014 幕間「私のエロい師匠とちょっと怖い姉弟子」(リニア視点)
「起きなさい! リニア!」
「ふえ~ん⋯⋯あと5時間⋯⋯」
そんな寝言を言ったカワイイ私に乱暴者の母のゲンコツが落ちた。
「いった~い!」
「痛いじゃありません! いま何時だと思っているのですか!」
そんな母の言葉で私は今の時間を探る。
⋯⋯お日様が眩しいな、こう見えて私は太陽が好きだった。
「10時くらいかな?」
「11時です」
あー、また寝坊したか⋯⋯。
まあ仕方ないよね、朝は眠いし。
「リニア⋯⋯あなた今日で何回目の遅刻⋯⋯いえサボりですか?」
「まだサボってないよ。 今からギルドに行けばまだ遅刻だし」
私は悪くない、そうだギルドの仕事が朝早すぎるのがいけないのだ。
私は夜型なのだ、朝働くなんて不可能なのだ。
「もう来なくていいわよリニア」
「じゃあ今日はお休み! ラッキー!」
「⋯⋯今日からずっとお休みですリニア」
「⋯⋯⋯⋯それってどういう事、お母さん?」
「もうあなたはクビです。 明日からは約束通り娼館に行ってもらいます」
「ははは⋯⋯またまた御冗談を」
「⋯⋯」
「冗談でしょ? お母さん?」
「娼館送りが嫌なら冒険者にでもなるしかないわね」
その真剣な物言いに、これが母の本気なのだという事が伝わってくる⋯⋯。
どうしよう⋯⋯。
娼館は嫌だ。
エッチなことは⋯⋯まあ多少興味はあるけど、やっぱり初めてはその⋯⋯お仕事なんかじゃなくて初恋の人としたいな⋯⋯て。
でも私の初恋って誰なんだろう?
あの時のあの男の子はどこにいるんだろう?
ふとこの時、私は思った。
そうだ⋯⋯冒険者になればあの少年と再会できるかもしれない⋯⋯と。
心の中のあの少年も今では大人のハズ⋯⋯つまり今頃は冒険者になっててもおかしくない?
「母さん! 私、冒険者になる!」
「⋯⋯それ本気で言ってるのリニア?」
「もちろんです母よ!」
「剣も握ったことのないあなたが?」
「だって家に剣がないんだもん」
私の母は格闘家で死んだ父は神官だったらしい。
そんな理由で我が家には武器としての刃物が無かった。
「私はハーフエルフだし! きっと魔法の才能があるわよ!」
「私の子なのに?」
⋯⋯母はほとんど魔法が使えない珍しいエルフだった。
その辺が理由で街で暮らすようになったらしいけど。
「でもお父さんは優秀な聖職者だったんでしょ? じゃあ私もその才能の半分くらいはあるし、お母さんの方の才能はほら隔世遺伝で⋯⋯」
しばらく沈黙があった。
「⋯⋯本気なのね? 魔法を覚えて冒険者になるのね?」
「うん!」
「⋯⋯はあ。 本当にこれが最後のチャンスよリニア。 これがお母さんがしてあげられる最後なんだからね」
最後か⋯⋯。
「わかった」
「なんとしてでも一人で生きていけるようになるのよリニア。 ⋯⋯あれだけ元気だったお父さんがあっさり事故で死んじゃったんだから、私だっていつまでもあなたを養えるとは限らないのだから⋯⋯」
こうして母は一通の手紙を書いてくれた。
それは後に、私の師匠となる賢者ジークへの手紙だった。
そして私はその手紙を持って賢者の元へと旅立ったのだった!
⋯⋯遠い!
歩くとめっちゃ遠いんですけど!
地図を見ながら歩くが本当にこの道であっているのだろうか?
もしかして母は私を本気で捨てたんだろうか?
そんな不安を抱えながらやっとたどり着いたその賢者の家は⋯⋯ピンク色の明かりが灯っていた。
とりあえず驚いたのはあのSランク冒険者『陰魔のジーク』が弟子を取っていた事だった。
いや確か初対面のとき、そんな事言ってたような気はしたが⋯⋯その弟子がこんな綺麗なお嬢様だとは思わなかった!?
