18
映画を見てから軽くご飯を食べて、少しショッピングをして、それだけで今日は解散した。夕飯の前に普通に家に帰ると、キッチンに立っていた麗奈が、信じられない、というような驚いた顔をしていた。
「帰ってこないと思ってた。」
「今日はそういう日じゃないの。」
「変な関係だね。」
私もそう思った。自分の部屋に戻ってから今日買った服を出した。きっとこの服を見る度に、着る度に、桃のことを思い出すのだと思う。今日観た映画とか、今日食べた料理とか。それから桃と過ごした今までの時間まで、思い出すのだと思う。そうやって思ったらこの服を着るタイミングに困るな、と思った。男と出掛けた時に物を買うのはあまり良くないな。
「柚葉?なんで帰ってきたの?」
扉越しに廊下から聞こえる悠梨亜の声。まるで私に帰ってきて欲しくないみたいに聞こえる。部屋の扉を開けると、悠梨亜が驚いた顔をした。
「なんで帰ってきたのよ。」
「そういう日じゃなかったから。」
「柚葉が断ったの?」
「違うよ。桃が誘ってきて、普通に解散した。」
「え、信じられない。麗奈がご飯出来たって。」
伝えることをついでみたいに言ったけど、多分これを伝えに来たのがメインだったのだと思う。麗奈がリビングに戻って行く背中を追いかけるように、私も自分の部屋を出た。今日は4人でご飯ということは色々と聞かれそうだな、と思った。小さくため息が出る。
リビングには朋がもう座っていて、麗奈がご飯を運んでいた。そして、私を見た朋がふたりと同じ顔をする。
「なんで帰ってきたの?」
「悠梨亜と同じこと聞かないで。」
「いやだって、今日桃でしょ?信じられない。」
「そういう日じゃなかったんだって。」
「ちょっと本当に意味分からないんだけど。早く座って。」
朋は半ば強引に私を座らせる。悠梨亜と麗奈も席に着くと、いただきます、とほぼ同時に始まる私への説教のような話。
「柚葉が嫌な雰囲気出てたんじゃないの?」
「そんな訳ないでしょ。向こうもそういう感じじゃなかったし。」
「向こうはその気に決まってんじゃん。」
「なんで桃のことなのに、朋が決めるのよ。」
「いや、男だったら。私が男だったら絶対逃さないね。」
「本当だよね。せっかく出来るチャンスなのにさ。」
悠梨亜が会話に参戦すると、麗奈まで入ってきて、ふたりとも朋の味方をするから、私は圧倒的に不利だった。どんなに言われても、今日誘われなかったのは事実だし、私から誘うような雰囲気にならなかったのも事実だ。
「欲が無さすぎるんだよ。」
「分かった。柚葉に色気が足りないんだよ。」
「合コンで鍛えるしかないな。」
「また熊にお願いしとくね。」
反論することも無く、ずっと話を聞いていたら、いつの間にか合コンに行くという話になっていた。
それもう、合コンに連れて行きたいだけじゃない。
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