第5話 砂プリン その2

確かにスイーツ売ってそうな店が見えてきた。

この距離でも甘い香りが漂ってくる。明らかに女子が好みそうな香りだと思う。

「いい匂いだな」

黒騎が目をキラキラさせながら言う。こいつも甘いもの好きなのかよ。

そんなことを思いながら店の前に掲げてある看板を見ると茶色地に黄色い文字で『砂プリン』と大きく書いてあった。いかにもって感じだ。

もう少し近づいてみると人だかりができていた。人気で、並んでいるのだろうか。

「人だかりができてるにゃ」

「そうだな」

いつものことなのだろうか、この二人は動じない。

「いや、あれは列じゃないぞ!なにかある!」

とある小学生名探偵のようなセリフを言いながら黒騎は走り出す。そして美月も続く。速い。30メートルもあろうかという距離を5秒で走りきった。防具込みで。

「ま、まってくれ、」

ぼやきながら駆け足する俺。運動神経の無さで虚しくなってくるぜ。

そしてちょっと遅れて人だかりに顔を突っ込むと不思議な格好をした人が立っていた。上半身裸というのだろうか、上半身によくわからないものを身に着け、下半身は黒い長ズボン。言ってもここは異世界だからそりゃみんな変な格好とは言えるのだが、一際目立っている。

「あれは、なんだ?」

思わず声に出てしまう。

「強盗だ!」

黒騎が大きな声で答える。こうなったらやるしか無いのだろうか。

「二人共、久々の戦闘だけど行けるよな」

黒騎が聞く。

「やるしかないにゃ」

美月も元気に答える。

「お、おう」

我ながら情けない返事だ。

こうして俺は異世界にいることを自覚した。

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