24
送られてきた店に着くと、店の前で熊が立っているのが見えた。煙草を吸っているらしい。熊って煙草吸うんだ。知らなかった。
「あ、篠原。来てくれたんだ。」
「悠梨亜って怖いから。」
「ああ、知ってる。」
熊の話によると、今日来るはずだった女の子がひとり飛んだらしい。女の子は悠梨亜が集めてたから、連絡も無しに飛んだその子に対してめちゃくちゃ怒っているとのこと。それを聞いたら私に電話して来た時、かなり機嫌悪そうだったのは納得がいくことだった。そして、今も現在進行形でかなり機嫌が悪いそうで、例の青が上手いこと宥めているそうだ。
「じゃあ今日は朋と麗奈はいないのね。」
「そそ。違う子。」
「行きたくないな。」
「顔出すだけでいいよ。そしたら俺と一緒に抜けよ。」
「まじ?私飲み会抜けて来てるんだけど。」
「じゃあ、ふたりで飲み直しに行こうか。」
熊が煙草の火を消してから、私の腕を引いて店の中に入った。確かに行きたくないとは言ったけど、そんな理由とはいえ、まさか熊とふたりで飲みに誘われるとは思ってもいなかった。悠梨亜、熊に何か言ったのかな。余計なお世話なのに。
腕を引かれたまま着いた席には、機嫌の悪そうな顔をした悠梨亜と見た事のある気がする青。あとはみんな知らない人。
「金澤。俺、抜けるな。」
熊が悠梨亜に声を掛けると、悠梨亜は熊を見たあと、熊の後ろにいる私のことを見つけたみたいで、すぐに席を立って私の方に小走りで来た。
「柚葉、本当にありがとう。今度絶対なんか奢るから。本当に助かった。ありがとう。」
悠梨亜がそんなに謝ることが珍しくて、さすがにもういいや、と思ってしまった。悠梨亜には笑顔で大丈夫だよと返したけど、それでもずっと私の手を握りながら謝ってくるから、本当に大変だったのだろうと感じた。
「中谷もごめんね。次は絶対まともな女連れて来るから。」
「大丈夫だよ。俺も集めてる側だから分かるし。」
「本当にごめんね。あとはふたりで楽しんでいいから。本当にごめん。」
「そうするよ。金澤もそこそこで帰れよ。」
「うん、ありがとう。」
私たちは悠梨亜に見送られて店を出た。なんか、来ても来なくても同じだった気がした。結局合コンに参加なんてしていないのだから。
「さて、飲み直そうか。ふたりで飲むの初めてじゃない?」
ふたりで歩きながら店を探した。なんとなく熊がいつもより嬉しそうな感じがしたのは、気のせいだと思うことにした。
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