ヤバイ⋯⋯このおっさんに見捨てられたら、私はもうもう後が無い。
最初はこのスケベそうなおっさんに、胸でも触らせてやればなんとか言い含められるとか考えていたのだが⋯⋯。
もしもこんな綺麗でおっぱい大きい人と毎日イカガワシイコトやってるとしたらどうしよう!
この私の
「⋯⋯まあミルさんには世話になったしな」
こうして本当に首の皮一枚のお情けで私はここに置いてもらえることになったのだった。
母さんのおかげか⋯⋯。
こうして離れて初めて毎日当たり前に享受していた母の愛情を感じるとは思わなかった。
ここで頑張って冒険者になろう。
そしてあの街のギルドでいっぱい仕事して、その姿を母に見せたい。
そんな目標が私の中に生まれたのだった。
そんな崇高な私の目標が無くなるかもしれない⋯⋯。
まさか賢者の魔法の授業がこんな全裸になるセクハラだとは思いもしなかった!
まあ多少は指導の過程での不自然なボディタッチくらいは覚悟していたけど⋯⋯こんな露骨にセクハラかますおっさんだったとは!
しかも姉弟子であるイリーナさんは迷うことなく全裸になる潔さっぷり!?
すでに洗脳済みで調教済みだった。
「まあ疑うなら普通に服着ててもいいが、成果が出なくても追い出すからな」
その言葉通り私は服を着て修行を受けることになった。
⋯⋯しかし1月後。
さほど私の魔力は伸びなかった。
基本的に賢者の授業の初歩はマナを感じる瞑想に当てられている。
しかしその為に服が邪魔なのだという事もなんとなく理解はできた。
なにせ同じ修行をしている全裸のイリーナがドンドン私と差をつけていくからだ!
「リニア。 約束通りあと2月で追い出す。 それが嫌なら結果を出せ」
ちくしょー! やってやるよ、くそったれー!
この時私はようやく全てを捨てたのだった。
無だ⋯⋯心を無にしよう。
嫌な仕事の時はいつもそうやってこなして来たじゃないか。
すると皮肉にもあっさりとマナが感じ取れるようになってきた。
「さすがエルフなだけはあるな」
私⋯⋯ハーフエルフなんですけどね。
しかしおっさんが言うには私たちの遥かな祖先のハイエルフは服を着る習慣が無かったらしい。
そんな痴女の血統が私にも流れているのだろうか?
「ははは⋯⋯あの堅物の母さんがほとんど魔力無しなのがよくわかったよ」
こうして私の修行はだんだんと成果を上げ始めて行った。
私が服を脱いで1月、つまりここにきて2月ほど経た頃だった。
「今日は一緒にお風呂に入りましょう、リニア」
「一緒に? まあいいけど⋯⋯」
この姉弟子のイリーナさんはちょっと苦手だった。
まあおっさんにラブラブなこの人が、私の事を一番邪魔者だと思っているのは間違いないからわかる事なんだけど。
なので今までは表面的には仲いいフリして、そんなに踏み込んだ関係にはなっていなかった。
そんなイリーナさんがお風呂に誘うとか⋯⋯これはおっさんに聞かれたくない話があるのだと感じた。
私としても今のうちにハッキリとイリーナさんに話しておいた方がいいかもしれないし⋯⋯。
こうして私はこの誘いを受けて女の戦いに赴くのだった。
脱衣場であっさりと服を脱いでお互いの裸を見せ合う私たち。
そこにもう恥じらいなんてもう無かった。
まあこの1月間ずっと裸で修行した仲だからね。
「髪を洗ってあげるわリニア」
これは目を封じて背後から首を絞める計画だろうか?
イリーナさんにはそのくらいの殺意が私に対してあると思っていた。
⋯⋯最近の修行の成果で心眼もそこそこ使えるし⋯⋯何とかなるか?
