027 みんなで幸せになろう

「⋯⋯なんだルドルフ。 俺に頼みってのは?」

「ジークも貴族になる! なら第二夫人くらい居てもいいだろう!」


 そういう事か──!

 ちくしょう! 嫌な予感がしてたんだ!


「え? ジーク君が貴族に!?」

「そうなんですミルナリア。 このジークは素晴らしい功績で、このたび叙爵することになったのです!」


「おい、ルドルフ! それ今関係ないだろ!?」

「関係あるさ。 平民が重婚など許されんが貴族には尊い義務だよ」


 ⋯⋯てめえルドルフ! 貴様だってまだ独身じゃねえか!


「それとこれとは関係が──」


「ねえジーク君! 親の私が言うのも何なんだけど、娘のリニアってあなた好みの肉付きの良いカワイイ子だと思わないかしら!」


 親の義務はどこ行ったミルさん!

 コイツ⋯⋯ここぞとばかりに俺にリニアを押し付ける気マンマンじゃないか!


「困ります! 俺やっと好きな人が出来て結婚が決まったんです! それなのにリニアまでとかになったら、イリーナにフラれます!」


 とにかくなんとか断らないと俺の人生が!


「イリーナ様の方なら気にしないだろう。 彼女はそういう教育を受けてるハズだしな」


 う⋯⋯そう来たか。

 たしかに王族だったイリーナは嫁いだ先で旦那が第二夫人を取る事もあるだろう。

 それで文句を言えばいろいろ厄介になるような家柄だったりする。


 つまりイリーナの淑女教育には重婚を許容することが前提という事か!?


「⋯⋯でもなあ」

「イリーナ様なら側室を排除するよりも、増えてもコントロールして主人の利益を考えるよう教育されているハズだ」


「あのジーク君。 あなたが結婚するイリーナって、この前の銀髪の?」

「はい、そうです」


「⋯⋯たぶん大丈夫ですよ。 イリーナさんとウチの娘は仲良さそうだったし!」


 ミルさん⋯⋯リニアを手放すチャンスと思っていい加減なことを⋯⋯。


「それでもです! 俺はイリーナだけ愛してますから!」


 そんな俺の肩にポンっと手を置くルドルフは⋯⋯。


「まあ結婚というのは冗談だ。 ようはミルナリアが安心できるようにいいのさ」


 そう今更正論ほざくルドルフだった。


「まあ俺もイリーナと心置きなく結婚したいから、リニアは必ず一人前にしますけどね!」


 自分でも無理くさいとは思うがこう言うしかなかった。


「ジーク君。 どんな方法でも構いません、リニアの事⋯⋯よろしくお願いします」

「頼んだぞジーク! 僕とミルナリアさんの未来の為に!」


 どちくしょう!

 まったくお似合いだよ二人ともさ!


 こうして俺はリニアとの結婚をどうにか回避したいと考えつつ、イリーナの待つ家に戻るのだった。




 そして家に帰った俺にイリーナが──。


「おかえりなさいませジーク様。 ところでこのリニアを側室にしませんか?」

「はい? 何でそうなるイリーナ!?」


 イリーナ! お前もか!?

 何だってんだよまったく。


「イリーナさん! 私は別におっさんと結婚したいとは言ってないです!」


 どうやら俺の留守中に、この二人の間で何かの話し合いがあったらしい。


「⋯⋯どういう話でリニアと俺が結婚なんて話になったんだ、イリーナ?」


「先ほどリニアさんと、お・は・な・し・しましたが、このリニアさんもまた6歳の頃からジーク様を想って生きてきた、いわば私と同志だったではないですか!」


「どういう事、リニア?」


「⋯⋯いやあのね。 ⋯⋯おっさんさ、6歳くらいの時に虐められているハーフエルフの女の子助けた事あったでしょ? 泥だらけになって喧嘩して」


「⋯⋯あるけど。 ⋯⋯じゃあ、あの時のおとなしい子ってリニアなの!? 嘘だ──!」

「あれからもう20年以上たってるし変わりますよ! 女の子なんだから!」


 ⋯⋯マジかよ。

 まったくイリーナもリニアも大人になって、おっぱい大きくなりすぎて見分けがつくかよ!

 とくにリニアの場合は、あの頃は髪が長かったから今のショートカットだと印象がまるで違うし。


「私も6歳の時からジーク様を想って生きてきました。 リニアさんの胸の内は私にはよくわかるんです! それを私が邪魔するなんて出来ません!」


「じゃあ何か! イリーナは自分の代わりにリニアと結婚しろと言うつもりか?」


「そんなわけありませんよ! たとえリニアにだって私はジーク様を譲る気はまったくありません! ⋯⋯でもジーク様は貴族になりましたし側室くらい居てもいいとは思ったんです」


 ⋯⋯ルドルフ、お前の読み通りだったよ、チクショウ!


