013 俺に彼女が出来ました! ⋯⋯あとムカつく教え子も!
「リニア、お前もう帰れ。 これからここは俺とイリーナの愛の巣になるんだからな」
「そうですわねジーク様♡」
そんな俺たちの宣言にリニアは慌てる。
「ちょっとー! それは無いっしょ!? どうせ今まであんた達、煮え切らない関係だったんでしょ? それが私のおかげでラブラブになったんだから、少しくらい優しくしてくれてもいいじゃん!」
⋯⋯むう、一理あるな。
たしかにムカつくがリニアが来なければ俺たちの愛が確かめられることは無かったかもしれん。
そういう意味なら間違いなく恩はあるな。
「うーん、どうするイリーナ?」
「そうですね⋯⋯じゃあリニアさんもここでジーク様の教え子として魔法を学んで、なるべく早く自立⋯⋯という事で良いのでは?」
「そうだな⋯⋯教える手間なら1人も2人もたいして変わらんし、リニアを一人前にして送り出すのがミルさんへの恩返しだからな」
「え? 最終的には私を追い出すんですか?」
「今すぐ娼館送りでも一向にかまわんのだが?」
「わーい嬉しいな! ジークさんの弟子になるの、嬉しいな!」
なんか釈然としないがまあいいか。
今後のイリーナの競争相手くらいにはなるだろうし。
「じゃあリニアは俺の教え子としてここに居ていいよ」
「よっしゃー!」
「その代わり俺の教えは絶対だぞ? 嫌なら出ていけよな」
「魔法の習得でしょ? チョロイチョロイ! 脳筋の母さんとは違うのですよ、私は!」
ミルさんは魔法が使えないタイプのエルフだからな⋯⋯。
その辺が森を出た理由らしいが。
そのミルさんの娘のハーフエルフか⋯⋯才能あるのだろうか?
「リニアは今まで魔法の練習しなかったのか?」
「するわけないっしょ! ずっと親が世話してくれたんだから!」
駄目だコイツ⋯⋯何とかしないと。
正直ミルさんが見捨てるのも仕方ないとか思ってしまうな⋯⋯。
「それでよく自分に才能があると信じられるな⋯⋯」
「だって母さんはいつも『リニアには私と違って魔法の才能がある、本気さえ出せば』って言ってくれてたし!」
⋯⋯ミルさん甘やかしすぎだよ、娘の育て方間違えたんだな。
しかたない俺が厳しく躾け直しておくか。
「じゃあ今から魔法の修行を始めるぞ」
「⋯⋯え? 今日は歓迎会とかじゃ?」
「お前まさか⋯⋯自分が歓迎されているとでも?」
「だってこんなに可愛いハーフエルフですよ! しかも⋯⋯胸も大きいし♡」
「可愛さならイリーナの方が上だし、おっぱいの大きさもイリーナとさほど変わらん。 身長が低い分アンバランスなロリ巨乳に見えるのは事実だが⋯⋯俺はロリコンじゃないし、そもそもロリじゃないだろお前? 28歳でその見た目なら合法ロリだな」
「しかも他人に寄生して楽して暮らそうという魂胆が見えすぎですものね」
「だよなー、イリーナもそう思うよな」
「ですよね、ジーク様♡」
「ちょっとアンタら! 仲良くなったとたんに私をのけ者にしないでよ!」
のけ者じゃなくて邪魔者なんだがな!
「そうだ! ここはお前にとって居心地が良い場所にはならん! 嫌なら出ていけばいいだろ」
「⋯⋯くう仕方ない、ならせめて魔法を習って行くか」
こうしてリニアも納得してようやく俺の弟子になる気になったようだった。
その後⋯⋯いつものように魔力制御の訓練を始めることにしたんだが⋯⋯。
「ちょっ!!? なに服脱いでるんですか!? イリーナさん! 早く服着て! スケベなおっさんが見てるじゃないですか! そういうのは夜に二人っきりの時にでもして下さいよ!」
⋯⋯夜イリーナと?
⋯⋯⋯⋯ヤバイ⋯⋯俺たち今夜からどうなるんだ!?