それにイリーナさんの体術はポンコツだし⋯⋯
私は覚悟を決めた。
「⋯⋯お願いします」
そして内心ビビってる私の心配とは違い、本当にただ髪を洗ってくれるイリーナさんだった。
「あんがい綺麗な髪ですね。 短くて洗うのが楽でいいわね」
「イリーナさんの髪長いから面倒でしょ? 切ったらいいんじゃないの?」
「ダメよ、私は切らないわ」
その言葉には強い意志が感じられた。
「何かこだわりがあるんですか? その長い髪の毛⋯⋯おっさんの好みとか?」
男が『女の髪は長い方が好き』というのはよくある好みだった、それをイリーナさんが応えているのかと思った。
「⋯⋯ジーク様と初めて会った時の髪型だから、変えたくないのよ」
「おっさんとイリーナさんが会ったのって3か月前でしょ? それでそんなに拘るポイントっすか?」
私にはわからない乙女心だった。
まあこのイリーナさんがマトモな乙女とは言い難いけど⋯⋯。
「私がジーク様と初めて会ったのは私が6歳の時⋯⋯つまりもう12年くらい前なのよ」
「じゅ、12年!? そんなに前から出会っていたんですか?」
「まあ会ったのはその12年前の1回だけで⋯⋯再会したのは3か月前だったんだけど」
「じゃあ今のおっさんに惚れたんじゃなくてその時から一途に想い続けていた⋯⋯ってこと?」
そう考えるとイリーナさんの異常な恋心にも納得できる。
⋯⋯私も似たような経験があるからだ。
「やっぱり私っておかしいかな? 子供の時の初恋の為にここへ来て弟子になるなんて」
「⋯⋯おかしくないっすよ、イリーナさん!」
「リニア?」
どうもイリーナさんは私にここまで強く共感してもらえるとは思ってなかったみたいだ。
私はお湯を被って髪に着いた泡を落としてからイリーナさんに向き合う。
「私だって初恋はあるもん! 人生を変える出会いはあるから!」
「⋯⋯ありがとう、リニア」
この時初めて私はイリーナさんに優しくしてもらえた気がした。
そして今後は私がイリーナさんの髪を洗ってあげて⋯⋯そして湯船に2人で浸かる。
カポーン⋯⋯。
「ところでリニアの初恋って?」
「うっ! いや⋯⋯昔の話だし⋯⋯」
「ダメよ、私だって話したんだし今度はリニアの番!」
「じゃあ後でイリーナさんの話も、もっと詳しく聞かせてよね」
「ええ! 構わないわ!」
⋯⋯イリーナさん、絶対自分が言いたいだけなんだおっさんとの感動的な出会いを。
まあ今までおっさんがこのイリーナさんに気づかずスルーしてきてて溜まったうっぷんがあるんだろうな⋯⋯。
「私の初恋は⋯⋯6歳の時」
「まあ! 私と同じ!」
妙なところでシンパシーを感じるイリーナさんだった。
「その頃の私ってハーフエルフってことでよく近所のワルガキに虐められていたんだよね⋯⋯」
「そういえばハーフなんですね、リニアは」
「その時1人だけ私を助けてくれた男の子が居て⋯⋯」
「それが初恋の人!」
「⋯⋯まあ」
こうして話すとめっちゃ照れるなあ⋯⋯。
「男の子ってことは子供だったの?」
「んーと? 人間の男の子だったし、たぶん私と同じ歳くらいじゃないかな?」
たぶんそう、きっとそう。
そのせいで私の男の子の好みがそのくらいの年齢の男の子に染まってしまったのだった。
「その男の子とはその後どうなったの?」
「⋯⋯実は会ってないんです。 その助けてくれたその時だけの出会いで⋯⋯それ以来会ったことが無いからむしろ思い出として美化されたんだと思うっす」
私は思い出す、あの時の少年の雄姿を。
泥まみれになっていじめっ子と戦い勝利した男の子を!
『泥にまみれる覚悟もない奴に俺が負けるかよ!』
カッコよかったなー! あの時の少年!
