50マイルまでの永久.

 憎いと思ったわけじゃない

 悪だとなじった訳でもない

 社会に属することが許せなかったからだ

 何故僕は汚染されないといけないのか

 何故僕は大人にならないといけないのか

 何故僕はお人形のような存在に成り下がらないといけないのか

 その理由がわからぬまま

 一人

 自問自答し、悩み地獄に落ちた

 地獄の番人から

 「ここは君の来るべき場所じゃない。天国までは遠すぎる。50マイルもあるぞ」

 天国に行くための翼を地獄の番人に頼って授かり

 "永遠の翼"を肩に生やした後、僕は天国へと向かうことにした

 鳴動するのね―――

 そう言って、地獄から笑って手を振った少女由真の顔は

 天国にいる天使みたいにあどけなく優しい表情をしていたのだった

 「僕はここに居るべき人間じゃないそうだ」

 分かった―――じゃあね、社会に染まらなかった

 無音の時よ

 Time to say goodbye, ash.

 やがてパイプオルガンの形状をした通路が出来て

 僕は上へと飛べた

 飛べるんだ

 奈落の底にしか行けないものだと信じていた

 社会の悪を知り過ぎる偽善者には

 地獄がお似合いなのだと信じていた

 違うのか―――

 その女性の顔は綻び、勇気ある笑顔に満ちていた

 最果てなる虚構に満ちた僕の人生と言うSynalioに

 一つだけ揺れる桜

 一枚ひとひらのケータイの画面

 依存した自己

 神は言った.

 「君は何が欲しい?」

 「永遠に生きていく為の精神の巣」僕は言った.

 「良いだろう、天空にはそんなものは無いが、君が君を心から見つめ続ければ一瞬一瞬を永遠に感じられる筈だ、それは、君の君自身からなる生命だ」

 多分...現実までは50Mileほど有るだろうか.

 遠いのは距離には測れない目線.

 長いのは影のような永久.

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