「そういえばすっかり裸で魔力鍛錬するのが当たり前になっていたな、俺たち」
「そうでしたね」
「⋯⋯アンタら、普段からそんなプレイを?」
プレイとか言うなよ! 崇高なる魔法の授業なんだぞ。
「これが俺独自の魔法理論だ。 裸になる事によって、より鋭敏な感覚で魔力を操れるようになる」
「嘘だー! このスケベがテキトーこいてるだけだー!」
「本当ですよリニアさん」
「⋯⋯マジ?」
「そうだそ。 イリーナは1月前までまったく魔法が使えなかったのに、今ではこうだぞ」
イリーナが発する魔力オーラにたじろぐリニアだった。
「たったひと月で! イリーナがただ天才だったんじゃないの!?」
まあイリーナが天才なのは間違いないな。
「これがジーク様の指導の成果なのです」
そうイリーナに自信たっぷりに言われると納得するしかないリニアだった。
てかイリーナは自分が天才だという自覚がなさそうだな⋯⋯。
「まあ疑うなら普通に服着ててもいいが、成果が出なくても追い出すからな」
「鬼ですかアンタ!?」
「当たり前だろ? たしかにミルさんには世話になったがリニアになんの義理も無いし、イザとなれば娼館で売れっ子になってチヤホヤされるお前を、何でわざわざいつまでも置いておく必要がある?」
「⋯⋯」
「まあ期限は3か月というところだな。 それまでにお前に見込みが無ければ追い出すよ。 それが嫌なら死ぬ気で修行しろ」
「くそー! やったらー! 今に見てろよ!」
しかしこの時のリニアはまだ服を脱ぐほどプライドを捨てられなかったのである。
まあいいけどな。
こうして全裸のイリーナと着衣のリニアの修行が続いたのだった。
⋯⋯1月ほど経った。
イリーナは着々とその魔力を高めている。
しかしリニアは⋯⋯さほど伸びてはいなかった。
俺の見立てではこの2人の弟子の才能は互角⋯⋯と言ったところだと思っている。
おそらく人間の上澄みの、貴族令嬢か何かの血統の良い才能あるイリーナ。
そしてミルさんは無才だったが娘のリニアの魔法の才能は、エルフの血統を受け継ぐため普通の人間以上のはずだ。
しかし結果としてイリーナは伸びて、リニアは伸び悩んだ。
もちろん全裸で自然と一体化する修行方法が高効率であるという検証結果なのも確かだがもう一つ、それはイリーナが俺の教えを信じて、リニアは懐疑的だったという気持ちの問題も大きかったようだ。
「リニア。 約束通りあと2月で追い出す。 それが嫌なら結果を出せ」
「⋯⋯出すのは結果じゃないでしょ! もういい! このスケベ野郎が──!」
すぽぽぽ──ん。
ついにリニアは本気を出して俺の指導を受ける気になったようだ。
正確には服を脱ぐ決意がようやく出来たという事だが。
「ふひひひ⋯⋯。 ハダカ。 私⋯⋯ハダカだよ⋯⋯。 人前で⋯⋯外でこんな⋯⋯。 もうお嫁にいけない⋯⋯」
「心配するな。 元からお前をお嫁に貰うようなもの好きは居ないから」
「じゃかましいわ! もうこうなったら責任取れ! 私を絶対Sランクにしろ! いいな! エロ師匠!」
こうしてようやくリニアは本気で修行に取り組むようになったのだ。
するとまあ伸びる伸びる才能が! ミルさんの見込み通りの本気出せば出来ると言われていたリニアの才能がようやく開花したのだった。
「⋯⋯これでようやくミルさんにいい報告が出来るな」
こんど街に行ったらミルさんに会いに行こう。
きっと喜んでくれる⋯⋯よな?
「お日様が私の全てを見ている♡ うふふ⋯⋯」
リニアの目は死んだ魚の目のようになってしまったが⋯⋯まあしばらくしたら元に戻るだろう、リニアはわりと図太い神経だしな。
こうして俺とイリーナは恋人になったが、とくにそれから何も進展していないのだった。
それもこれもリニアとかいうお邪魔虫が居るせいなのだ!
さっさと強くして出ていってもらわないとな、俺とイリーナの愛の生活の為に!
しかしそれ以外はそう悪くない時間が過ぎていくのだった。
なんだかんだ言ってもリニアの裸も見放題なのは役得だし。
イリーナともイチャイチャできるようになれたから満足だ!
こうして俺のスローライフは、ちょっとエッチな師弟関係とともに充実していくのだった。
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