外国の映画館で幽霊を見た話
日置 槐
【外国の映画館で幽霊を見た話】
私は霊感がない人間。日本では幽霊なんて見たことなかったし、心霊写真とかホラー映画とか怖いもの大嫌い! 出来れば、避けて通りたい。
なのに! なのーに! 見てしまったんです! 外国の映画館で!幽霊を!
でもね、「リン〇」とか「〇怨」とか「仄暗い~」とか、もうありえないくらい怖い!! とかじゃないのです。
幽霊自体は普通の人。なぜだろう。外人だったから?
実は、怖かったのは幽霊じゃないのです。人間なのですよ。
あれはもう二十年以上も前のこと。英国に移住したばかりの頃、何故か周囲に「俺/私、霊感強いのー」って人が集まっちゃった時期がありました。
あれって何なのかな? 私の人生で、あれほど荒んだ(?)時期はありません。なんというか、負のオーラに圧倒されてしまう感じ? とにかく暗いのです。
ラップ現象というか雷!? 突然、部屋にキラっとした色が走ったと思ったら、ラップトップが自動的に電源入って立ち上がったり。夜中にトイレのドアが開いたり、誰か階段を降りる音が聞こえたり。
霊感強い人って、いっつもこんななの!? って驚くこといっぱいでした。一緒にいると霊感は伝染るんです!!
お気楽な私でも「なんとなーく幽霊っているのかも」という気分になってきた頃、決定的な事件が!!
英国は古いレンガ作りの建物を、中だけ改装して使うのですが、当時はまだ設備が古ーい映画館がたくさんありました!
あれは確かオデオン。平日だと格安で映画が観れるのですが、デジタルじゃないし、専門技師もいないので、ピントズレたままの映像だったり、最初の数分は音だけだったり。めちゃくちゃです。
でも、英語できないし、どーせほとんど分からないから、安くて時間潰せればいいやーってノリで通ってましたよ。
そんな映画館なので、一番大きなメインシアターでさえ、平日の昼のお客は10人未満。どこでも座り放題。
なので、もちろん、正面ど真ん中に座ります。ほぼみんなが!
なのに、変な場所に座ってる人がいるのです。私が座る正面中央から見て左斜め前方。スクリーンを見上げる位置です。見にくいよ。
一回目に見たときは、「あんなとこ見づらいのにー」と思ったのですが、映画が始まる前にいつの間にかいなくなってました。
そりゃそうだ。ガラガラなんだから、見やすい席に移動するでしょ。座席指定でもないし。
次にまたその映画館に行ったときも、やっぱり同じ場合に誰か座ってる。「定年後のおじいちゃんがいつもこの場所に一日中暇つぶしで座ると決めてる席とか?」
そう思って、そのときは納得。やっぱり映画スタートする前にはいなくなってました。
さすがに三度目となると、私も変だなーと思ったのです。正面に座った瞬間に目の端に見えるのに、改めてそっちを意識して見たら、もう誰もいない。
あれ? あれ? あれ?
だから、映画が終わった後に、一緒にいた元彼に何気なく言ったのです。
「私、ここに来る度に、あそこに誰か座ってるように見えるんだよねー」
霊感の強い元彼、それになんて答えたと思います?
「なんだ、見えてたんだ」
?!?!?!!?!!?!?!! おーーーーーー !?!?!?!!?!?!!?!
私には一瞬しか見えないけれど、元彼にはバッチリ見えていたと。でも怖がらせちゃ悪いと、黙ってたそう。
まじで? 釣りじゃなくて?
それ以来、あの映画館には行ってないし、元彼と別れて以来、もう15年以上幽霊は見ていない。
恐るべし元彼。あやつの霊感、こんな幽霊大国じゃ生きにくいだろうなーと思う。
そして、私は今の「霊感の
なんというか、元彼怖かった。別れるときにすったもんだあって、「死んでやるー」ってナイフ持ち出されたりしたが、無事に別れられて良かった(←え、この状況を無事と言うのか? 笑)
私、霊感あっても別にいいと思う。映画館の幽霊は無害だった。
でも、元彼は有害だった。
人間、怖いーーーー。
外国の映画館で幽霊を見た話 日置 槐 @hioki-enju
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