〈Racitation.〉Reach at the sky.

Dark Charries.

Cowbellと少年。

 ロバを引いて歩く少年は

 白山羊の毛並みの近くに佇んでいる少女を目にして言った

 「君はどこへ行くの?」

 少女は細い足を組んで山羊を優しく撫でて言った

 「遠い湖のほとりにある水を汲むの。行くためにはコインが必要」

 「コインを稼ぐには生き様が必要?」

 「列車に乗るの。生き様は途中の地獄の間だけ」

 少女はため息を吐いた

 「貴方はどこへ行くの?」

 「遠い遥か雲海のかなたを見下ろすためにどこまでも歩く」

 「そのコンパスみたいな足が、いうこと聞くのに何が必要?」

 「パンと水筒の水、そして生き甲斐かな」

 「面白いこと言うのね。話したい」少女は言った。「生き甲斐には何がいるの?」

 「1マイルほどの道のりを曳いて歩くだけの意志かな。君は?」

 「列車が来た」

 そういうと、煙突に蒸気が充満している機関車が到着した

 「君の言う天国へ行くにはどの程度道があるの?」

 「ううん、道はない」

 少女は笑った。「本物の天国だったら良いね。50マイルくらいは要るんじゃない?」

 そう言って微笑んだ。

 その笑顔には、焦りや苛立ちはなく

 富によって純粋培養されて生きただけの

 価値があった

 「バイバイ、アディオス」

 少年は言った

 「会うときはきっと魔法がある」

 「どんな魔法?」

 「一筋の気持ちいい凪とか」

 追い風が吹く

 列車の窓は開いていた

 駅員が切符を切りに来る

 窓から花びらが落ちてくる

 「あら、駅員さん。この花びら何ドル?」

 「君の笑顔だけあればいい」

 そう言って駅員は切符を切った

 「あたしは笑わないわ、悲しい事の始まりだから」

 「片道切符で、どちらまで行かれますか?」

 「この世から最も遠い場所」

 「貴女は朽ちて行くのですね、生きた時の思考も、肉体も、精神も」

 窓から見たら、ロバを引いて歩く少年が視えた

 少女は手を振った

 少年は遠くを見つめていた

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