そのあと母親に服を泥まみれにした事メッチャ怒られていたけど⋯⋯。
ふふ⋯⋯懐かしいな。
「その時、その少年に言われたんですよね」
「何を?」
「髪を切れ⋯⋯って」
その時の私は長い髪だったのだ。
「その頃は髪を伸ばしていたのねリニアは?」
「この耳を隠す為にね⋯⋯」
私のこのハーフエルフ特有の中途半端な長さの⋯⋯差別の象徴とも言えるこの耳を隠す為に。
「ハーフエルフってそこまで迫害されているの?」
「べつに迫害ってほどじゃないっす。 たんに近所のワルガキからすれば珍しいだけだったんでしょうね⋯⋯今ではそう思うっす」
でもあの頃は全然理解できなくて、外が怖かった。
まあ私が引きこもりになったのはそれだけが全てって訳でもないけど。
夜だけ働いて昼間は家で寝てられる職業⋯⋯娼館ってのはあんがい私にとって合ってる職業だったんだよな。
それに母さんが紹介してくれたお店はちゃんとした所でいっぱい稼げるところだったのは間違いないし⋯⋯。
「⋯⋯それでその子になんて言われたの?」
「『耳を隠すな髪を切れ』⋯⋯です。 隠すと余計にからかわれるからだって。 ⋯⋯あと『おっぱいを大きくして胸を張って生きろ』⋯⋯て」
「その、なんというか⋯⋯ユニークな子ね」
「ありがとイリーナさん。 でも今ではその子がただのおっぱい好きなマセガキだってのは何となくわかっているので⋯⋯。 でも男ってのはおっぱいが大きければそっちばっかり見て、私のこの耳なんか全然気にしないってのは本当だった」
あの時の男の子に、この大きくなったおっぱいを見せつけたい気持ちは少しだけある。
あの子⋯⋯全然魔力無かったし、今もしも冒険者になっていたら剣士とかかな?
私が頑張って魔法使いになったらベストコンビかも!
でも冒険者って結構娼館に通う人いるんだよねー。
⋯⋯もしも私が娼館で働いていて、あの子がお客として来たらヤダなあ。
「それがリニアの初恋かー」
「そうっす。 ⋯⋯だからおっさんは遠慮しますので、イリーナさんの邪魔はしませんから!」
こうしてやっと私はイリーナさんと打ち解けることが出来た。
というかイリーナさんの私への敵意が消えたと言った方が正しいかも?
⋯⋯その後、さんざん12年前のおっさんとの出会いとその時のおっさんのカッコよさを聞かされてのぼせる私だった。
風呂から上がりイリーナさんはおっさんと同じベッドで寝る。
私は倉庫で寝ますよ?
当たり前でしょ!
しかしあのエロいナイスバディなイリーナさんと毎晩添い寝してて、まったく手を出さないおっさん⋯⋯軽く尊敬する。
もしも私が男だったら絶対にヤル。
あのイリーナさんのエロい身体を弄ぶに決まっている!
「イリーナさんのおっぱい。 柔らかかったなあ⋯⋯」
さっきお風呂で揉ませてもらいました!
その代わりに私もいっぱい揉まれましたが⋯⋯まあ等価交換です。
「さて寝るか⋯⋯と、その前に!」
私のここでの数少ない娯楽の時間である。
この倉庫で寝るようになって早2月。
わりと早くにこの宝箱の存在に気づいていた。
最初は中にお宝が入ってて、それをかっぱらって逃げようかとも考えたのだが⋯⋯。
「これを売りさばくとか無理だしね」
なにせご禁制の品である。
私にはブラックマーケットには伝手が無いので無理だった。
「今日は⋯⋯これにしよう!」
その本のタイトルは⋯⋯『ローラ自慰しろ!』である。
どきどきしながらそのエロ本のページをめくる。
『そんな⋯⋯お前ごときが私の魔力を上回っているなんて!?』
『うかつだったなローラ! その支配のギアスは相手より魔力量が上回っていないと逆に支配される』
『それで私に何させる気なのかしら?』
『ローラ⋯⋯自慰しろ』
『こ⋯⋯こんな私が! この男の前で、こんな惨めに♡ いやっ♡ イキたくないっ♡』
「⋯⋯最高っすね、このシチュエーション!」
私の興奮はマックスだった!
このワガママエロ女を強制的に嬌声を上げさせる最高のカタルシス!
「⋯⋯おっさんもワガママな私の事をこんな風に♡」
⋯⋯ゾクっ。
⋯⋯⋯⋯いやいや無いっす、それは無い!
あんなおっさんに私が命令されて傅くなんてありえないっしょ!
私はやっぱりショタ少年にかいがいしく尽くすのが良いのです。
「でもイリーナさんみたいな人を、こんな風に弄びたい気持ちは凄くよくわかる⋯⋯」
辛い修行の日々にはこういうガス抜きは必要なのだ。
こうして私はエロ本という娯楽によって、あんがい楽しくこの修行の日々を送っている。
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