第16話

それからるなもと話していると、チャイムが鳴ったので、自分達の席に戻った。るなもとの至福の時間を邪魔しやがって、チャイムめ。放送室に行って聞こえないように音楽だけを流すようにしてやるかと、密かにチャイムを鳴らさない計画を建てていると、先生が入ってきた。


「最近は強盗が多発してるらしいから、気をつけろよー。それとアイドルの転校生が来るからなぁー。しかも男で、イケメンだ」


これは新たな智輝のライバルになりかねないやつが来るってことか。智輝と双璧になるイケメンが来たら、るなもに惚れて、アピールしてこないか心配だ。イケメンじゃ俺は相手にならない。


「それじゃ入ってきていいぞー」


すると前のドアから、いかにもキラキラしたオーラを放っているイケメンな転校生が入ってくる。こりゃ智輝と双璧になりそうだ。


「初めまして、向井雄柏といいます。イギリスとのハーフです。よろしくお願いします」


ハーフってことは英語ペラペラだよな。しかもイケメンって才色兼備かよ。イケメンよくだけ散れ。るなもはそんなこと関係なしに、智輝の方を向いてうっとりしている。すると向井はるなもの方に目を向けて一瞬邪悪な笑みを浮かべたような気がした。だがすぐに張り付けた笑顔を振り撒く。あの目はきのうせいか?他のやつは気づいてなさそうだが、もしるなもになにかをしてくるなら、俺が全力で守る。まぁ昨日せいの可能性の方が高いが。


向井は俺の斜め前に座った。するとイケメンスマイルで、早速隣の女子をうっとりなさせた。さすがアイドルだな。惚れさせるのはお手のものか。まぁなにか邪悪な本心を隠しているような気がするが。


それから向井は俺にも軽く挨拶をしたが、どうでもいいようなやつにたいしての適当な挨拶だった。何のプラスにもならないから、そんな感じなんだろう。周りのクラスメイトは気づいてないが、俺は人間観察が趣味なので、興味がないことは分かった。


俺はそんなことを考えながら、向井がいろんな女子に話しかけられているところを見ていた。


そして授業が終わり、昼休みになった。俺は奏の件について、問い詰められる前に、教室を出た。そして屋上に向かう。ここはリア充が少なくて、いい気分で食べれるんだよな。るなもが智輝に好意を向けている笑顔を見るのが辛いっていうのもあるが。


そして俺は奏の作った弁当を広げる。俺と優花は基本弁当までは作らないが、奏は弁当を作ってくれる。正直そこら辺のパンと比じゃないくらい美味しいから、ありがたい。


そしてまずは味噌汁を飲む。うんいい出汁が効いてるな。するとドアがガチャっと開けられた。ここに人が来ることは滅多にない。つまりぼっちだろう。それなら互いに干渉しないから別にいいか。


「あ、遥斗くん」


なんとここに来たのはるなもだった。るなもはいっつも智輝と昼を食べているはずだと思うが。なんか予想外のことでも起こったか。


「るなもこんなところにどうしたんだ」


「いや向井くんがしつこく話しかけてきて、無理矢理向井くんのグループに入れようとしてきたから、逃げてきたんだ。なんかすごい下心を感じたり、恐怖心を感じたから」


やっぱり向井はるなもを狙っているのか。これからも同じことをしてくるだろう。警戒をしておくべきだな。しかも付き合っても不倫をすぐするタイプだろうし。


「それならこれからここで食べるか?智輝はいないが」


むしろ誰もいない方が、るなもと二人きりで嬉しいが。いろんなことを話せるし、いろんなことを知れる。それにもしかしたらあーんをしてみたりできるかもしれないしな。そう想像すると、学園生活がまるで主人公になった気分になる。


しばしるなも指を頬に当てて首をかしげて考えていた。なにその仕草可愛い。美少女は何をやっても可愛いな。他の女子がやったらあざとく見えるのに。


「そうだね。これからも邪魔されそうだし。一緒に食べよう」


よっしゃーるなもとのキラキラした昼休みを楽しめる。これこそ俺が望んだ学園物語だ。神様は俺に味方をしたらしい。何がなんでもるなもは向井から守る。


「それじゃ隣失礼するね。んー風が気持ちいー」


るなもが目を瞑って頬に手を当てて、気持ち良さそうに微笑む。やっぱり天使だ。これこそるなもの可愛さが凝縮されている。やはり天使だな。重要なことだから2回言った。


「屋上だからな。俺のベストスポットだ。奏にも見つからないしな」


「あ、奏ちゃんで思い出したんだけど、遥斗くんとどいう関係なの?二人で登校してるのは知ってるけど、今日はまるで恋人のようだとみんなが言っていたよ。奏ちゃんはみる目ないとも言っていて、それはムカついて反論したけど。魅力たっぷりだよとね」


まさかるなもに魅力のある男だと思われてるのが嬉しいわ。しかも反論までしてくれるなんて、これは俺を好いてくれる日も来るかもしれない。だから勘違いしたまんまは不味いな。好む前に付き合ってると勘違いされてたら、好きになるもんも好きにならなくなる。


「ただの妹だ。ブラコンのな。安心してくれ。俺はシスコンだが、妹を女子として好きになったりはしないから」


「妹なんだねー。でも似てない」


「義理だからな」


いや血の繋がっている遥とも似てないが。俺は父さん似だし。マジで母さん似になりたかったものだ。そうすれば俺もイケメンになれたのに。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る