「イリーナはそれでいいの? 俺がリニアとも結婚しても?」

「ジーク様はリニアさんのお胸も大好きでしょう?」


 ⋯⋯そんな冷静な目で言わんでくれ!


「あのイリーナさん? やっぱ私はいい──」


「リニアは黙ってて! 私にはわかります! ここでジーク様にお情けを貰えなかったリニアさんは将来ロクでもない男に騙され貢がされ、夜の街へ⋯⋯ヨヨヨ」


「いや、リニアの方が男をだまくらかして貢がせる気が⋯⋯」


「ジーク様! リニアがそんな器用な人生を本当におくれると思っているのですか! 無理に決まっているじゃないですか! 絶対無理です! 男を手玉に取った気になって調子に乗ってそのうちポイされるに決まってます!」

「⋯⋯そうかも」


「あんたら二人とも⋯⋯私をなんだと⋯⋯」


「「他人に寄生するしか考えないクズ」」


「ですよね──! 畜生! その通りですよ──!」


 こうして俺たちは本当に言いたいことを言いつくす。

 それは時に罵倒し合うような本音をぶつけるものだった。


 そして⋯⋯。




「これからは私たちと一緒に生きていきましょう、リニア」

「うん! イリーナさん!」


 ⋯⋯なんでこれで友情芽生えてんだよ、イリーナとリニアは!

 これもう、なし崩し的に俺が重婚する前提じゃないかよ⋯⋯。


 そもそも俺はこれからイリーナのおっぱいさえ堂々と揉めればそれでいいのだ。


 じゃあリニアのおっぱいも毎日揉めたら⋯⋯。

 ⋯⋯アリだな!


 右手にイリーナのおっぱい!

 左手にリニアのおっぱいも!

 左右同時に揉みまくりなハーレムライフの完成だ!


 ⋯⋯なんだか間に挟まる俺はいつか刺されて死ぬかもしれんが。


 でもそこまでおっぱいに包まれた人生ならいつ死んでも後悔は無いのでは?

 うん無いな。


「⋯⋯じゃあリニアはこれからは俺におっぱい揉まれてもいいんだな?」

「サイテーな言い方っすね。 ⋯⋯でもいいです。 いっぱい揉んで⋯⋯クダサイ」


 あれ~、リニアってこんなに可愛かったっけ?

 そうか普段の生意気ムーブは誰にもおっぱいを見せない触らせない心のバリヤーだったのだろう。

 それがオープンマイハートになるとこうも素直ないい子に⋯⋯。


 俺はギャップ萌えというものの恐ろしさを思い知る。


「ジーク様! もちろん私の胸もいつでも好きな時に揉んで構いませんからね!」

「私は出来れば人前ではちょっと⋯⋯」


 よくわからんがこのふたりにここまで言わせたんだ。

 男の俺にも誠意というか決意が要るだろう。


「わかったよ。 ふたりがそれを望むのなら俺は⋯⋯絶対にふたりとも幸せにして見せる!」


「ジーク様♡」

「おっさん♡」


 ⋯⋯きっと苦労するだろうな、このふたりと暮らす人生は。

 でもそれに見合うご褒美はもう貰っている。


 イリーナのロイヤルおっぱい。

 リニアのナマイキおっぱい。


 それを自由にできる人生が悪いわけがない!


「じゃあ結婚するか、俺たちで」


「「はい!」」


 こうして俺たちは思わぬ人生設計を描くことになった。




「ところでリニアに言っとくことがあるんだけど⋯⋯」


「え? もしかしてもう今夜からっすか!? イヤイヤ私は嫌じゃないけど、そこは正妻のイリーナさんから先に可愛がってあげてください!」


「⋯⋯イヤそうじゃなくてさ。 お前のお母さんのミルさんなんだけど⋯⋯再婚するかもしれんぞ」


「は~あ!? あのババアが! 父さん死んでまだ2年っすよ! ⋯⋯で、誰と?」


「ルドルフと」

「⋯⋯ああ、納得した。 ああいう『子犬みたいに頼ってくるタイプのやさ男』母の趣味だからなあ⋯⋯。 正直死んだ父さんと似たタイプだと思ってたから、すご~く納得した」


 ミルさん⋯⋯。

 仕事出来て立派な人だと思っていたんだがどうやら『駄目人間製造機』だったらしいな。


 ルドルフも結婚したら今後は堕落していくのだろうか?

 だが俺は堕落などせんぞ! もう十分堕落ライフなんだからな!


 でもイリーナとリニアの二人だけは幸せに支えていくのだ!


 こうして俺とイリーナとリニアの結婚と⋯⋯。

 ルドルフとミルさんのお付き合いが始まるのだった。

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