15

目が覚めると、目の前に桃の顔がドアップで映った。眠たい目そのままで、枕元の辺りにあるスマホを手探りで探した。


やっと捕まえたスマホに映し出された画面には11:00と示されていた。もうこんな時間か。


ベッドの上で起き上がってから、桃を揺すって声をかけた。



「もういい時間だよ。」


「んー、おはよう。」


「おはよう。」


「何時?」


「11時。」


「あー、あと1時間で出ないとじゃん。柚葉さん準備出来る?」


「うん、する。」



ベッドから降りてシャワールームに向かった。身につけている少ししかない服を抜いで、シャワーを浴びた。


これから仕事だと考えたら少し憂鬱だった。まだダラダラしていたいという気持ちが先行する。



「あー、眠い。」



ひとりで呟きながらシャワーを浴びていた。


仕事の前はいつもシャワーを浴びるのが私のルーティン。今日は少し時間があるから頭も洗おうかな。


そう思ってシャンプーをし始めた時、バスルームの扉が開いた。振り返ると桃がタオルを1枚持って入ってきていた。



「何で入って来るのよ。」


「時間無いんだもん。頭洗ってあげるから許して。」


「そんなの頼んでない。」


「いいから早くしないとだから。」



色々言い訳をしながら私の頭を洗ってくれる。それからシャワーを渡してくれて、私が流してる間に自分もシャンプーをしていた。


これは完全に持論なのだが、ベッドの上でお互い裸になるのと、ここで裸になるのは違うと思うのだ。部屋の明るさとか、それから雰囲気とか、そういうことって大切だと思うから。


だから今私は猛烈に恥ずかしい。もう本当に早くここから出たい。



「同じ匂いしたら、誰かにバレるかな?」



一方の桃は、恥ずかしがる様子なんてなくて、少し楽しそうに私に向かって笑っていた。さっさと自分の頭と体を洗って、ついでに、という感じで私の背中まで洗ってくれていた。


私が恥ずかしくてうずくまって体を隠していると、それに気付いた桃が早くするようにとまた急かしてきた。



「柚葉さん、何してるの。急がないとだよ。」


「桃沢くん、先上がってよ。」


「柚葉さんも一緒に上がるんだよ。ほら、立ってシャワー浴びるよ。」



私の両手を持って立ち上がらせると、かけてあるシャワーヘッドから流れるシャワーの中に入れられた。


あーもう。


頭から降り注ぐシャワー。目の前にいる桃を睨みつけると、右手を頬に添えられた。


流れるシャワーを浴びたまま、息の止まりそうなキス。



⋯これはさすがにエロすぎる。

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