第5話 シリウス

 そのあとのことはよく思い出せなかった。あとになってただ一つだけ思い出せたことがある。それは自分の部屋で自分の両親が自分のことを抱きしめているときのことだった。あの子と同じように私もギュって両親を抱き返した。


 もしかしたら、このことがあったからであろうか。私の宇宙好き、宇宙でふわふわしたい欲求があるのはこのせいだろうか。これは夢?夢にしては現実味があるし細かい。こんなこと言っても誰も信じてもらえないだろうし、まず聞く耳持ってもらえないだろう。


 かわいらしい幼い頃の記憶として、なんとなく心の隅っこに置いておこう。そうだ、あの子元気かなぁ。私も元気なのだから元気かな?

今ごろどうしているかなぁ。また冬の大三角形を見ながらそんなこと思っていた。そういえばあの子最後に言っていた言葉に「シリウス」があったな。私もシリウス大好きだよ。

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