33
「桃のこと好きだと思うこともあったんだと思う。キュンとすることもたくさんあったし、一緒にいてすごく楽しかったし。だけど、違うんだよやっぱり。そういう相手って認識しちゃうとダメなんだね。お互い、悪かったんだと思う。勿論、私も。好きになれればよかったのに。」
今日はグラタンとオニオンスープ。
私の話を聞いた3人は口々に私のことを慰めるような言葉を言ってくれるけど、別に寂しいとか気持ちが落ち込んでるとか、そんなのは無い。
ただ、自分の気付きたくなかった気持ちとか、全部相手のせいにしたかったこととかを自分で認めたことに関しては褒めて欲しいと思ってしまっていた。
私も悪かった。少しでも好きになった瞬間があったのだから。桃の気持ちを知っている上で遊んでいたのだから。
「後悔しても仕方ないからね。次に進も。」
「桃とはやっぱりそういう運命じゃなかったのよ。」
「絶対熊の方がいいよ。」
「そうそう、熊まじで紳士じゃん。いいよ。」
こっちがダメならこっち、みたいなやり方、本当は好きじゃない。だけど、今の私が恵まれ過ぎている。
熊とはそんなに長い時間を一緒に過ごした訳では無い。時間の長さや質で言ったら桃の方が圧倒的に長いし、濃い時間を過ごしている。だけど、今の私は熊に惹かれているのだ。あんなにストレートに照れることを言われたら気になる存在にならない訳ないし、この短期間で何度も紳士的な一面を見ている。好感度は高い。
そうなんだけど、3人にこんなに押されてるのが腑に落ちない。持ち上げすぎだし、どんだけくっつけたいのよ、と鬱陶しさすら感じる。
「熊がいいのは分かってるから。暫く放っといて。ちゃんと報告はするからさ。」
「分かった。」
「そうだよね。柚葉のは遊びじゃないもんね。」
「そのうち熊、じゃなくて、誠くんって呼ぶことになるんじゃない?」
「熊の名前って誠っていうの?」
「そうそう、中谷誠。」
「誠っぽくなくない?」
「え、めっちゃ分かる。熊だよな。」
「うちら多分ずっと熊だよ。」
悠梨亜と麗奈はすぐにそうやって盛り上がるんだから。別にいいんだけどさ。楽しい方向に話が行ってくれるなら、それで文句は無い。
「明後日、熊と計画した合コンあるけどどうする?」
「行く。」
思わず即答してしまった私を見て、3人が一瞬止まってから、有り得ないくらい爆笑した。
勿論、私も爆笑した。
流石に自分の速さに引いてしまうくらいだった。
もう、答えなんて出てるじゃんね。
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