第7話 その日
今日最後の授業を受けていた。7限目ということもあってお日様が急に傾いてきた。窓際の席は赤く染まり始めている。先生が授業の解説をずっとしているが、生徒たちは少し疲れてきて教室には気怠い感じが漂っていた。
授業に集中できない私は、窓の外をぼうっと眺めていた。
そうしたら空にいきなりUFOが出た。それも一つではない空を覆わんとするばかりの無数のUFOだ。
きっと彼の星のUFOだ。彼が地球にやってきたときに使っていた大きなものではない。小さいUFOがたくさん空を覆っていた。今まで彼の痕跡が全くなかったので私は興奮した。
私の様子が変なのを前の席の親友が気づいて声をかけてきた。
「どうした。」
「いま、この学校の上空にたくさんのUFOが飛んできている。」
「ほんと? ごめん私には見えない。」
「見えているのは私だけってことなの?」
「どうやらそうらしいね。」
「たぶん彼の星のUFOだと思う。」
そのとき無数にあったUFOがひとつひとつと消え始めた。
「UFOが消えていってる。何だかお別れみたい...。」
しょげる私に親友が声をかける。
「彼はいる?」
「そんなのわかんないよ。」
「もう一回聞くね。彼はいる?」
私はよ〜く空を見上げた。
「あの真ん中あたりのUFOにいる気がする。」
「じゃあ運動場に出て会いに行ってこないと。」
「えっ、今?」
「これ逃したらもう彼とは会えないよ。」
と親友が言った途端立ち上がって。
「先生、親友が気分悪いので保健室連れて行ってもいいですか。」
と言っている。
先生から許可をもらったので、一人で行くことにした。
親友を巻き込むのはよくない。
「頑張れ!」
と親友が声をかけてくれる。保健室に行く人間にかける言葉ではない。でもその言葉は私に勇気をくれた。
廊下や階段の窓からどんどんUFOが消えていくのが見える。もう時間がない。グラウンドに出た時はもうあと少ししかUFOが残っていない。もう自分の思いはこの地球にはないことに気づいた。彼とともに宇宙に行ったのだと思った。
躊躇している暇はない、もう彼がいなくなるのだ。この想いだけでも伝えたい。急いで空に向かって叫ぶ。
「あなたが好きです!」
「いつまでも一緒にいたいです!」
その声はグラウンド側の教室の全ての生徒に聞こえるぐらいの大きなものだった。人生で1番の大声を張り上げた。
ゆっくり目を開けると。そこには夕焼けの風景だけが残っていた。空にはもうUFOはなく。ただただ赤く染まった雲だけが浮かぶだけだった。
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