のため当てにならない。
(もし、これが魔族の襲来の場合、今まで以上に警戒しなければならない、か)
学園が完全管理していた階層で起きた事件なだけに、目撃者もおらず、肝心の調査もダンジョンが破壊しつくされているため要領を得ない。
鑑定に特化した小此木のスキル『天眼』をもってしてもダメならこれ以上調査は無意味だろう。
「守護区画が突破されたというが、守護の警備に当たっていた者はどうなった」
「それが、守護者20人が原形が留めていないくらいに潰されているありさまでして、情報は『見れなかった』であります」
「そうか。では被害者の遺族に補填するように。彼らは護国のためにその身を犠牲にしてでも立派に戦ったのだとな」
副官に調査中止の指示を出し、東条は再び思考の海に沈む。
(やはりこの状況は、近年のダンジョンが活性化が関係しているのか?)
アカデミーの調査結果からも、最近低層にも拘わらず強いモンスターと遭遇する機会が増えているとが報告を受けている。
だとしたら学生だけでは足りない。十三英雄の後継者たちを集め、一度、巫女機関の判断を仰ぐ必要がでてくる。
(よりによって統率者と遭遇したのが英雄かぶれの九頭代家の嫡男とは俺も運がない)
そういえば……
「小此木大佐。件の九頭代家から報告があったが、生徒一名が犠牲になったと聞いていたがそちらの調査はどうなった」
「それが破壊の跡が大きく、生死不明であります」
「生死不明?」
「はいであります。その生徒がここにいたことはわかったのでありますが、見ての通り、配信ドローンもこの通り壊れているものでして、痕跡を終えなかったのであります」
照合すると端末に【真上ミチユキ】という生徒の個人情報が現れた。
醜く肥え太ったという特徴の以外、ぱっとしないステータスだ。
覇気も何にもあったものではないが、たしか編集スキルは優秀だったと記憶しているが、
(少し前に【英雄の剣】と共にいた探索パーティーだったと聞いているが、なぜこの階層に)
昨日、九頭代を焚きつけた矢先に、勧誘でもされたのか。
すると真上のステータスを見たのか。小此木が明らかに不快そうな顔で、画面の男を睨みつけて見せた。
「まったくレベル2の素人のくせに10層にきて何をするつもりだったんだかわからないでありますね」
「そう言うな、今は目立ちさえすれば英雄になれる時代だ。生まれの身分は関係ない。ようはダンジョンで生き残る力さえあればいいのだ」
「ですが東条様――」
「貴君が言いたいことはわかっている。尊ぶべきは血筋とスキルだ」
その絶対性はこの先、時代がどう変わろうが変わらない。
「それに幸いにも英雄十三家の跡取りが無事なのは幸いだったな。マスコミに嗅ぎ付けられれば英雄の血筋に傷がつくところだった」
「ええ、アイツ等はどこから情報を仕入れてくるのか。好き放題書くでありますからね。死んだのが平民の男の方で本当に良かったですよ」
「……そうだな。勇者の家系とは言えこのレベル差で撤退を選べるのなら大したものだ」
その点だけは、素直に感心する。
一学年はスキル持ちが多いゆえに、死に急ぐ傾向がある。
ゆえに今回、九頭代家の嫡男もダンジョンにいると聞いて、もしかしたら助からないと思っていたのだが、
「そういえば彼も貴女のクラスメイトでありましたね、アキラ会長。彼から何か聞いていませんか」
「そんな人、覚えてません」
まさか声を掛けれるとは思ってもみなかったのか。色素の薄いプラチナブロンドの長髪を編み込んだ女子生徒がわずかに感情を揺らして、呟いた。
一学年ながら東条を押しのけ生徒会長に就任した若き【聖女】後継者だ。
今回はその事件性、特異性も相まって、生徒会長として捜査の見届け人として協力してもらったが、
「そうですか。貴女の婚約者と名乗る彼の実力が発揮されたのであれば、この破壊痕も納得がいくと思ったのですが」
東条も九頭代がミノタウロスを倒したとは本気で思っていない。
魔王討伐後、勇者の家系に後継者が現れたことが一度もない。
ゆえに100年間、勇者の【後継者】は今も空席が続いている。
当代の【巫女】の神託では、その特別な性質により『特別な状況下』でない限り英雄スキルに認められることはないそうだが、
「会長、聖女としての貴女に一つお聞きますが、貴女はこんなことができますか」
「≪セイクリッド・ランス≫」
東条の問いに答えるように、何もない空間に最上級スキルが放たれる。
ズドンと神罰の一撃がダンジョンを抉り、その破壊力を物語っている。
(まったく。自分自身の才能を疑う日が来ようとはな)
それこそ、レベルだけで言うのなら東条の方が高い。
それでもステータスだけ見れば、圧倒的な強者なのは西條アキラの方だ。
【ステータス】
<名前> 西條アキラ
<レベル> 17
<ジョブ> 聖女
<ステータス>
最大HP:■272
最大MP:■■56
STR:1243
INT:■456
VIT:3■26
AGI:■56■
MND:■9■9
(一学年でこのステータスか。末恐ろしいな)
≪剣聖≫の【心眼】でもすべてを覗ききれない。
英雄の血族はその出自が特殊ゆえ、命の危機に瀕した時に『覚醒』と呼ばれる現象が起こる。
その万が一が『英雄の家系』に存在するからこそ、一概に九頭代の主張を否定できないのだ。
(あの男が、守護者でも勝てなかったミノタウロスを瞬殺できるものか。それとも本当に勇者としての実力が覚醒した?)
どちらにせよ。ダンジョンに異常事態が起きていることは確かだ。
ダンジョンの再構成も始まってしまったとはいえ、それなりの調査は必要だろう。
聖女の一撃でも『この程度』の破壊しかできないのだ。
もし、奴らの言葉が真実でないとすると――
「我ら英雄では対処しきれないほどの存在がいることに他ならない」
そういって徐々に再生されつつあるダンジョンを見て、東条はわずかに眉を顰め、生徒会の面々に撤収の合図を送るのだった。
―――第二章完結!――
ようやく書きたいことが書けるくらいまで進んできた!
目まぐるしく続く、ミチユキ君の無双物語!
リソースを手にした嫌われ者は、次回どうなるのか⁉
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