第3話 犬と猫

 必要なものは追い追い揃えればいいかと殺風景な室内を見渡すと卓上に場違いな物が存在していた。


 30×15×15程の蓋が山高になった装飾箱。所謂いわゆる宝箱状の箱。その蓋が5㎜程開口し翡翠色をした光点が二つ室内灯の光を反射している。


 隙間から落ち着きなくキョロキョロとしている箱の角から澱んだ煙を纏って見様によっては『犬』ともとれる姿が伸びあがり腐汁に塗れた牙の並んだ顎を広げる。


「待って!待つにゃ!待ってくださいにゃ!」


 蓋を跳ね上げ飛び出した黒い影はふるふると震えながら平伏する。


猟犬ティンダロスを差し向けるのは勘弁してほしいにゃ。サプライズしようとしたのは謝るにゃん」


「土下座で人語で謝罪するは初めて見た。あなたイズ何?」


「身共は夢世界ドリームランド猫の都ウルタールにて『黒色のトムトム・ブラッキー』の二つ名を賜りし黒井トムと申します。使節としてこちらにまかり越しましたがよろしくお願いいたします…にゃん」


「わざわざご丁寧に。まぁ三室戸さんから貰ったリストで知ってはいたけどホントに『ウルタールの猫』なんだ」


「はい!騎士職を拝領しております。におかれましては…」


「あ、ソレ禁止ね。課長・・よ?いいわね?」


「拝命いたしました課長」


「よろしい。では二人目以降の候補を勧誘に行きましょうか」


』だという巨大な顎に三世亜と共に飲まれた三室戸が閉じていた瞼を開けるとそこは一階・・の玄関エントランスであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る